橋下弁護士がTV番組で安田弁護士に対する懲戒請求を煽る発言をしたことについて書いた記事で、いくつかコメントを頂いた。
コメントを寄せられる方は、まず左側の猫の下の文章を読んでからにして頂きたい。反対意見を全て削除するわけではないが、最低限のルールを守らない方のコメントは管理人権限としてあっさり削除させて頂く。
また、刑事裁判の仕組みや刑事弁護人の仕事については、既にたくさん記事を書かせて頂いているので、安田弁護士を批判したい方はまずそちらの記事(左側サイドバーのテーマ記事)を読んでからコメントをして頂きたい。誤解をされたままのコメントについては(再び一つ一つ誤解を解くためのコメントを書いている余裕はないので)、これもまた管理人権限で削除させて頂くことがある。
P.S.ところで、最近、非常に長文のコメントを下さった方、公開しなくてごめんなさい。内容が問題なのではなく、あまり長文だと文字化けしてしまうらしく、ほとんど読めなかったからです。
さて、私は、光市母子殺人事件そのものについて、特に関心があるわけではない。だから、マスコミの報道内容すらあまりよく知らない。ましてや、この事件の記録(供述調書、鑑定書、被告人質問、証人尋問調書等の膨大な証拠書類)を読んだこともなく、弁護人と被告人の接見のときの会話の内容も知らない。
そんな状況で、安田弁護士らの弁護活動に対して、あれこれ具体的な批判を加えることなど、到底できない。多少の推測はできるが、そのような推測にあまり意味があるとも思えない。
・・・・・私が、この事件に関心があるとしたら、それは事件そのものではなく、マスコミ、被害者の家族、国民の反応の方だ。これは実に興味深い。2年後にせまった裁判員制度で、このような事件の刑事裁判のゆくえ(「行く末」というべきか)を占う一つの資料になると思うからである。
一般の方々の反応を報道やネット上でみる限りでは、被害者側にのみ傾いた感情的な反応が多い中、意外に(意外というのは失礼か)法曹関係者以外の方の中に非常に理性的かつ論理的な考察を加えておられる方も少数ながらおられたのには感心した。
しかし、やはり、マスコミ報道、一部のコメンテーターと称される方々の意見を鵜呑みにし、ご自身の頭で考えてはいない(感情のみが暴発している)と思われる反応が圧倒的に多い。
こういう方々が裁判員に選任されたらどうなるのだろう。評議の際に、裁判官が一つ一つ誤解を解き、感情ではなく理性で判断するよう説明(説得?)するだろうが、これは大変な仕事になるだろう。
もし、裁判員制度を推進、賛同する方々が、本気で裁判員制度によってまともな刑事裁判ができるようになると考えているのであれば、まず国民全員に刑事裁判の仕組み、裁判官、検察官、弁護人の役割などについて、分かりやすく説明すべきだ。模擬裁判で自主参加の模擬裁判員に3日間ばかり講釈するだけではなく、また裁判所、法務省、弁護士会のHPでQ&Aを公開するだけではなく、もっと根本的な理念を教えるべきだ。
国民が「忙しいのに、そんなお勉強したくないよ。」とか、「そんな理念なんか知ったことか。」とか、「こんな極悪人どうして弁護するの。早く死刑にしてよ。」とか、「弁護士はどうして極悪人に反省させないの。どうして被告人のとんでもない言い分を主張するの。」とか言うのなら、裁判員制度など諦めるべきだ。
刑事裁判は国民の司法教育の場ではない。
さて、何度も紹介している「裁判員制度はいらない」(高山俊吉著、講談社発行)には、5人の著名人が特別寄稿されている。
さだまさし氏と蛭子能収氏の寄稿の一部は、前の記事(地下鉄の女子高生+裁判員制度考)の末尾で紹介させて頂いた。
その他にも、一部抜粋して紹介させて頂くと、
嵐山光三郎氏は、
「素人にできることとできないこと」
・・・・・人は感情次第で他人を陥れたいとか、重く処罰したいという気持ちになることがある。私は一日警察署長をやらせてもらった経験があるが、そのとき思ったことを正直に言うと、せっかくだから誰かを逮捕してみたいということだった。少し張り切ると人は怖いことを考える生き物だ。
渡辺えり子氏は、
「裁判をショーにしてはいけない」
・・・・・誰も戦争に賛成なんかしてなかったのに、空気にのまれて知らず知らずのうちに戦争に巻き込まれていった歴史を私たちは知っています。もしかしたら冤罪かもしれないと思っていたのに、なんだか悪人そうに見えるなんていう雰囲気で死刑を言い渡してしまう。人間には恐ろしいところがあります。
・・・・・10年着古した背広で頭ボサボサの弁護士だったらホントかしらと思い、やたら弁の立つ人のほうをカッコいいなんて信用するようになる。人柄より見栄えになってしまう。コツコツと努力する弁護士が忘れられ、気の利いた風のタレント弁護士が羽振りをきかすようになるのも私は心配します。アメリカの真似をすることはありません。
(青字は引用)
なるほどな、と思った。お二人は、人間の怖いところ、弱いところを、ご自身の経験から率直に語っておられる。
「裁判員制度はいらない」の中には5人の著名人の特別寄稿が掲載されているが、いずれの寄稿も非常に説得力のある内容だ。難しい本は嫌という方は、ぜひこの寄稿部分だけでもお読み頂きたい。
それにしても、今回の事件により、「日本で裁判員制度による裁判をするのは間違っている」という私の確信はますます強くなった。
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