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2013年4月 4日 (木)

弁護士過剰の弊害はもっと実態的に語られるべきだと思う。

 法曹養成制度検討会議では、弁護士が増えることのメリットばかりが語られていたが、弁護士が増えすぎたときに、どういうデメリットがあるのか、については殆ど議論されていなかった。

 弁護士としても、現実に生じている弊害を語ると、それこそ業務妨害だ!守秘義務違反だ!と言われかねないので、具体的事例を知っていても、抽象的にしか語れないのだ。

 司法修習生が法律事務所の就職先を探すとき、弁護士らから内輪話(飲み会での情報交換のことが多い)を聞いて、就職先候補にしていた法律事務所への就職をやめた、なんて話は昔から山のようにある。

 きょうは、こういうブログ記事を読んで、そんなことを思い出した。

                        

 就職難(毎日新聞)Schulze BLOG)が、毎日新聞の憂楽帳:就職難を紹介されている。

 司法試験に合格し司法修習を終えた20代の女性は焦っていた。弁護士を志望し、10を超える弁護士事務所の門をたたいているが、採用してもらえない。

 関西のベテラン弁護士に相談した。弁護士として何がしたいのか。そう聞かれて、女性は答えた。「仕事内容のこだわりは捨てた。とにかく就職したい」

 喫茶店でベテラン弁護士と向かい合った女性の目には涙が浮かんでいた。弁護士は熱くなって叱ったという。「泣いている人を助けるのが弁護士の仕事じゃないか。自分が泣いていてはだめだ」

・・・この関西のベテラン弁護士、叱咤しただけ!?

  法科大学院と司法修習で、奨学金や貸与金で借金が数百万円もあったら「仕事内容のこだわりは捨てた。とにかく就職したい」と泣けてくるのは当たり前でしょうが。

 毎日新聞のこの記者も、

難関をくぐって獲得した法曹資格。今は厳しくとも、志だけは決して捨てないでほしい。

 って、きれいにまとめているけど、この女性に具体的にどうしろっていうの!

 「志」だけでは、借金は返済できないし、食べてもいけません!

 高額の給与や企業内福祉、高額な退職金を約束されている毎日新聞の記者さんには分からないでしょうけど・・・。

 でも、こういう記事を書いて下さったことには感謝します。

  もう一つ、

 企業「新人弁護士」採用の不安な一面元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)が、

日弁連機関誌「自由と正義」3月号の特集の「企業ニーズの進展と弁護士の新たな価値創出」と題した座談会を紹介されている。

 「私が怖いと思うのは、雇う側のリテラシーの極めて低い会社に新人が企業内弁護士として一人で入るケースです。弁護士が安く採れるらしい、社外の弁護士よりも言うことを聞くらしいという発想で採用し、おまえの法律知識のフル活用して会社の都合のいい意見を出せという変なバッジの使われ方をする。採用された弁護士がないため、そんなものかと誤解して問題意識すら持てない、そういう企業内弁護士も実はすくなくないんじゃないかと心配になります」(竹内朗弁護士)

 竹内弁護士は、こういう座談会で、よくこういう発言をなさったと思う。

 要するに、これはブラック企業が新人弁護士を安く雇って、(違法とまではいえなくても)社会倫理に反するようなことを弁護士資格を利用して行うことを危惧しているのでしょう。

 前記の毎日新聞の女性修習生のように「どこでもいいから就職したい」という状況にあれば、こういうブラック企業への就職に踏み切らざるをえない人も出てくるだろう。

 これは、法律事務所であっても、企業であっても同じこと。

 かつては司法修習生が敬遠していた(業界用語では「スジが悪い」事件の多い)就職先にも、今や新人弁護士がどんどん就職しているというのが現状だ。

 借金あり、扶養家族あり、という現実の前には、そういうところにも就職せざるをえないのだろう。耐えきれずに、直ぐに辞めてしまう人も多いようだが。

 こういう事態は、市民にも無関係ではない。

 「スジが悪い事件」に巻き込まれる市民も増えるのだから。

 久保利英明弁護士は、前記座談会で、

「企業そのものが社会的存在であり、社会にとって価値ある存在であることが求められている、そうした企業にサービスを提供する弁護士も、そのサービスの中に社会的価値を備えなければならない、既成概念とはやや異なったと考えています」

 と語っておられるが、そういう優良企業ばかりではないということは、久保利弁護士だってご存じのことだろう。

               

 法曹養成制度検討会議の議論をみるに、和田委員を除く委員の皆さんは、こういう現実を知らないのか、知っていても目を背けているのか、どちらなんだろうと思う。

 人間社会は理想だけでまわっているわけではないことを、十分承知されているご年齢だし、社会経験もお持ちのはずなのにね。

 もっとも、岡田ヒロミ委員は、本当に知らないのかもしれないけど。

(岡田ヒロミ委員の法曹養成制度検討会議での発言についての、他の弁護士の関連ブログ記事)

  いろいろタダでやれってことでしょうかね。PINE's page

 岡田ヒロミ氏の暴言弁護士 猪野亨のブログ

 法曹養成検討会議の岡田委員は不適任だと思うSchulze BLOG

 岡田委員「法曹資格をとる方が全部こういうふうに意欲があって,エネルギーがあって,なおかつ頭がよくてと,そういう人ばかりになってもらっても困る」Schulze BLOG

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弁護士」カテゴリの記事

コメント

>泣いている人を助けるのが弁護士の仕事じゃないか。

なら、目の前の泣いている女性修習生を助けないといけませんね、その関西のベテラン弁護士は。

「10を超える事務所」ってちょっと少ないんじゃあ?とは思います。私は書類審査で切られまくり、結局100近く応募しましたので。
ただ、就職の苦労を知らないベテランに、したり顔でそんなこと言われると腹立ちますね。

 私は、この「関西のベテラン弁護士」に、それほど腹が立ったわけではありません。
 実際のところ、ベテランだろうと、皆、困っている修習生を助ける余裕がなく、見て見ぬふりをしているのが現状ですので、この弁護士はむしろ親切な方だと思います(方向性は間違っていたのかもしれませんが)。

 このベテラン弁護士が、3000人増員賛成派だったとしたら話は別ですがね。
 
 10件だろうと100件だろうと、司法修習生の就職が厳しいこと、それもこれからますます厳しくなること、には変わりが無く、それを曲がりなりにもこういう記事にしてくれた毎日新聞の記者には感謝しています。

 ただ、精神論だけで終わってしまったのは残念ですね。字数に限りがあったことも大きいとは思いますが。

弁護士の就職難ザマァ見ろと思ってる人多いと思う

弁護士の地位を引き摺り下ろすための法曹急増政策に、バカなマスコミが飛びついただけ。

自己愛だけは強く、他人を貶めることには極めて熱心という日本人の傾向ですな。気持ちが悪い。

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