育児減免制度の問題点(その5)
さて、育児減免制度の目的が「育児中の女性弁護士の経済的援助」にあったとしても、多少の援助にはなっても「救済」にはならないこと、むしろ見過ごしがたい不公平・不平等な事態を発生させることについては前述したとおりである。
しかし、育児減免制度を推進したい方々には、もう一つの目的<2>男女共同参画に対する弁護士会のアピール というものがあるらしい。
でも、私には、どうして育児減免制度が男女共同参画へのアピールと結びつくのか、さっぱり分からない。
最初にこの制度を導入したのは、第二東京弁護士会らしい。
こういうニュースが見つかった。
全国初“イクベン”支援します 第二東京弁護士会 (47ニュース)
二弁によると、男性を含めた育児支援制度の創設は全国の弁護士会で初めて。育児に積極的な男性の通称「イクメン」になぞらえ「弁護士業界にも『イクベン』の言葉を広めたい」としている。
対象期間は、子どもが2歳になるまでの任意の6カ月。「制度の趣旨、目的を理解し、育児に従事する」との誓約書を添えて申請し、期間終了後に育児経験の報告書を提出するのが条件。報告書は同会のホームページなどで公表するという。
「イクベン」ねぇー。で、この制度の導入により、第二東京弁護士会の男性会員に「イクベン」は増えたのだろうか。
第二東京弁護士会の会員のこんなブログがある。
・・・ということで、二弁会員の皆様、育児をほとんどしなくてもこの制度を使えるようなので、是非ご利用ください。
なんだそうです。
男性弁護士にもどんどん育児に参加してもらい、妻(弁護士に限らない)の社会参加を可能にしてもらいたい、ということなのか。
しかし、このブログの男性会員のやっている程度の育児は、別に弁護士に限らず、たいていの父親がやっていることではないか。これで「イクメン」ならぬ「イクベン」?その程度の育児で、簡単な報告書を出せば、弁護士会費月数万円が免除になるの?
東京には即独弁護士も多く、収入が少なくて結婚もできない若い男性弁護士も多いと思うが、あまりに不公平ではないか。
そして、この程度の育児をした程度で、「男女共同参画」に協賛したことになるの?
愛知県弁護士会の場合は、第二東京弁護士会とは育児減免の要件が違い、もっと要件は厳しいのであるが(この要件についても大変な問題があるので、後ほど詳しく述べる)、それにしても、これが「イクベン」の実態か。そして、これで社会に「男女共同参画」をアピールできたのか。
愛知県弁護士会理事者は、この第二東京弁護士会の「イクベン」+「男女共同参画」のアピール作戦が成功したのか、しっかり調査されたのだろうか。
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コメント
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これは、子持ち減免制度ですね。育児をするかどうかは関係なく、子持ちになれば貰える。
「イクベン」と呼んで世間へのアピールになるかどうかと言えば、名前のイメージが良いから「一応なる」と思います。肯定的に捉えているわけじゃなく、世間とはその程度のものだからです。だけどそもそも大した関心事じゃないから、すぐ忘れられる。
弁護士大増員による新人の困窮が広く知られるようになり、法曹志望者が年6000人にまで激減した今、弁護士や弁護士会のステキなイメージを世間へアピールすることも大事だと思いますけど、今のところ焼け石に水ですね。むしろ会員同士の不公平感で会内の不満、不和を大きくするデメリットのほうが大きそうです。日本の弁護士会費って、海外の弁護士に言うと目がテンになって笑い出すくらい高額ですものね。
弁護士大増員についても、日弁連は「司法の民主化」とか「市民が利用しやすくなる」とか、世間に聞こえの良い事ばかり言ってて、自分の業界の人たち特に新人の将来のことを真剣に考えていない気がしました。仲間より世間のほうを向いている。
会社について言えば、社長になってしまうと自分が世間にエエカッコすることばかり考えて従業員をムダに振り回し、そこで会社の業績が急速に傾いていくっていう例はけっこうあります。
投稿: るり | 2012年9月11日 (火) 07時07分
るりさんへ
おっしゃること、ごもっともです。
「子持ち減免制度」
確かに、弁護士会はいつから「少子化対策」に乗り出したんでしょうかねえ。
耳障りのいい言葉に飛びついて、その弊害も熟考せずに、「エエカッコ」するのはいいかげんにしてもらいたいものです。
投稿: M.T.(管理人) | 2012年9月11日 (火) 17時31分
儲からないのに弁護士会費は高いので育免してくれるなら結婚したいですね(笑)
まじめな話そもそも弁護士会費を減らすべきでしょう。
弁護士会費90%減を目指すとかいって会長に立候補したらまじめに当選しそうな気がするんですがどうでしょう。
この際、建物なんて立派じゃなくていいし、勉強会だの人権活動などやりたい人に手弁でやってもらうって感じでいいんじゃないでしょうか。
投稿: | 2012年9月17日 (月) 02時12分