名張毒ぶどう酒事件・中日新聞の社説・・・この社説にはちょっと感動。
珍しく新聞の社説に感動した。
名張毒ぶどう酒事件再審認めず “疑わしきは罰する”なのか(中日新聞)
刑事裁判では、検察が有罪を証明できないかぎり、無罪となる。裁く立場からみれば、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則である。
昨日の高裁の決定は、弁護側が出した証拠では検察の主張を崩せないという論法である。検察が主張していないことまで裁判官が推論し、有罪とする根拠を補強している。
これでは、まるで「疑わしきは罰する」になってはいないか。
最高裁は再審でも「疑わしきは被告人の利益に」の原則があてはまると言っている(白鳥決定)。それなのに、反対の考え方で再審の扉を閉ざしたように映る。
今回の名古屋高裁の決定は、まるで弁護側に「無罪の立証責任」があるかのような判断だと思う。
弁護団によって、有罪に対する「合理的疑い」は既に十分立証されていると思うのだが。
もっとも、この社説は、「裁判員裁判」なら結果が変わっていただろう、という結論にもっていきたいようである。
しかし、この事件の第1審の津地裁は、無罪判決を下している。職業裁判官でも「無罪判決」だったのである。
そして、第1審当時のマスコミ報道は、この社説も認めているように奥西死刑囚を完全に犯人視して報じていたのである。
このマスコミ報道のもと、もし裁判員裁判だったら無罪判決が出ていたか、という疑問も持って頂きたいと思った。
それを除けば、この社説は、当時の報道姿勢を反省もしていて、とても良心的な内容だと思う。
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今回の名古屋高裁の決定は、裁判の権威を守るための、示威的なものであるという意見があるが、どうなのでしょうか。
昨日、一昨日NHKでオウム事件の特集番組を見た。麻原が言う。人を殺すと、これは殺生である。しかし、「救済」のためにポアするのであれば、これは殺生ではないと。
名古屋高裁の決定がほんとに巷でささやかれている信念に基づくとするならば、合法、非合法以外に、麻原と名古屋高裁の裁判長の間に、いったい、どれほどの違いがあるのだろう。
専門家のご意見を伺いたいところである。
投稿: Dr.理学匿名 | 2012年5月29日 (火) 00時32分