司法制度改革の「後退」を許すな・・・との表題だが。
このルポライターの方の記事はちょっと興味深い。
司法制度改革の「後退」を許すな (PHPビジネスオンライン衆知)
閣議決定から約10日後、高木義明前文科相を座長とした法曹養成制度検討プロジェクトチーム(PT)の布陣が明らかにされた。代理には松野信夫(弁護士)が就き、副座長に「給費制過激派」との異名をとる辻恵(弁護士)、中村哲治両議員が入っているので、大荒れは必至である。
前出の政調関係者は続ける。
「政府案が提出されたあと、公明党に『ご説明』というかたちで仁義を切りに行っていた。国対委員長の漆原良夫(弁護士)議員も給費制過激派です。11月末からは各委員会が始まる。そこで公明党が対案を出すかもしれない。法務部門会議では、PTで『年末までに法曹養成全体について結論を出す』という条件を付けているので、そこに公明党の対案を盛り込んでくる危険性も予想できる」
民主党と公明党の給費制派が水面下で手を組んだ際、鍵になるのは当然、自民党の動向だ。実際、公明党の法務部会はPTの立ち上げと前後して、「閣法には反対。2年かけて法曹養成制度の検討を行なう。暫定的に給付制とする」という決定を漆原主導で行なったという。
公明党との関係を重視せざるをえない現在の自民党としては、対応に苦慮するところだ。石原伸晃幹事長は風見鶏的態度を崩していない。
政治状況の分析は、たぶんそうなのだろう。やはり、公明党が鍵を握っているのか。
しかし、弁護士議員だから皆「給費制過激派」と決めつけるのはどうでしょう。個々の議員がなぜ「給費制の維持が必要」と主張しているのか、きちんと分析・紹介して頂きたいものだ。
その後の司法改革やロースクール制創設の経緯の分析も、なかなか鋭い。
だが、霞が関の“優秀な”役人は、一度方向づけられれば、社会状況など関係なく、制度設計に邁進する。司法制度改革推進法が成立し、推進計画が閣議決定されたのは2002年。2年後にはロースクールが学生の受け入れを始め、2006年からはロースクール修了者を対象とした新司法試験の実施が始まる。2010年度からの貸与制への移行もスケジュール化されていた。
ところが、いざ始まってみると、新司法試験合格者にみる「質」の低下や、弁護士の大幅な増員計画が招いた弁護士間の経済格差の広がりなど、「司法制度改革は失敗だったのではないか」との見方が出てくる。いまや漆原が強硬な給費制派となっていることからも、現状が想定外の事態であったことがうかがえる。
「あらゆる部分でボタンの掛け違いが起こったとしかいいようがない」と、当時を知る元文科官僚はいう。
「元」が気になるが、今や文科省側もロースクール制が失敗だったことは認めざるを得ない状況なのではないか。あの仕分けの場での文科省側の発言でもそう感じた。
文科省がロースクール設置に非常に前向きだった要因には、各大学側からの強い要望に抗えなかったという事情もある。各大学の事務局長などは、長年、重要な天下りポストだった。では、なぜ大学はロースクールを設置したがったのか。
「いってみれば、大学側の思惑と面子です。都心に弁護士が集中していて、地方では弁護士不足が起きていたので、地域に人材がほしいというのはあったと思います。しかし、それ以上に大学から一人でも司法試験合格者を出したかった。学校のブランド力アップにもつながりますから」(前出・元文科官僚)
ふーん。やはり「大学の事務局長など」は文科省官僚の「重要な天下りポスト」だったのか。そして、こういう「大学側の思惑と面子」とそれに応えた文科省の「権限強化」の期待のために、こんな不幸な制度が生まれたのだと思うと、むなしい限りである。
ロースクールを卒業するには、1000万円かかるという試算もある。日本学生支援機構の奨学金制度の事業規模は約110億円。ロースクール生のための奨学金も多数用意されているとはいえ、経済的に逼迫しながら学んでいる、中ぐらいの学力のロースクール生への支援や、ロースクールを卒業しても司法試験に合格できなかった学生に対する雇用先の創出は十分ではない。都内の私立大学に通う法学部の学生はこんな所感を述べる。
「法曹に身を置くためのハードルが上がっているにもかかわらず、将来期待できる収入は減少する一方。司法試験合格後も修習で拘束される以上、給費受給ができなくなると経済的に厳しい。前途有望な若者が法曹を選ばなくなるのでは……。経済的な理由から法科大学院で勉強を続けることを諦める学生が少なくない」
これは本当。法学部生の法科大学院人気はがた落ちらしい。今や高校生の進学先としても、法学部と法科大学院は人気がないらしい。
そして、財源が限られているなかでは、約105億円を貸与制に変更させるべきである。実際、弁護士の6年目の平均月収は100万円近い。返済能力が十分ある弁護士のほうが大多数ではないか。そもそも、司法修習生に修習期間中に国が給与を支払おうという発想は、「戦後の焼け野原からの復興には、法治国家としてあるべき姿を整えるために、司法を担う人材を国として早急に養成しなくてはいけなかった」という背景があったからだ。
「実際、弁護士の6年目の平均月収は100万円近い。」って、どこからそんなこと言えるのか。それに、今の法科大学院生が弁護士になる頃には、とてもそんな平均収入はありえないだろう。
この記事の紹介している「司法修習生に修習期間中に国が給与を支払おうという発想」は、「戦後の焼け野原からの復興」の時代でなくても、通用すると思う。
「法治国家として、司法を担う人材は国が養成する」という理念は今も変わっていないはずだ。
一連の改革の動きを眺めてきたという元法務官僚はこういう。
「当初の改革案があまりにも性急で無理があったことは否定できない。司法制度改革全体の見直しが再度、必要なことも間違いありません。とはいえ、『国民に身近で、早くて、頼りがいのある司法』の実現をめざす本来の理念を忘れるべきではない」〈文中・敬称略〉
最後がどうしてこうなるのかよく分からないが、なかなか興味深い記事だったので紹介しました。
この記事は、どう読んでも、「司法改革は失敗だった」と言っているようにしか読めないのだが。
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