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2010年12月19日 (日)

セカンドバージン感想(番外編)

 アクセスが結構多いので、ちょっとくどいかなと思いつつ、番外編を追加。

 このドラマの最終回を見ていて、どうも既視感を感じて気になっていたのだが、その理由がようやく分かった。

 映画「さよならをもう一度」(イングリッド・バーグマン主演)に似たシーンがあることは前にも書いたが、最終回のシーンのいくつかは映画「慕情」(ジェニファー・ジョーンズ主演)のラストのあの名シーンに似ているのだ。

 この2つは大昔の映画なのだが、どちらもキャリアウーマンがヒロイン。イングリッド・バーグマンはインテリアデザイナー。ジェニファー・ジョーンズは、中国人と英国人の混血の女医。

 この2つの映画は、映画好きの方なら知らない人はいないだろうという名画。私は特に恋愛映画が好きなわけではないが、母がこのお二人の大女優が好きだったのと、家に映画音楽大全集みたいな本があったのでストーリーを知っている。何度もテレビでも放映されているし(ネット上でいくらでも詳しいストーリーを調べられるので、ストーリーの説明は省かせて頂く)。

 「さよならはもう一度」はフランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き」が原作だし、慕情はメロドラマ化されているといっても実在の女医の自伝をベースにしている。だから、ストーリー展開に不自然もない。

 それに、どちらの映画のヒロインにも無理なく共感できると思う。

 どちらのヒロインもとても大人で、「一番じゃなきゃイヤ」とか(なかなか離婚できないが努力しているという男に)「結果を出せないなら同じことよ(※)なんて言いませんし。

 このセリフには弁護士としてもドキッとしました。離婚は大変エネルギーがいることなのに、こんなことを言われたらたまりません。しかも、中村るいは部下をしかりつけるようにキツイ言い方をしていた。私が鈴木行ならいくら美人でも嫌気がさすなあと思って見ていました。

 セカンドバージンの主人公らの設定自体は、男がかなりの年下という点では「さよならをもう一度」、男に妻がいるという点では「慕情」によく似ている。

 「さよならをもう一度」の結末はペーソス溢れるもので「さもあらん」という感じだし、「慕情」はメロドラマの王道を行くという結末だが素直に泣ける。

                  

 さて、セカンドバージンの最終回で最も泣かせるシーンというのは、シンガポールのラッフルズホテルの部屋(2人が初めて結ばれたところ)の前でヒロイン中村るいが号泣するシーンだろう。るいはかつてそこに行が現れた廊下を「もしかしたら再び(亡くなった)行が現れるかも」とじっと眺め、それがむなしい期待であることを思い知って号泣するのである。

 このシーンは、映画「慕情」のラストの有名な思い出の丘(香港)のシーンに実によく似ている。多少アレンジはあるものの、脚本家か演出家は絶対この映画のシーンにヒントを得ていると思った。

 もう一つのセカンドバージンの最終回の泣かせどころが行の手紙。

 これも慕情の相手役のウィリアム・ホールディン(従軍記者で戦場で死んでしまう)の手紙を彷彿とさせる。「僕の分も生きてほしい。君は僕にはできない人の苦しみを救える人だから。」などという内容だったような。ジェニファー・ジョーンズは医師であり、当時は中国で内戦があった時代で、ホールディンは朝鮮戦争に駆り出されて苦しみながら死んでいく兵士たちを見てきた従軍記者なので、こういう背景からも説得力のある内容なのだ。

 NHKのドラマセカンドバージンは、ライブドア事件や村上ファンド事件をおそらくモデルにしているであろう金商法がらみの逮捕劇を無理矢理セッティングし、取り調べの検事に「虚業」とか「額に汗する人間こそが日本を豊かにする」などと言わせたり(これはライブドア事件の前後の検察庁のえらい方の発言やマスコミ報道を思い出させる)、出版業界の危機なども折り混ぜて、現代的に目新しく見せてはいるが、往年の名画などをベースにしていることは明白だろう。

 今の40代の女性の中には、こういう往年の名画を知らない方も多いだろうから、このドラマを新鮮に感じるのかもしれない。

 でも、ドラマの中で恋愛小説の大家として登場していた秀月先生(草笛光子さんの演技は面白かったけれども、キャラクター設定は破綻していたような)の本の帯にあった「古典を超える現代の恋愛小説」のようには、このドラマは「古典映画を超える現代の恋愛ドラマ」には全然なっていないというのが私の感想。

                

 更には、エンディングロールの最後の最後で流れていた中村るいと鈴木行が反対方向に歩いて去っていくというシーンも、どこかで見たことがあるなあと思い返していたら、「春の日は過ぎゆく」(韓国映画)のラスト近くのシーンにそっくり。

 「春の日は過ぎゆく」は、録音技師の男性が主人公で男性目線から描いているというちょっと珍しい恋愛映画。随分前に見たものだが、やっぱりバツイチのキャリアウーマンが相手で、後に「宮廷女官チャングムの誓い」で有名となったイ・ヨンエさんが演じている。イ・ヨンエさんは透明感のあるきれいな女優さんだなあと思ったので、とても印象に残っている。

 ストーリー展開はとってもシビア。でも、韓国の農村の風習などが興味深く、何よりも音と映像がとても美しい。

 この映画を見て、「日本って韓国に恋愛映画でも負けているなあ。」と思ったものだった。 

 セカンドバージンは後半はとんでもない不自然な展開であっさり男を死なせて終わりにしている。実に安直な結末だ。男を生かしておいては収拾がつかなくなるからと勘ぐらざるをえない。

 2人が反対の方向に歩き去るというシーンをエンディングロールの最後に持ってきたのは、このドラマの演出家かどなたかの皮肉かなあと思ったのは、私の考えすぎか。

                  

 NHKはこのドラマのDVDも売り出すそうだし、ドラマの最終回が放映される前に脚本家の大石静さんが小説にして文庫本を売り出している。

 それをNHKのホームページで告知するなんて、ちょっとヒロイン中村るい(出版社の社長)の「今は本が売れるのが一番」というセリフを思い出してしまったわ。

 ・・・・・これでいいのかNHK。 

 (この記事で紹介した映画3本は、一度は見ておいて損はない名画だと思う。なにしろヒロインを演じる女優さんがとびっきりの美女ばかりで、男性にもお勧めです。) 

 

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