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2010年8月 7日 (土)

報道特集の給費制問題の特集を見て

明日の法曹を育てよう!! ~司法修習生給費制維持活動ブログ~

告知:8月7日の「報道特集」で給費制の報道あり!! で知ったので、きょうの報道特集を見た。

 ちょっとだけ感想。

 内容的には、給費制反対運動の紹介には目新しいものはなかった。

 あまりロースクール問題や修習生の就職難には切り込んでおらず、先日の朝日新聞の記事に比べると底が浅い感じ。

 法科大学院修了生が口々に「弱者のために働きたい。でも、給費制が打ち切られれば断念する人も多くなる。多額の奨学金や貸与金を返せないのではないかと二の足を踏む人が多くなる。」と言っていた。

 取材に応じていた修了生らは、「少年事件」や「生活保護受給者」のような経済的弱者のために働きたいのだという。

 見ていて思ったのは、どうして彼らの不安が生まれるのかだ。

 正直なところ、この方たちの言われているのと同様の感想を持った。

   「こん日」第二版が出るらしい(花水木法律事務所)

   論旨明快。PINE's page

 結局、貸与金の返済が始まる6年後に、返済ができるだけの収入が見込めれば彼らの不安はないはずだ。

 しかし、その収入に不安があるからこそ、彼らの返済の不安があるのだろう。

 ましてや、少年事件や生活保護受給者の救済で、弁護士が食べていけるだけの収入を得ることはまず無理だ(これらは法テラス案件となることが多いが、日本の民事法律扶助予算がいかに乏しいか、その予算の不足を日本の弁護士が労力を提供するのみならず金銭的にも補充してきたことについては私の以前の記事をお読み下さい。→ 諸外国と比較してあまりに低い現在の民事法律扶助予算弁護士会の会費がまた値上げになるらしい。(追記あり))。

 弱者救済のために弁護士になりたいと言っても、最初に出てきた若手弁護士が言っていたように「自分も生活していかなければならない」のだから、弱者救済のための採算の合わない仕事をやる以上、利益が出せる仕事も平行してやらざるをえないのだ( 私の過去の記事:都会の森 参照)。

 現在の修習生の就職難は、その「利益が出せる仕事」の弁護士一人あたりの量が減ってしまったためであり、弱者救済のもともと採算の取れない仕事はそれほど減ってはいないだろう。

 問題はそういう仕事でも採算が取れるよう法律扶助予算が拡大されない限り解決は無理だと思う。

 そういう仕事でも充分に採算が取れ利益も上がるようになれば、就職難も緩和され、彼らの不安も解消されるかもしれない。

 ただ、今の赤字大国日本がこういう仕事に司法予算をまわしてくれるだろうか。見通しは極めて暗いといわざるをえない。

 結局、弁護士人口が増えるだけで、利益の上がる仕事の取り合いになり、就職難は解消されず、採算の取れない弱者救済の仕事に取り組む弁護士は増えないだろう。

・・・・・ やはり、貸与制だけの問題ではないのだ。

 もちろん現段階で給費制を打ち切るべきではないが、根本的な問題を解決しない限りはロースクール生の不安も司法修習生の不安も解消はしないのではないだろうか。

               

 もともとロースクール制も貸与制も、弁護士需要からみて日本の弁護士数が足りない、もっと増やすべきだ、という発想から生まれた制度だ(もちろん、その需要の意味は、弁護士も職業であるから充分に採算の取れるだけの需要であることを意味する)。

 ところが、その需要は当初増員論者が見込んでいたほどには増加しなかった。

 このため、需要があれば容易に返せるはずの奨学金や貸与金も、果たして返済が可能なのか危ぶまれるようになったのである。

 とすれば、ロースクール制も貸与制も、もう一度見直すべきときではないのか。

               

 司法の担い手である法曹を育てるには、それだけの時間も費用もかかる。その費用を負担するのは国民である。

 私は、一国民として、必要なだけの質と量の法曹人口は確保されるべきだが、それ以上に税金を使って増やす必要はないと思う。

 特に、将来法曹となるかどうか分からない人のためにロースクールへ補助金を投入するのであれば、その補助金を将来法曹となることがほぼ確実な司法修習生のために使う方が合理的だと思う。

 報道特集では「予備試験があるから資力がないためにロースクールに行けない人も救済される」などとのんきに説明していたが、ロースクール側の意向で予備試験がいかに狭き門とされているのかご存じないのであろうか。

 現実にはロースクール卒業が司法試験の受験資格なのである。そして、ロースクール卒業のためには多額の学費がかかり、かつ学生の負担する学費だけでは足りずにロースクールには税金から多額の補助金が交付されているのである。

 ロースクールが法曹養成のためにそれほど立派な教育をしていると自負するのなら、ロースクール卒業を司法試験受験資格になどしなくてもいいはずである。

 すばらしい教育をしているのであれば、司法試験の合格率も上がり、法曹となってからもロースクール出身者としての実績を認められ就職先に困るはずもないではないか。

 一刻も早くロースクール卒業を司法試験受験資格からはずし(希望者だけがロースクールに行けばよい)、誰でも(ロースクールに行った人も行かない人も)司法試験を受験できるようにすべきである。

 そして、法曹需要(裁判官、検察官の需要も含む)を予測しながら(その予測の資料を何とするかはいろいろな意見があろうが、司法修習生の就職状況、司法予算の増額の程度もその資料の一つとされるべきだろう)、司法試験の合格者数を決め、司法研修所で公費を使ってきちんとした研修を行うべきだと思う。

 実務家養成のための立派な教育をしているロースクールには司法研修所における教育を一部委託するという選択肢もあるかもしれない。

 以上が私の考える合理的な法曹養成制度です。少なくとも、今の養成制度よりは合理性があると思うのだが。

 今の「はじめにロースクール制維持ありき」の議論では、何の問題の解決にもならないと思う。 

 

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コメント

まさしくおっしゃるとおりです。
貸与制だけ解決しても、枝葉のなかのさらに枝葉にすぎません。

なんで頭がイイはずなのにわからないんだろうか・・・わざと?

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