司法記者クラブとの懇談会
本日は午後4時から6時まで司法記者クラブとの懇談会に出席した。
あいにく事件の取材が重なって、司法記者の出席は少なかった。
ただ、例年に比べ、司法記者の法曹人口問題に対する関心は強いように思えた。
そうそう、例の朝日新聞の1面記事「弁護士になれたけど」ルポにっぽんの「もがく『法曹の卵』」を書いた記者も出席しておられました。
取材に応じてくれる弁護士が見つからないと記事が書けない、見つかったからこそこういう記事が書けた、「よく書いてくれた」という声もあったが「特異な例だ」という批判もあった、そうである。
名古屋には「ノキ弁」はいないので東京の弁護士を取材対象としたと言っておられたが、出席した弁護士から「名古屋にもノキ弁は出てきている、表面化しないだけだ」という声があった。
例の「抵抗するのは身勝手だ」という社説で有名な朝日新聞が、よくぞこういう記事を掲載したものだと思ったのだが、記者によると特に抵抗はなかったそうだ。
私は夜の部の懇親会の方は出席しなかったのだが、懇談会の様子からすれば大いに盛り上がったことだろう。
・・・・・名古屋は猛烈な暑さ。私は土日の殆どを診療経過表の作成にあてたため、少し疲れ気味。
でも、医療過誤事件の調査の仕事が溜まっているので、休んではいられない。この夏には、遠方の協力医のところへ面談にも行かなければならないし。
司法記者との懇談会には、例の東洋経済の記事のコピーも配られ、委員長から説明もあった(私は委員長にお願いして、あの「風間記者」の「編集部から」に記載されたコメントのコピーも配布してもらった)。
その中にMIRAIOの西田研志弁護士の発言の紹介もあった。MIRAIOのCMを流しているテレビ局の記者も来ていて、この西田氏の発言にあまり疑問を抱いていないようだった。
時間がなくてあまり議論はできなかったが、西田氏は、東洋経済(2010.5.22)の「特集/弁護士超活用法」で、
事件処理工程を徹底的にマニュアル化、標準化し、パラリーガル(法律事務職)を大量養成し、IT化を進めた。「これで弁護士の生産性は数十倍になった」と豪語する。この手法で「不払い残業代請求など労働問題や賃貸住宅の敷金・更新料返還請求、交通事故や医療問題にも対応できる。弁護士はまだまだ足りない」と大幅増員を訴える。
と述べられている。
「マニュアル化」「パラリーガルの大量養成」「IT化」で、医療過誤事件の調査などの弁護士の仕事も「生産性」が高まるのだろうか?
私は、多重債務者事件であれば一定の合理化は可能だと思うが、それでも一度も弁護士が面談せずに「マニュアル化」「パラリーガルの大量養成」「IT化」で解決できるとは思っていない(これについては以前記事に書いたとおり)。
ましてや医療過誤事件などで、西田氏の提唱されるような方策によって「生産性」が高まるとは思えない。
個々の弁護士の勉強や努力は必要だと思うが。
・・・・・弁護士の仕事は一種の職人仕事だと思う。
理念ばかり言っても、現実の仕事の中身が分からないと、一般市民の方々も、司法記者も、なかなか理解できないところだろう。
これは弁護士の職務の公益性(ビジネスと割り切れない部分があること)についても同じ。
今回、愛知県弁護士会が実施したロースクール生対象の「司法修習費用給費制廃止に対する当事者の声」アンケートを配布し、ロースクール生の不安は司法修習費用の貸与制のみでなくロースクールの学費捻出のために背負った多額な奨学金の返済にもあることを説明した。
しかし、司法記者からは「弁護士だけでなく、大学院卒業後に就職すればこれ位の奨学金があるのは普通、なぜ弁護士だけそれが問題になるのか。」との質問(意見)があり、これに対し出席の弁護士複数から説明がなされた。
この問題については、また別の機会に書きたいと思います。
・・・・・それにしても、司法記者の顔ぶれは毎年変わる。出席する弁護士の顔ぶれはそれほど変わらない。
それで結構同じことの説明を繰り返さなければならないのだが、こういう地道な交流によって弁護士の職務を理解してもらうことも大切だと思う。
こちらもコツコツである。
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弁護士の生産性が高まったという話と、「弁護士増員すべきだ」という話が結びつかないように思うのは私だけでしょうか。
>今回、愛知県弁護士会が実施したロースクール生対象の「司法修習費用給費制廃止に対する当事者の声」アンケートを配布し、ロースクール生の不安は司法修習費用の貸与制のみでなくロースクールの学費捻出のために背負った多額な奨学金の返済にもあることを説明した。
福岡でも同じ趣旨の集まりを催したのですが、やはり修了生から出てくる意見は似ていました。給費制以前に、ローでの借金の方に気が取られている感じがありました。当然だと思います。
給費制の問題がもひとつ盛り上がらないのは、本丸がここではないからなのかなと思いました。
投稿: 弁護士HARRIER | 2010年7月27日 (火) 16時39分
交通事故ならまだしも(それでも、事故の経緯に争いがある場合は別)、労働事件や医療事件は、基本的な事実関係にすら争いがある事例が多く、しかも事実経緯が細かく、事情聴取や整理・調査に時間と労力を要するので、「マニュアル化」には限界がある。
これは普通の弁護士なら常識だと思うのですが・・・
西田弁護士が、何かこれらの分野で判例雑誌に載るような判決をもらったという話も聞きませんし。
>理念ばかり言っても、現実の仕事の中身が分からないと、一般市民の方々も、司法記者も、なかなか理解できないところだろう。
同感ですが、なかなか外部からはわかりにくいところでしょうね。
たとえば通常の訴訟にかかる総作業・総時間を(類型別に)集計して、明示するということはやってもらってもいいように思います(日弁連の業務対策委員会とかで)。(というか、よく考えたら、裁判所が判タとかで類型別審理モデルとか掲載してますよね・・・。)
MIRAIOも過払いバブルの崩壊で苦しいという噂は聞きます(真偽はわかりませんが)。
彼らの「マニュアル化」ビジネスモデルが他分野でも成功すれば、CMでも宣伝するでしょうが、
失敗すれば、受け過ぎた事件の処理をめぐる顧客とのトラブルが生じることでしょう。
行くところまで行くしかないんでしょうね。
投稿: マチ弁(労働事件と医療事件を受け過ぎて疲弊中) | 2010年7月28日 (水) 19時49分
>彼らの「マニュアル化」ビジネスモデルが他分野でも成功すれば、CMでも宣伝するでしょうが、失敗すれば、受け過ぎた事件の処理をめぐる顧客とのトラブルが生じることでしょう。
司法記者にはそういう意識はあまりないようでした。
「大規模スーパー」と同様に考えているようです。
弁護士は野菜や魚を売るわけではなく、人間が相手の仕事ですので、合理化は難しいということがあまり理解されていないようでした。
たくさん受けて処理を合理化できるような事件は限られているということの理解は、一般の方々にも難しいのでしょうね。
但し、医療過誤事件についていえば、大宣伝して多くの相談を受け、医師の過失の明確な事件(医療機関が直ぐに示談に応じるような事件ー希ですが)のみを受任するようにすれば、儲かるし、トラブルもあまり生じないかもしれません。
それが弁護士の取るべき道かどうかは知りませんが。
>行くところまで行くしかないんでしょうね。
行きつくところまで行っても、宣伝したマスコミは何ら責任を取らないでしょうね。
ロースクールと同じですね。
投稿: M.T.(管理人) | 2010年7月29日 (木) 18時52分