弁護士、司法書士と会わないで依頼する債務整理はあり?ーその2
つづき。
相談者や依頼者が任意整理による債務整理を希望されるものの、収入と支出のバランスから分割返済が困難ではないかと思われたとき、数ヶ月家計簿をチェックするなどして本当に分割返済が可能か検討する。
その結果、やっぱり任意整理は無理という場合は、個人再生や破産をお勧めするほかない。
最初から無理と分かっている任意整理を引き受けて報酬をもらうことはたやすいが(途中で返済できなくなった時点で辞任すればいい)、それでは依頼者の本当の救済にはならないからである。途中で返済できなくなると、任意整理の弁護士費用が無駄になるだけでなく、遅延損害金がついて借金の額が膨らむだけのことだから。
こういうとき、それでも「破産や個人再生はいやだから、どうしても任意整理にしてほしい。」と言われたら、そういう依頼をきっぱり断ることも弁護士や司法書士の誠実なあり方ではないかと思う。
だから、簡単に事務所に来ないでも「任意整理できますよ。」などとは、とても言えないのである。
破産や個人再生の場合も、一度も依頼者に面談しないでできるようなものではない。
確かに仕事を持って忙しい方も多いので、できるだけ事務所には来て頂かなくてもいいようには工夫している。
しかし、破産か個人再生かは、それぞれに必要な法律の要件も違うし、ご本人に一部でも返済したいという意思があるかどうかにもよるので、面談しないで電話だけですますというわけにはいかない。きちんとお会いして、手続や費用のことも説明しなければならない。また、節目節目で裁判所に提出する書類について打ち合わせの必要が生じることもある。
いったん弁護士や司法書士に任意整理を依頼をしたが、もともと無理な分割返済案だったために直ぐに返済できなくなり、個人再生や破産せざるをえなくなった方の依頼を何度も受けたことがある。
そういう方の中には、前の弁護士や司法書士の処理に問題があって、弁護士や司法書士全体に強い不信感を抱いている方もいる。
これは、医療過誤事件の前医と後医の関係に似ていると思う。
後医の引き受け手がなかなか見つかりにくいように、前の弁護士の処理でこじれた事件は後の弁護士はやりにくい。
現在、私はそういう案件を数件抱えていて、頭が痛いのである。
事務員が「先生まで見捨てたらAさんはかわいそう。」と言うので、頑張っているのだが、依頼者の法曹全体に対する不信感が強くなっている場合(これも医療過誤の被害者が医療関係者全体に対して不信感を持つのと極めてよく似ている)は、一生懸命説明してもなかなか理解してもらえず困るのである。
容易に借金の整理ができるかのような期待を持たせる弁護士や司法書士の広告にはこういうリスクもあるということは、広告する側も広告を見る側の方々も充分注意する必要があるだろう。
今回の日弁連の会長選では弁護士の広告規制も争点になるようだが、広告にはメリットもデメリットもある。
確かに問題のある広告も見受けられるが、広告を見て弁護士や司法書士の事務所に足を運ぶ気になって救済される人もいるのも事実である。
だから、簡単に結論が出せるような問題ではないと思う。
ただ、面談を一度もしないでもいいというような債務整理の方法はなし、というのが私の実感である。
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