ドキュメンタリー「アウシュビッツ」(BBC制作)と映画「シンドラーのリスト」を見てーその1
先々週の土日にNHKのハイビジョンで再放送された「アウシュビッツ」(5回シリーズ)(BBC制作)と先週の日曜日に放映された映画「シンドラーのリスト」を見た。
どちらも大変ショッキングな映像が多く、思わず目を背けたくなる。
しかし、これはぜひ多くの方に見てもらいたい秀作だ。
ドキュメンタリー「アウシュビッツ」の方は、俳優を使っての実写やガス室の建物などのCG、僅かに残されている白黒写真、それに生き残ったユダヤ人の囚人、ナチス親衛隊員などの生々しい証言によって、アウシュビッツの歴史をたんたんと浮き彫りにする。
その「たんたん」としているところが、実に恐ろしい。
戦争は人間をここまで残虐にするものなのか。
「死の工場」アウシュビッツで、ガス室での大量殺戮から焼却場へと、まるで家畜を屠殺してその死体を始末するがごとく、平然と作業を計画し実行する親衛隊員たち。
彼らは、強烈な死臭が漂う中、多数の娯楽施設も完備していたアウシュビッツで享楽的な生活を楽しみ、ユダヤ人の所持していた現金や貴金属などを平然と横領もしていたという。
所長のルドルフ・ヘスは、敷地内に妻子とともに住み、家族とすごす時間を大切にするよき夫、よき父であったという。
しかし、平然とユダヤ人の子供たちを殺戮し、双子の子供らに対する人体実験まで許していた。
「戦争の狂気」とよく言うが、ユダヤ人の絶滅計画がここまで感情抜きで合理的に遂行されていくのを見ると、「狂気」とだけでは片づけられないものを感じる。ゆがんだ選民意識というか、ゆがんだナショナリズムというか。ユダヤ人を同じ人間と思っていては、到底こんなことはできないだろう。かつてのアメリカ南部において冷酷な白人の主人が黒人奴隷に対して取った態度と共通するものを感じた。
戦後、親衛隊員は逃亡をはかったが、ユダヤ人兵士に見つかり裁判にかけられることもなく森の中で密かに絞殺された者もいたという。この復讐の場面を語るユダヤ人の証言もおそろしい。
ルドルフ・ヘスは変装して農家に潜伏していたが、「ヘスの居場所を知らせないと息子をシベリア行きの列車に乗せる」と騙された妻の証言で、ついに逮捕され、裁判の後、アウシュビッツに設置された絞首刑台で処刑される。
戦後60年を経て、生き残った元ユダヤ人囚人や元親衛隊員らがようやく重い口を開く気持ちになったことで、これだけのドキュメンタリーができたのだろう。
BBCの大変力のこもったドキュメンタリー作品であった。
また再放送もあると思うので、こういう戦争の真実を伝える貴重な番組は、老若男女、多くの方に見てもらいたいものである。
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