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« はや6月 | トップページ | 「朝まで生テレビ」で裁判員制度を激論 »

2008年6月20日 (金)

弁護士に対する裁判員制度についてのアンケートってそんなに問題なの?

 私の所属する司法問題についての調査・検討を目的とする委員会(司法問題対策委員会)で、愛知県弁護士会の会員を対象とする裁判員制度についてのアンケートを実施することが決まった。

 このアンケートを実施することについて、出席した委員の誰からも反対意見は出なかったし、(欠席しており)議事録の配布を受けた委員からも反対の意見は出なかった。

 委員会での議論は、アンケートを実施するか否かではなく、アンケート項目をどうするかという点に絞られた。

 私は弁護士向けのアンケートを起案したのははじめてではないが、一番苦労するのは、どうやったら多くの会員にアンケートに答えてもらえるかという点である。

 弁護士は日々ものすごい数の書類(事件関係のものだけでなく、裁判所や弁護士会からの連絡文書、広告等も多い)の配布を受けているし、いろいろな機関からいろいろな種類のアンケート用紙が送られてくる。

 それで、忙しいとアンケートの類はついつい机の上に積み上げたままにしてしまうのである(後で記入しようと思って積み上げているうちに、期限が過ぎていたなんてこともままある)。

 それを、負担感なく答えてもらうためには、質問を分かりやすくしたり、回答を選択すれば足りるようにしたり、いろいろな工夫が必要なのである。

 もちろん、どちらかの回答に誘導するようなものであってはならない。

 確かに私の所属している委員会の委員は裁判員制度に懐疑的な方ばかりである。しかし、裁判員制度について賛成か、反対か、そして実施を延期すべきか否かについて、できるだけ公平なアンケートになるよう項目を掲げ、自由記載もできるスペースもたくさん設けた。

 そして、多くの委員から貴重なご意見を頂き、A42枚程度にアンケート項目をまとめ、ようやく表現などを調整するだけにまでたどりついた。

 ところがである。

 突然、理事者からこのアンケートを実施することについて他の委員会から異議が出ているので協議してもらいたい、という申し出があった。

 そして、その2つの委員会の委員長名で会長宛(実質は司法問題対策委員会宛と思われるもの)に

 裁判員法に基づく裁判員制度は弁護士会の要求のすべてが採用されたものではなく、両委員会は同制度が完全なものであるとは考えておりません。また、会員の中にも様々な意見があり得ることは十分承知しております。

 しかしながら、制度の実施まで1年を切ったこの時期にあえて上記アンケート案のような内容の会員アンケートを行うことは、徒に同制度に対する会員の不信感を助長し、実施のための準備活動の妨げとなるのではないかと危惧を抱かざるを得ません。

 また、アンケート案の内容は、基本的に裁判員制度について賛成か、反対かを問うものとなっており、一般市民向けのアンケートであればともかく、法制度の運用、実践に携わることを職責とする弁護士向けのアンケートとして果たして適切なものと言えるのかと考えざるを得ません。

との記載がある要望書まで提出された。

 裁判員制度について会員の意見を調査するアンケートを企画しただけでこの始末である。

 新潟県弁護士会と栃木県弁護士会では、裁判員制度の抜本的見直しと実施の延期を求める総会決議まで出ているというのに・・・。

 この要望書を起案した人からみれば、アンケートを企画するだけでこの始末なのだから、弁護士が裁判員制度に反対するのは「法制度の運用、実践に携わる職責」に反する、ということになるんだろう。

 この対応には、大変驚くとともに、失望を感じた。

 弁護士会は、これまで幾多の法制度の策定や修正等について意見を述べてきたではないか。最近では貸金業規制法の改正(グレーゾーン廃止)にも貢献したはずである。「できてしまった法制度」に対してはたとえ憲法違反であってもただただ運用、実践に励むべきというのには納得がいかない。

 ・・・・・しかし、こういう圧力に負けていてはいけない。幸い委員長を初めとする委員全員がアンケート実施に前向きなので、このアンケートは実施することになるだろう。

 このアンケートの集計結果は定例となっている司法記者との懇談会で発表することも予定されている。

               Yajirobei_mini

 だいぶ前の記事だが、

 今週の本棚:大岡玲・評 『裁判員制度の正体』=西野喜一・著

       毎日新聞 2007年9月16日 東京朝刊

 裁判員制度ができてしまった経緯が分かりやすく述べられている。

 現行の司法制度が完全であるなどとは毛頭思わないが、まずやるべきは今の制度の欠点をすべて洗い出し、漸進的に改革することだろう。無謀な一足飛びで多大なリスクを負わされるのは、ご免こうむる。

 これは裁判員制度にかぎらず、司法改革全般にわたって言えることだと思う。

他の弁護士の関連記事:お茶の水山の上ホテルより(Barl-Karth弁護士)

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コメント

どうして有識者が「間違っているものは間違っている」「おかしいものはおかしい」というのがいけないのか、さっぱり分かりません。
間違っていたり、おかしければ、素直に検討し直し、訂正の必要があるものは訂正するのが正しさだと思うのですが…。

裁判員制度については、国民の意思も都合も人権さえも無視して「勝手に作られた法制度」としか思えません。

大多数の国民にとって、金銭的にも精神的にも負担にしかならない制度を作って、一体何がしたいのかも、全く分かりません。

 こんにちは,上記のトラックバックは,意味深ですね。「いわゆる司法改革」の「ねじれ現象」は同業者でもある程度「会内政治」に関わっていないと,把握が難しいですね。まして,同業者以外の方には,訳の分からない話ではないでしょうか?
 ブログに書いた私のメッセージは,反裁判員の運動に携わっている人にも意外だったらしく,会場がどよめきました。

 ところで,6月の「朝まで生テレビ」(裁判員特集)に出演することになりました。口べたなもので,ちゃんとしゃべれるか心配です。

イニシャルKかYさん
>どうして有識者が「間違っているものは間違っている」「おかしいものはおかしい」というのがいけないのか、さっぱり分かりません。

ごもっともです。
 この「有識者」の中に「弁護士」が含まれていることが残念でなりません。

Barl-Karthさん
>いわゆる司法改革」の「ねじれ現象」は同業者でもある程度「会内政治」に関わっていないと,把握が難しいですね。まして,同業者以外の方には,訳の分からない話ではないでしょうか?

 確かに。
 私は最近になってよーく分かってきました。

 朝まで生テレビ楽しみにしています。
 TVタックルもなかなかよかったです。

愛知県弁護士会の理事者らの大局観のなさ、気概のなさ、小心翼々とした態度に失望を通り越して吐き気を覚える。
くだらない政治問題に人権を振りかざして、会員の意思を無視して、反対声明を安易に濫発するくせに、なぜ真に国民の人権侵害が問題となる裁判員制度に職を賭して、体を張って抵抗しないのか。
結局、この人たちは、理事者に立候補する際に、おのれの名誉、商売上のメリットしか考えていないのだ。

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