弁護士人口問題を考えるにはもっとデータの分析が必要だ。
きょうは、久しぶりに委員会に出席した。
司法改革問題を議論する委員会である。
都合がつかずに2回ほど休んでいる間に、山のような資料が配付されていた。
その資料に目を通すと、実にいろいろなデータが掲載されている。
新聞などは、諸外国に比べて日本は弁護士が少ないということをよく取り上げるが、
諸外国では弁護士が多いことについて積極的な評価がなされているのか
日本では隣接士業(司法書士、行政書士、税理士など)が行っている仕事を諸外国ではどれだけ弁護士が担っているのか
諸外国では弁護士過疎はないのか
諸外国では国民一人当たりの司法予算、民事法律扶助予算がどれ位の金額か
諸外国の国選弁護報酬はどれ位の金額か
などについて語ることは殆どない。
頂いた資料の中には、これらについて数値を掲げて分析・検討したものもあった。
しかし、弁護士会の内部資料ということで、公開を許してもらえないのは残念至極である(今後も交渉するつもりではあるが・・・・)。
司法制度改革審議会や規制改革会議が、上記のような項目について十分に調査した上で比較検討していたとはとても思えないのだが。
千葉県弁護士会が5月の定期総会で「適正な弁護士人口に関する決議」を可決した。
この決議は、近日中に、このブログの右サイドバーにPDFファイルで載せるつもりである。
他の弁護士の関連記事:
弁護士人口問題(坂野智憲の弁護士日誌)
引用させて頂くと(太字、下線は私が付したもの)、
裁判所所管歳出予算は2000年3186億円が2007年3300億円、国家予算に占める裁判所予算の割合は2000年0,375%が2007年0,399%、検察庁予算は2000年1055億円が2007年1048億円、法律扶助事業費補助金は2000年21億円が2007年24億円でいずれもほとんど変わっていない。日本司法支援センター運営交付金は僅かに102億円である。司法審意見書では裁判官及び検察官の大幅増員の必要が明記されたが具体的な数値は示されなかった。その結果、裁判官は平成12年3019名が平成18年3341名、検察官数は平成12年2231名が平成18年2479名と微増にとどまっている。これでは「国民の司法に改めるため国家戦略として取組んでいる」などと言えるはずはなく、「国民の司法を確立するという国民的総意」などなかったことは明らかである。
・・・・・・こういう数値を掲げて「国民のための司法改革」を問うたマスコミはあったであろうか。「もっと弁護士を増やせ」と言っても、「もっと裁判官や検察官を増やせ」と言わないのはなぜだろう。もともとは「法曹人口増」だったのが、いつのまにか「裁判官増」「検察官増」が抜け落ちている。
司法審意見書は、司法の役割について「法の支配の理念に基づき、すべての当事者を対等の地位に置き、公平な第三者が適正かつ透明な手続により公正な法的ルール・原理に基づいて判断を示す司法部門が、政治部門と並んで、公共性の空間を支える柱とならなければならない。」としている。私は、司法の役割についてのこの認識は理念としては全く正しいと考える。しかしそれを現実の政策として実現するには「人」もさることながら、膨大な「物」と「金」が必要である。司法審は「人」の数については、年間3000人、総数5万人という具体的目標とそのプロセスを示したが、「人」の中身と「物」「金」については何ら具体的数字を掲げなかった。そのため「法の支配を津々浦々に」「国民の社会生活上の医師」というフレーズと相俟って、あたかも司法改革イコール弁護士の増加であるかのような誤解を世間に与えてしまった。
司法審意見書の美辞麗句は耳に心地よいが、平成14年以降の政府の対応を見ればそれが市民を欺く欺瞞であったことは明らかである。一部の財界人と政治家は、アメリカ政府の増員要求と規制緩和万能論に便乗して、安く使い勝手の良い弁護士をビジネスに利用すると共に人権・労働・環境問題などでうるさいことを言う弁護士会を弱体化させようと考えたのであろう。現在司法改革と呼ばれている政策は、このようなネオリベ派が、理想を掲げる弁護士と学者を巻き込んで作り上げたもののように思える。しかし所詮同床異夢に過ぎなかった。
・・・・・・大変痛烈だが、これが事実だろう。
激増政策を支持する者は、法的需要はたくさんある、国民は弁護士人口の増加を望んでいると言う。しかし無料で困り事を聞いてくれる弁護士なら多ければ多いほどよいであろうが、実際に弁護士を依頼するにはコストがかかる。無料法律相談のレベルでの需要とコストを負担しての需要では全く意味が異なる。
・・・・・・これが現実というものだろう。
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