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« 橋下弁護士はどういう反論をするのだろうか?(追記:記者会見記事の感想) | トップページ | 懲戒請求問題について »

2007年9月 6日 (木)

弁護人の説明責任?

 橋下弁護士はご自身のブログと昨日の記者会見で、さかんに弁護団が「説明責任」なるものを果たしていないとご主張なさる。

 この説明責任とは、橋下弁護士のブログ橋下徹のLawyer’s EYEによれば、

 一言で言えば、説明義務違反、被害者に対して、国民に対してのね。

 一審・二審で全く主張していなかった、新たな主張をなぜ差し戻し審で主張することになったのか。
 第一に被害者への、そして第二に裁判制度という制度の享受者である国民への説明を怠っている。
 今回新たな主張を展開することによって、判決が遅れる。
 これによって一番苦痛を被るのは被害者だ。一審・二審で弁護人がきちんと主張していれば、今回のように裁判制度によって被害者が振り回され、翻弄されることはなかっただろう。一審・二審の弁護人の弁護活動が不十分だったのであれば、その点をきちんと説明した上で、今回のような主張を展開すべきだ。
 一審・二審では被告人自身もその犯行態様を完全に認めており、最高裁までもその点については事実誤認は全くないとしていることについて、差し戻し審でこれまでの主張と全く異なる主張をするのであれば、なぜそのような新たな主張をすることになったのか、裁判制度に対する国民の信頼を失墜させないためにも、被害者や国民にきちんと説明する形で弁護活動をすべきだ。
 その点の説明をすっ飛ばして、新たな主張を展開し、裁判制度によって被害者をいたずらに振り回し、国民に弁護士というのはこんなふざけた主張をするものなんだと印象付けた今回の弁護団の弁護活動は完全に懲戒事由にあたる、というのが僕の主張の骨子です。

 というものらしい。

 橋下弁護士の説によれば、弁護人は被告人の供述が変わり、弁護人も主張の変更を余儀なくされたときには、裁判所にその理由を説明するだけでなく、被害者と国民に(どうも「裁判所に説明する前に」らしい)理由を説明しなければならないようだ。

 これをつきつめれば、被害者と国民に理由を説明した後でないと弁護人には主張の変更も許されないことになるだろう。それでは被告人の弁護を受ける権利を害する。

 このような弁護人の説明責任を定めた法律がないことはいうまでもなく、このような見解を取っている法曹関係者、法律学者は(橋下弁護士以外には)日本中どこを探しても一人もいないであろう。

 橋下弁護士は「説明責任」と繰り返し述べられるが、その説明責任が発生する根拠については全く説明していない。

 仮に「道義的」な責任が発生するとしても、弁護人には被告人との関係で「守秘義務」という法律上の義務がある。被告人の了解なしに、マスコミ等に対して被告人の供述の変遷の理由をベラベラしゃべったら、それこそ懲戒ものだ。

 弁護人には、被告人の弁護のために裁判所に被告人の供述の変遷や弁護人の主張の変更の合理的理由を説明すべきであるが、本来、被害者に対しても国民に対しても、主張の変更の理由を説明する義務はない。

 もし、この義務があるとすれば、たとえば捜査段階で自白し公判になって否認する事件全て(たくさんある)について、それぞれの事件の弁護人は被害者と国民に対して、記者会見等によって「どうして否認に転じたのか」を説明しなければならないことになる。そんなことは現実に不可能であることは誰にでも分かることだ。

 本件は被害者遺族がマスコミに度々登場することによって注目を集めているが、現実には注目を集めていない事件でも被告人の供述が変遷し弁護人の主張が変わる事件がたくさんある。その全ての事件について、弁護人は被害者と国民に対してその理由を説明せよというのだろうか。それとも、注目を集めている事件についてだけ説明し、注目を集めていない事件は説明しなくてもいいのか。そんな不公平な説明責任は「道義上」もありえないだろう。

 それでは、なぜ弁護人は記者会見を開くのか。私もかねがね疑問に思っていた。

 これについては、「法と常識の狭間で考えよう」さんの

  弁護人は被疑者との接見内容をマスコミに話してよいか?

 「山野草一郎ブログ」さんの

  語り始めた弁護士

 が弁護人の記者会見の意味について検討されている。

 弁護士も、記者会見肯定派、否定派に分かれるようだ。つまり、弁護人の守秘義務の観点から記者会見もしない方がよいという法曹関係者も多数いるのである。

              Xxx

 それでは、国民は一切裁判の蚊帳の外に置かれるのか。そうではない。憲法は「裁判の公開」(37条1項、82条1項)を定めている。

  このため、裁判所には傍聴席がある。しかし、座席には限りがあるため国民に広く裁判の情報を提供できる立場にある記者席が優先的に設けられている。

 よって、国民は傍聴した記者らによる報道を通して裁判の情報を得ることができ、裁判を監視することができるのである。

 以上のとおり、弁護人には被害者及び国民に対してその主張を説明する義務はない。国民が裁判の情報を知るには、原則として自ら傍聴するか、裁判報道によるほかないのである。そこで、マスコミの裁判報道が重要となる(本件ではこの裁判報道の多くが恣意的で公平さを欠いていたことこそ問題にされるべきである)。

 次回公判(9月18日、9月19日)には被告人質問があり、被告人の供述の変遷について弁護団から質問がなされる予定であるという。この結果をマスコミがしっかり報道してくれれば、国民にも被告人の供述の変遷の理由が伝わるだろう。

             Buranko

 それなのに、本件の弁護団はなぜ記者会見をこんなに頻繁にするのか。それについは今度記事で書くことにする。

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コメント

発達障害に関わっている者です。
最近やたらと事件が発生するたび、「犯人が発達障害があり、」という弁護側のコメントが発表されますが、ルポライターの藤井氏の報告では、「あっ、だめだめ、あの子と遊んじゃあいけませんよ」というように、発達障害の子を周囲の人間が避けるようになっているらしい。
発達障害児・者=犯罪者予備軍という印象を浸透させたことについて、責任を感じないのか?
もしこのことで差別なり事件なりが発生しても、その点について弁護士は何も問われないのか?
なお、Aという精神科医とBという精神科医が同一人物を精神鑑定した結果、Aは「発達障害あり、」と鑑定し、Bは「発達障害なし、」と鑑定するということはざらにある。定義と解釈次第でどうにでもなるからだ。

ご意見を聞かせてもらいたい。

じつに迷惑な弁護士連中である。

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