マイペット

アクセスカウンター

  • 2006年5月18日~

コメント・トラックバックについて

  •  このブログのコメント、トラックバックは管理人の承認制となっています。このため、ブログに記載されるのに時間がかかることがあります。管理人の判断でブログの記事と無関係なコメント等や、誹謗中傷等の公序良俗に反する内容のコメント等は承認致しません。

アクセスランキング

ブログランキング

  • ブログランキング・にほんブログ村へ
     クリックして頂くとブログランキングがアップします。 よろしければクリックお願いします。

ねこちか2

サイバーキャットと遊べます。猫じゃらしで遊んだり、エサを与えることもできます。

« 今枝弁護士の話ーその6 | トップページ | 光市母子殺害事件の弁護団の一人で、橋下弁護士を懲戒請求煽動の件で提訴した原告の一人である今枝仁弁護士の話(まとめ) »

2007年9月 8日 (土)

今枝弁護士の話ーその7

引き続き今枝弁護士の話

 弁護団は被害者・遺族の気持ちを考えていないというコメントに対して

 被害者・遺族の気持ちを考えていない、という批判に対し、誤解され得ることを承知で、正直に気持ちを述べます。

 私は、前述のように自分自身事務所を拳銃で銃撃するという被害に遭いましたし、裁判所刑事部事務官、検察官、刑事弁護人の職務を通じ、何十・何百という被害者の方と話をし、その法廷供述を目の当たりにし、何百・何千という供述調書を読んできました。

 不謹慎に思われるかもしれませんが、仕事がら死体の発見状況、解剖状況を見ることも多く、ご遺族のやるせない気持ちに触れることもたくさんありました。

 その課程で、図らずも不覚ながら涙を流したことは数えきれません。 

 本件も特にそうですが、それ以外にも、松本サリン事件の現場記録には胸がつぶれる思いをしました。
 普通の生活の課程で、突如サリンによる攻撃を受けた人は、何が起こっているか分からない状況で苦しまれ死に至っており、その状況からそれがはっきりと分かりました。

 通常の事件では、被害に遭った方が亡くなっている状況だけですが、その現場付近は、ありとあらゆるすべての生き物が、死んでいました。 池の魚は浮き、鳥は地に落ち、アリは隊列のまま死に、まさに地獄絵図とはこういうものか、と感じました。 

 そして、亡くなった方々の生前の写真、友人らの追悼の寄せ書き、それらの資料からは、突如として亡くなった方々の無念や、ご遺族・知人らの残念な思い、怒りは、想像を絶するものと思われました。

 私は、日常の生活とは無関係なところで起きている事件の、マスコミ報道を見て怒っている方々の多くよりはきっと、職務経験的に、被害者やご遺族らのお気持ちを、もちろん十分理解したとまでは言えないかもしれないものの、少なくとも触れて目の当たりにし体験しています。その壮絶さは、ときには肌を突き刺す感覚で身を震わせます。

 職務の過程で、もし自分や家族がこういう被害に遭ったらどう思うだろうか、同じような被害に遭って果たして加害者の死刑を求めないだろうか、という自問自答は、それこそ毎日のように私の心を襲います。そしてときには苦しみ、ときには悩み、日々の職務を遂行してきました。正直に言いますが、自責の念にとらわれて煩悶することも、ありました。

 しかし、対立当事者間の主張・立証を戦わせて裁判官が判断する当事者主義訴訟構造の中での刑事弁護人の役割は、被告人の利益を擁護することが絶対の最優先です。

 むやみやたらに被害者・遺族を傷つけるような行為は自粛すべきものの、被告人の権利を擁護する結果、被害者・ご遺族に申し訳ない訴訟活動となることは、ときには避けられません。
 そういう衝突状況で、被害者・ご遺族を傷つけることを回避しようとするばかりに、もしも被告人に不利益が生じた場合は、刑事弁護人の職責は果たしていないことになってしまいます。

 被害者・ご遺族の立場を代弁し、擁護するのは検察官の役割とされています。それが当事者主義の枠組みです。

 典型的な例は、被害者が死亡しているのが明らかな場合に、被告人が「自分は犯人でない」と主張し、それに従って弁護するときです。
 ご遺族からすると、検察官が起訴した以上その被告人が犯人であり、犯人が言い逃れをするのは許し難く、被害感情を傷つけることになります。
 しかし弁護人は、被告人が「自分が犯人でない」と主張する以上は、その言い分に従い(証拠構造上その言い分が通るのが困難であればそれを説明し議論した上で最終的には従い)、被告人が犯人ではないという主張・立証を尽くさなければなりません。
 その場合、職務に誠実であればあるほどご遺族を傷つける可能性もありますが、それをおそれて被告人の利益を擁護することに手をゆるめてはならない立場にあります。 

 そして、被告人の弁護をなす課程で、「被害者・遺族の気持ちをまったく理解しようとしない。」という批判を受けます。
 人間ですから被害者・ご遺族の立場に最大限配慮しているかのような態度をとって、批判をかわしたい気持ちもありますが、そのような自分の都合で被告人の権利擁護の手をゆるめることはできません。

 このような刑事弁護人の苦悩は、経験のない一般の方に理解していただくのは困難かもしれません。なにも見下しているわけではなく、実際に体験してみないと分からないことはほかにもたくさんあります。

 私も体験したわけではないので適切な例でないかもしれませんが、会社で例えると、従業員をリストラせざるを得ない上司の立場に似ているでしょうか。
 リストラされる従業員の苦悩を、その上司は経験上痛いほど自分なりに感じて苦悩していることも多いでしょう。
 そして第三者は、「リストラされる者や家族らの気持ちを考えているのか。」「考えていないから平気でリストラができるんだろう。」と批判するかもしれません。

 おそらく、「そのような一般論はいいけれど、光市事件差し戻し審の主張内容からすると、被害者の尊厳やご遺族の気持ちを考えていないのではないかと批判されても仕方ないだろう。それに被告人の利益にもなっていないではないか。」とのご指摘があろうかとは思います。
 しかし、これだけの凄惨な事件の弁護活動を職務とし、毎日のように記録(もちろん本村さんの「天国からのラブレター」も)に触れ、世間から激しいバッシングを受けている過程で、被害者・ご遺族の気持ちにおよそ思いを馳せないというような人間が存在し得るでしょうか。

 自分の家族が同じような被害に遭ったら、という自問自答は、数え切れないほど繰り返し、何度夢に見たことでしょう。
 こういうバッシングを受けたり脅迫行為も受けている状況ですから、他の大勢の方々とは異なり、私たちには現実に起こりうる危惧です。

 「主張内容からみる限り、被害者・ご遺族の気持ちをまったく理解しようともしていない」「被告人の利益にもなっていない」とのご批判についても、マスコミ報道から受けた印象だけではなく、私のつたない文章(すべての思いがとうてい筆舌に尽くせぬことにもどかしさを感じます)や、もうすぐ広まりわたるだろう弁護団の主張全部やその根拠となった鑑定書等を検討した上で、ご再考いただきたいと思います。

 すべてを書き尽くすことは到底できませんが、家裁記録に「孤立感と時間つぶしのため、会社のPRと称して個別訪問した」「部屋の中に招き入れられて、不安が高まっている」という記載は「個別訪問は強姦相手の物色行為ではなかった」との主張に結びつき、「被害者に実母を投影している」「非常に退行した精神状態で進展している」という記載は「甘えようとする気持ちで弥生さんに抱きついた」という主張に結びつくなど、従前の記録中の証拠にも、現在の主張の根拠は多数あったことを紹介しておきます。

 私たちは専門家としての刑事弁護人ですから、なんら証拠に基づかない主張の組み立ては行っていません。
 あの「ドラえもん」ですら、捜査段階の供述調書に出てきます。

« 今枝弁護士の話ーその6 | トップページ | 光市母子殺害事件の弁護団の一人で、橋下弁護士を懲戒請求煽動の件で提訴した原告の一人である今枝仁弁護士の話(まとめ) »

刑事弁護」カテゴリの記事

コメント

光市事件の弁護団の人が、こういうふうに悩んで仕事をしているとはまったく知りませんでした。
というか、まったくそういう悩みがないからこそ、ああいう主張が平気でできるんだと、マスコミの論調から思っていました。

こういう情報は、世論の大半が弁護団批判に染まっている今だからこそ、もっと大々的に広げるのがいいのではないかと思います。
多分、今まではそういうことをすると、守秘義務に反するとか、かえってバッシングを強めるとか心配されたんでしょうが、この内容であれば多くの人が理解を示してくれるのではないかと思います。

今ほど、「弁護士とは」が問われていることは前代未聞ではないですか。

「一般人に指示され、世間のウケを良くするべき」vs「被告人の利益擁護最優先」という議論、ほとんどというか全てに近い弁護士さんが、おそらく後者を支持されていますよね?弁護士ブログを徘徊する限り。
そんな状況で、光市弁護団や今枝原告らを孤立させていていいんですか???
会長声明とか出ているのは知ってますけど、趣旨は「暴力で威嚇するのは不当」ってことですよね?
弁護士508人の緊急アピールにしたって、アピールして終わりですかあ??
橋下弁護士は「数に意味がある。数が多いということは正当ということにつながる。」というんだから、今枝原告ら側に508人が代理人につくとか。
テレビのコメンテーターも、弁護士はおおむね今枝原告ら側支持ですし、橋下弁護士に代理人が就かなかったことからも弁護士の間では今枝原告ら側が正当と思っているのは推測できますけど、世間ではそうは思っていませんよ!?

ブログで応援している管理人さんはまだマシな方かもしれないけど、この問題が自分らの職域に対する「黒船」だという危機感を持たないと、橋下弁護士が言っているように、「弁護士会を一回ぶっ壊せ」という議論にすらなりかねないと思います。

はじめまして。この件で、あらためて演出されたテレビと、感情的にのせられてしまう事を感じました。少しでもいい情報をと思い、傍聴された方のを探し出したりして、今回やっと当事者の方自身のコメントにたどり着く事ができました。  
正しく理解したいので、うちのブログに載せさせてくださいね。

もし御説のとおり、「確定的殺意」を示唆する証拠が虚偽・捏造であるとするならば、
それについて記者会見などにおいて、荒唐無形としか思えない説明しかできなかった弁護団の責任は、
さらに重大であると言わざるを得ません。
マスコミの報道の問題も有るだろうとは思いますが、もし、マスコミの報道が歪曲されたものなのだとするならば、
それに対してこそ、然るべき措置を執るべきなのではないかと思いますが。
また、今枝弁護士事務所の襲撃事件や、日弁連への脅迫行為は、極めて卑劣な犯罪行為であり、徹底的な捜査と、犯人への厳罰が望まれることは言うまでもありません。
ただ、其の件での卑劣な犯罪者と一般国民とは全く関係ありませんし、
本件での弁護団の活動の是非とも全く関係はありません。

tm様

>もし御説のとおり、「確定的殺意」を示唆する証拠が虚偽・捏造であるとするならば、

どこにそのようなことが書かれているのでしょうか。
弁護人は,傷等の状況から,殺意があったとまではいえないのではないか,との疑問を提示しています。
弁護人が殺意を争うことは,“「確定的殺意」を示唆する証拠が虚偽・捏造である”と主張することと同じではありません。


>本件での弁護団の活動の是非とも全く関係はありません。

弁護人が過去に襲撃事件を受けたことと,“本件での弁護団の活動の是非”が関係ないことはその通りかと思います。
弁護人がこのようなことを書かれたのは,“一般国民”から「弁護人は被害者の気持ちを全く理解しないひどいやつだ」という,いわれのない非難を受けたからだと思います。
弁護人は「犯罪の被害者になったこともあり,被害者の気持ちも理解できます。しかし,“刑事弁護人の役割は、被告人の利益を擁護すること”なのです。」とおっしゃっているのではないでしょうか。

>どこにそのようなことが書かれているのでしょうか。
>弁護人は,傷等の状況から,殺意があったとまではいえないのではないか,との疑問を提示しています。

 某所でも疑問を提示してみましたが、この光市事件の被告人弁護団が報道では22名となっておりますが、これは弁護士の人数ですよね。 現在この裁判は殺害に至った事実関係を争うのではなく、量刑を争っているのですから、逆にこれほどの人数を要していることが不思議です。 弁護士としての義務=被告人の最後の味方であり、どんな凶悪犯罪を犯したとされる被告人にも最低限守られるべき権利を主張するのであれば、よほど強靭な意志がなくては困難だと考えます。 端的に言えば、普通の人である限り、この被告人が行なったとされる行為を弁護することを想像すると、ひたすら悔悛の情を訴えることくらいしか思いつきません。 責任能力の有無といっても、一時的な精神失調(回復可能)を主張しても立証するのは困難だと思います。人格障害でこの行為に至ったとすれば、まぁ被告人を死刑から回避させることとは不可能ではないでしょうが、逆に被告人を公的、人格的に死刑に処すことに等しいと思います。
 私は法律家ではありませんので、法令、判例とかの引用はできませんが、専門家が20人以上集まらないと弁護を行えないとすると、それら弁護士個人の能力に疑問を持つか、それとも被告人の弁護以外の意思、目的を持って弁護活動を行っているように受け取ってしまいます。
 本件の様な大?弁護団って刑事事件で当たり前の事なのでしょうか?それとも何か弁護以外の目的があると判断してよろしいのでしょうか。
 集団訴訟等の大規模事件ではなく個人の行ったとされる刑事事件にこの大弁護団、胡散臭く見えるのは仕方がなく、それにより被告人の心象が悪くなるのであればそれこそ被告人の人権を犯す行為に他ならないと考えます。

 この弁護団の人数と、被告人の弁護以外の意図について皆様はどうお考えでしょうか?

まあ、関係ないのにテレビ報道鵜呑みにして怒っている連中よりは遺族のこと考えているのは分かった。
ただ、正念場はあのような主張をなしたことの根拠が説得力を持って示され、裁判所を動かせるかどうかだ。

涙の理由が理解できてよかったと思います。テレビでその場面だけを見て、全く別の認識を持たされていたものですから。

なるべくこの事件の報道などに触れないようにしているのですが、それでも目に入ってしまうと、昔法学の教室で聞いた「裁判は敵討ちの場ではない」という言葉が重くのしかかっています。「当事者主義」といっても、普通の人は当事者が誰と誰かさえ分からないと思います。ましてや国家が一旦被害の回復の権利を被害者から取り上げて…などという憲法や刑事訴訟法の沿革など、特に勉強していなければ知るはずもありません。
刑事弁護というのは全く割りに合わないお仕事だと思います。ただでさえ、割に合わないのに全く関係ない人々の感情によって攻撃され、その相手までされなければならないとしたら、理不尽だと思います。
今の日本にはあたかも自分が神のようになって人を裁く人が多く、恐怖を感じます。これも宗教のない国に、法律や裁判制度だけ他から持ってきたことのひずみなのでしょうか。
司法制度を支えていらっしゃる方々に感謝しつつ、自分はこの一連の裁判とその周囲の騒ぎから、何が学べるのか、感情とは別に考えてゆきたいと思います。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 今枝弁護士の話ーその7:

» 被害者を傷つける [法律なんて怖くない!]
昨日、申し上げた橋下弁護士のビデオを見ていて気がついたのですが、光市母子殺害事件の弁護団の法廷での発言自体が被害者を傷つけるものだというニュアンスでおっしゃっている方が多いみたいですね。確かに、弁護団の発言は、被害者に不快の念を生むことはあるでしょう。...... [続きを読む]

» 2007-09-17 [ダイイン]
今日は以前書いたエントリー「藤井誠二×安田好弘×メディアに見る、出会いの問題」への、反省である。 日々あげていくエントリーは、もちろん私なりに考えた結果ではあるが、それが不変でもすべてでもない。だから、ミートホープ問題や安部叩きについてそうしたように、エントリーに間違いがあったと思えば普通に反省したいし、出来るだけそれを反映したエントリーもあげて行きたい。 前著のエントリーは光市事件を扱っているため、そこそこアクセスを頂き、私としても気に入っている文章の一つではある。 被害者(遺族)にも弁護... [続きを読む]

« 今枝弁護士の話ーその6 | トップページ | 光市母子殺害事件の弁護団の一人で、橋下弁護士を懲戒請求煽動の件で提訴した原告の一人である今枝仁弁護士の話(まとめ) »

2020年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

ストップ医療崩壊

  • Iryouhoukai_2   

     このチラシの中を見たい方はこちら

     医療危機打開の署名用紙(PDF)はこちら

     宛先はこちら

無料ブログはココログ

司法改革ニュース

医療過誤ニュース

天気予報