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2007年9月 8日 (土)

今枝弁護士(光市事件弁護団の一人、橋下弁護士提訴の原告の一人)の話ーその1

 このブログのコメントに、今枝仁弁護士からのコメントが寄せられた。

 ご本人のものであることは、私が直接事務所に電話をして確認したので、ここに掲載する(コメント欄は読みにくいので)。

 光市母子殺害事件について弁護団を批判される方も、マスコミ報道から得られる情報(その多くが被害者遺族寄りである)のみではなく、弁護団から直接発信される情報も、検討資料とされるべきであると思うからである。

 これから順次、今枝仁弁護士のコメントをアップしていく予定である。

 ここで示されている疑問について、説明致します。

 私が弁護団に加わった理由と経緯について
正直に言いますと、端的に言えば、足立修一弁護士との友情関係からです。
 最高裁の弁論欠席後、社会からバッシングを受けている足立弁護士の憔悴しきった姿を見て、事件が広島高裁に差し戻されたときに、負担と批判、リスクを広く分担するために、広島で何人かお手伝いしようという話になったときに、多くの弁護士は断りましたが、私は他人事として放置することができませんでした。
 しかしそのときは、私もそれまでの報道の影響を受けており、この事件におよそ救いというものはないだろうし、本村さんの発言にもある程度共感をしていましたので、死刑判決という結果になる過程でやるだけのことをやって弁護人の役割をこなせばよい程度の認識を出ていませんでした。

 その後、被告人と接見し、記録を読み込んでいるうちに、本件については看過できない事実誤認が生じており、これをそのまま維持されて量刑も死刑に変わるということになると、もはや刑事司法における正義には絶望せざるを得ないとも言える状況にあることが理解でき、証拠を吟味し、被告人の言い分に耳を傾け、その内容の合理性を考えながら、今のような訴訟活動をなすに至りました。

 主張の根幹は、被告人の精神的未熟性、生育歴と家庭環境の本件発生への影響、個別訪問の目的は強姦対象の物色でなかったこと、弥生さんに抱きついた時点では強姦の意図まではなく抵抗を受けてパニック状態で死に至らしめたこと、殺害態様として認定されているような行為態様ではなく確定的殺意の認定は不合理であること、夕夏ちゃんへの無惨な殺害行為は客観的証拠と矛盾し被告人の捜査段階の自白しかなくことさら凶悪に創作されていること、姦淫行為は純粋な性行為と言うよりは自殺した母親に甘えたいという抑圧された愛欲の面も窺えること、等です。

 確かに、その文章における表現方法において、マスコミに揚げ足をとられるようなデフォルメ的な表現があったことは、より慎重に検討すればよかったと今となっては反省する面もあります。根幹の主張に力が入っていましたが、枝葉をここまで拡張されて報道されることを予想すれば、枝葉のディテールをもっと慎重に描写すればよかったという反省です。

 被告人の斜視について
被告人は、片目の視線を見たい対象に合わせ、その際他方の目は外側を向きます。
 だいたいにおいて、左目で相手を見、そのとき右目はかなり外側を向いています。
 退廷するときも、被告人から見て右側が傍聴席ですから、被告人が前を見ていても、右目は斜め右前、つまり本村さんの方向を向いていた可能性はあります。
 その右目を、本村さんが、睨んだと感じたとしても不自然ではありません。
 その際、その右目は、何も見ていないので、感情のない、冷たい、不気味な目のように感じられるかもしれません。

 被告人の未成熟性の主張について
 家裁の記録は、「発達レベルは4、5歳程度」という部分だけではなく、随所において、被告人の精神的未熟性と、退行的心理状態を認定しています。
 家裁記録には、鑑別所技官の意見と、家裁調査官の意見の2通りあり、それぞれ複数の担当者が共同調査を行っていますが、いずれの意見においても、被告人の未熟性が認定されています。
 これに加え、あらたに鑑定を依頼した心理学者、精神科医のいずれも、その分析方法は異なるものの、結論においては被告人の精神的未熟性を認定します。父親の虐待から守りあつ母親と母子未分離の精神状態にあるなかで母親の自殺死体を目撃したことがトラウマとなり、発達は停止し、「ゲームなど虚構の世界に逃避し、その後退行状態に逃避する。その2重構造は容易に崩せない」等と評されています。
 これまでの刑事記録における被告人の供述内容にも随所に上記の評価を得心させるような発言があり、弁護人が接見した際の被告人の言動からも上記の評価は納得できるものであり、これらを総合して、主張の根拠としました。

 「不謹慎な手紙」の、「7年でひょっこり地上に芽を出す」という表現から、「普通の人がおよそ知らないような法制度まで熟知しており、ずる賢い上に能力も高いはず」と批判されますが、被告人によれば、本村さんの「天国からのラブレター」に、「少年であれば無期懲役になっても7年で釈放されうる」という記述で知ったそうです。仮にこれが事実ならば、遺族の著述で加害者が知識を得、それが不謹慎な手紙に記載され、しかも相手と検察官により暴露された、という不幸な連鎖ではないでしょうか。
 この言い分については、本村さんを傷つける可能性があるため、これまで伏せていました。
 しかし次回の被告人質問で出てしまうため、これが「枝葉」として拡張されすぎることを回避するため、被告人のためにあえて書きました。 

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刑事弁護」カテゴリの記事

コメント

弁護団の中にこういう人間らしい人が入っていると分かれば、世論もちょっとは変わっていたんじゃないですかねー
光市事件を食い物にし、自分が被告の訴訟の相手を批判して出演料を稼いで平気な橋下弁護士よりはよっぽど好感が持てます。

しかしアクセス数5000程度じゃ橋下弁護士のテレビ出演頻度に比べたら、焼け石に水、糠に釘、のれんに腕押しじゃないですか?

今枝弁護士の人格性だと自分のブログを作って自己顕示しているという批判を嫌がるタイプだろうから、弁護士さんらがそれぞれのブログとリンクするとか、助けてあげないと。

しかし、「508人の緊急アピール」とかやってたけど、橋下弁護士の扇動に応じて懲戒請求したのが不法行為になるというんだったら、どうして橋下弁護士に懲戒請求かけないんだろうね。

橋下弁護士を放置している限り、世間に「弁護士は法律オタクのお坊ちゃん」と思われ、懲戒請求は咲き乱れ、仕事がしづらくなるだろうに。

今枝弁護士に一言申し上げる。
本事件に関する報告書、調書内容は私たちが細部に渡って見ることとが出来ない状態で、今枝弁護士が
ここで言っている事を、全て信用することは出来ないし、また違っているとも言えないので、本内容について異論を交わすことは不毛のやりとりとなる。

しかし、この事件における弁護団の今までの、弁論
の中で、被告人が、殺害後にしたSEXの弁護理由
「死者蘇生」押入れの中に子どもを入れたら「ドラえもん」がなんとかしてくれる?????
の弁護理由を聞いた時点で、如何にこの弁護団の
弁護のあり方を疑問視するのは、現世相の人間としてのあり方(人間の証明)から考えれば奇人・狂人
と見て取れます。

今枝弁護士が中立、正義を重んじる人物ならば
今回の弁護理由の中に、このようなドラえもん、死者蘇生などと言う、現世相に受けいえられないような弁護理由を言わせるべきではなかったのではないでしょうか。

このような弁護をした、あなたを含めた21名の弁護士は懲戒免職に値するのでなないでしょうか。

糠に釘?さん
>しかし、「508人の緊急アピール」とかやってたけど、橋下弁護士の扇動に応じて懲戒請求したのが不法行為になるというんだったら、どうして橋下弁護士に懲戒請求かけないんだろうね。

 以下は私の推測ですが(私は508人の1人ではないので)
 懲戒請求煽動に対して懲戒請求をかけるというのでは、橋下弁護士と同じ土俵にのることになってしまい、得策とは思えません。しかも、橋下弁護士は常々「弁護士会は信用できない」と言っておりますので、どういう結果が出ても、弁護士会を攻撃するでしょう。

 これに対して、裁判所は第三者機関ですのでさすがに橋下弁護士もその公平さに文句をつけないでしょう。しかも、懲戒請求の場合の綱紀委員会、懲戒委員会の審議が公開されないのに対し、民事裁判であれば本人・証人尋問等が公開されますので、審理の透明性が担保されます。
 

弁護団の主張書面を持っていますが、弁護団は「ドラえもんが」などという主張は一言も書いていません。
被告人が公判で言ってしまった、というだけです。
弁護人が主張したことと、被告人が言ったことを、分けた上で評価を論じるべきでしょう。

emaさんへ
>本事件に関する報告書、調書内容は私たちが細部に渡って見ることとが出来ない状態で、今枝弁護士が
ここで言っている事を、全て信用することは出来ないし、また違っているとも言えないので、本内容について異論を交わすことは不毛のやりとりとなる。

 そうですね。 
 私の「管理人からのお願い」という記事もお読み下さい。
 弁護団は裁判資料の一部をネット上に公開する予定であるとのことですので、批判されるにしてもその後の方がいいでしょう。

>このような弁護をした、あなたを含めた21名の弁護士は懲戒免職に値するのでなないでしょうか。

 上段のあなたのご主張とこの結論は矛盾しているのではないでしょうか。

>今枝弁護士が中立、正義を重んじる人物ならば
今回の弁護理由の中に、このようなドラえもん、死者蘇生などと言う、現世相に受けいえられないような弁護理由を言わせるべきではなかったのではないでしょうか。

 「ドラエモン」「死者蘇生の儀式」などは、被告人が述べていることです。弁護団が言わせているわけではありません。
 あなたの「弁護理由を言わせるべきではなかったのではないでしょうか。」というのは、「被告人に上記のようなことを言わせるべきではなかったのではないでしょうか。」という意味でしょうか。 
 しかし、「ドラエモン」云々は死体を押し入れに隠した理由、「死者蘇生の儀式」は死姦の理由として、どうしても被告人質問で触れざるをえないことです(弁護人が聞かなくても、検察官が聞くでしょう)。
 被告人が「本当のことですから言いたい」と言っているのに、弁護人が「そんなことを言ったら被害者遺族が傷つくでしょう。言ったらダメ」と口止めしたら、それは弁護人の誠実義務違反です。場合によっては懲戒事由にも該当します。

  

このブログでようやく弁護団の背景が見えてきて、ためになりました。
やはり対立する情報の中で取捨選択し判断するという構造が、情報の上でも必要だと思います。

光市母子殺害事件弁護団の活動は、判決を待って評価を決めたいと思いますが、これが懲戒となると国民を煽りその理由を変遷させた橋下弁護士への民事提訴は、全面的に支持します。

橋下弁護士自身、荒唐無稽な主張をしたというだけでは懲戒理由となり得ないことを、「今は」認めていますよね。

このブログを通じて、光市弁護団(のうち1人)が、刑事弁護人としての職責を果たそうと苦悩している、1人の人間であることが分かり、非常に有意義でした。

これまでのマスコミの一方的な報道(仮に批判するところがあっても、それに反論したり、他の角度から切り込むところがあればよかったが、それが無かった)の問題は、この事件独自の問題ではなく、マスコミ体制の問題として、猛省が必要です。

裁判員裁判のためにも。

今村弁護士の少し人間くさい弁解によって、この事件に対する見方を変えている方がいるみたいですね。しかし、私にはこの被告の供述が犯行当時の真実の心境とは思えないのです。

これまでの裁判資料を見ていないので分からないのですが、彼の捜査段階や一、二審での犯行事実に関する発言を知りたいですね。

また、仮に現在と同一の発言をしていたなら、なぜ一、二審でそれらを主張しなかったのかも知りたいです。

死刑を回避する為に、弁護士との相談の上、精神の未熟さを主張することにし、その主張を補強するために、あえて「ドラえもん」や「蘇生の儀式」といった荒唐無稽な発言をしたのだとしか思えないのです。

今枝弁護士が「つらい状況の中で戦ってきました。
これが真実です」と言って涙を流しました。
しかし、凡人には何も伝わってきませんでした。
あなたは、娘を孫を、妻を娘を殺されたわけでは
ありません。被害者が流した涙の重みに比べあなたの涙は、ただ、世間に対する媚としか見えませんでした。あなたが、今後の人生の中で後ろめたい気持ちにならないで生きていくことが出来るのか、心配します。

びっくりした
弁護士ってこんな程度のモラルしか持ち合わせてないんですか

頭から何度も読み返しましたが、検察の言った事に反論してるだけで、まるで一貫性が無いというか何というか…

弁護側の主張してる事を繋ぎ合わせて、この事件を再現してみればよろしい

1から10まで無理があるし証拠が何一つ無いでしょ

逆に検察が今回の弁護側と同じ主張を何年にも渡って主張してたらどう考えますか

頭おかしいんじゃないのかって誰しも思いますよ

母子は事故で死んだんじゃないんです。

『元少年は赤ちゃんとその母を殺さねばならなかった、やむを得ない事情があったんですから』って言いたいのかしら?

そのへん考えて下さい

>K.E様

弁護士さんに文句をつける前に、刑事弁護人がどのような職責を持っているかをお知りになることを強く勧めます。

>検察の言った事に反論してるだけ

そうですね。検察の被告人に対する攻撃に反論するのは弁護人のしなければならないことの一つです。たとえ無理があっても。

>1から10まで無理があるし証拠が何一つ無いでしょ

無理があるとのご意見には同意します。しかし精神鑑定の結果や検死結果など(すくなくとも弁護側にとっては)被告人の行動を裏付ける証拠は挙げていると思いますがどうですか?

また、弁護人が主張する事が裁判官に認められるとは限りません。

>母子は事故で死んだんじゃないんです。

仰るとおりです。しかし弁護団もそんな事は主張していません。
簡単に言うと、『人を死なせたが、殺意は無かった』と言いたいんじゃないですか?

私からも質問したいのですが、今回の弁護団が取るべきだった『モラルの有る行動』とは何だとお考えですか?

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