朝日新聞社説「新司法試験―公正さが揺らいでいる」
朝日新聞が新司法試験について社説を書いている。
考査委員は半数が裁判官や検察官、弁護士らだが、残りは法科大学院教授らが務めている。1人でも多くの合格者を出したい大学院の教員を考査委員にするのが、そもそも間違いなのだ。来年からは全員外した方がいい。
今回の疑惑の背景には、新司法試験の合格者の決め方の問題もある。
これまでの司法試験は、合格率3%ほどの狭き門のため、受験技術の習得に走りがちだった。その反省から生まれた新司法試験では、法科大学院で法律をじっくり学んだあとで受験させる。合格者の門戸も広げ、法曹人口を増やすことをめざしている。
ところが、法務省は増員計画をもとに合格者数に枠を設けている。このため、1回目の昨年の合格率は48%だった。今年も大きくは変わらないだろう。
合格率の低い法科大学院は、志願者が減るのは避けられない。全国74の法科大学院で生き残り競争が過熱している。
ここは本来の改革の理念に帰るべきだ。合格者を一定の人数にしぼるのではなく、受験生が一定の水準に達していれば合格させる方法に変えるべきだ。
それでも合格水準まで教育できないような大学院は、退場すべきであることはいうまでもない。
2007年09月03日(月曜日)付 asahi.com
この社説については、PINE's page さんが「分かっているようで、分かっていない。」という記事を書いておられる。
確かに、分かっているようで、分かっていない社説だ。
新司法試験の公正さが疑われるような事件が続き、司法試験の考査委員からロースクールの教員をはずすべきだというのは正論だと思う。
しかし、「合格者を一定の人数にしぼるのではなく、受験生が一定の水準に達していれば合格させる方法に変えるべきだ。 」という部分については、それじゃその「一定の水準」は誰がどうやって決めるの?と言いたい。毎年試験の内容も変わるし、「この位のレベルなら合格させてもいい」というラインが毎年公平に引けるものなのか。
旧司法試験にせよ新司法試験にせよ、結局は法務省が合格者数を何人にするかによって合格水準を決めてきたのであろう。
「はじめに合格水準ありき」とするのであれば、その合格水準によっては合格者数が激減することも、激増することもあり得るわけだ。それで、研修制度が成り立つのかについては、小倉秀夫弁護士が「コネがものをいう社会の方が論説委員には都合がよい」という記事を書いておられる。
結局は合格者数を何人にするのが社会のニーズにあっているのか、何人であれば十分な養成が可能であるのか、を考慮に入れざるをえないだろう。
朝日新聞は一定の合格ラインさえ決めれば合格者が何人になろうとも十分な養成ができ社会のニーズに答えることもできると考えているようだ。
しかし、裁判官、検察官の採用人数は一向に増えないし、弁護士も就職難である。企業や行政機関も一向に採用人数を増やそうとしない。
今後は、法曹資格が魅力あるものではなくなり、定員割れをするロースクールも続出するだろう(既に出ているという噂も聞く)。優秀な人材も集まらなくなるかもしれない。
朝日新聞社には、ぜひ新人弁護士を多数採用して頂きたいものだ。新聞社だって弁護士過剰によりこれからは名誉毀損だなんだといって訴えられる可能性が高くなるかもしれない。今のうちに有資格者を多数採用しておかれたらどうだろう。
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