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« 今枝弁護士の話ーその8 | トップページ | 産経新聞福富記者とフリージャーナリストの綿井さんの記事 »

2007年9月11日 (火)

江川紹子さんの意見「刑事弁護を考える~光市母子殺害事件をめぐって」

 山口貴士弁護士のブログ

弁護士山口貴士大いに語る: 【続】橋下弁護士を提訴へ 光母子で「懲戒呼び掛け」

にジャーナリストの江川紹子さんの記事が紹介されていた。またコメントを頂いた「あおき」さんも同じ記事を紹介されていた。

 江川紹子ジャーナル

 刑事弁護を考える~光市母子殺害事件をめぐって

 さすがジャーナリスト、文章もすんなり読めて分かりやすい。

 橋下弁護士にたいそう厳しいご意見である。

 弁護士がワイドショーやバラエティ番組に出演するのは、法律的な説明や理性的な解説を加えて、話が感情だけに流れないようにすることに意味があると思っていたが、橋下氏はまったく逆。人々の怒りの感情をあおり、番組を盛り上げる役割に徹していた。弁護士というより、まるで大衆受けを狙う人気取りのタレントである。橋下氏を応援する人たちは、「彼は弁護士として、懲戒請求という制度を視聴者に教えてあげただけ」と言うが、実際の彼の発言はとてもそのようには聞こえない。

 全く同感である。確かに、このブログへのコメントやワイドショーのコメンテーターの発言にも「橋下弁護士は懲戒請求制度を教えてくれただけ」というものが多かった。

 しかし、橋下弁護士の発言を何度聞いても、「教えただけ」のようには聞こえない。明らかに「煽り」だろう。

 橋下氏らテレビでの発言の機会が多い弁護士は、本来は「世間」に対して「刑事弁護人の役割はこういうものです」と説明をし、冷静な対応を求める立場ではないか。なのに、ただでさえヒートアップした「世間」に対して、燃料を送り込んで団扇でバタバタあおいで炎を大きくしている感じさえする。

 請求の内容によっては、懲戒請求をされた弁護士の側から訴えられる可能性もある。実際、懲戒請求をした側が敗訴し、50万円の慰謝料を支払うよう求める判決が出ているケースもある。橋下弁護士は、そういう負担やリスクを説明せず、ただ「誰でも簡単に」できると、気楽なノリでしゃべっている。
 そのくせ、自分は懲戒請求をしてない。「時間と労力を費やすのを避けた」そうだ。橋下弁護士の話に共感して懲戒請求を行った人たちの「時間と労力」はどうでもいいのだろうか。煽るだけ煽って、自分は面倒だからと何もしないのでは、無責任のそしりは免れない。

 こちらも同感。

 そして、問題の番組「たかじんのそこまで言って委員会」についても、

 橋下弁護士の問題発言があった読売テレビ「たかじん そこまで言って委員会」は、生放送ではない。橋下氏も、「ここはカットされるかもしれないけれど」と前置きして話をしているところをみると、実際の放送時間より相当長い時間をかけて収録しているはずだ(出演者の顔ぶれを見ても、収録時間は相当長いだろうなと想像できる)。橋下弁護士の”煽動”が公共の電波に乗って放送されたのは、この発言を選んで放送したテレビ局の判断がはたらいている。
 番組では、橋下弁護士以外の出演者もすべて弁護団を叩いており、違う角度からコメントをする者は1人もいなかった。弁護団の言い分がVTRで紹介されることもなかった。一方的な「行け行けドンドン」の雰囲気で、果たして現在進行形で審理が行われている事件ものを扱うやり方として、適切だったと言えるだろうか。

と、厳しいご意見を述べておられる。

 裁判員制度との関連についても、

 特に、刑事事件に関しては、再来年には裁判員制度が導入され、一般国民が被告人を裁くようになることを考えなければならない。
 「あいつら許せん」という感情で裁判を行うわけにはいかないわけで、そのためにも、裁判員が予断を持ったり、「世間」が裁判員に危害を加えたりすることのないよう、冷静な判断を行える環境作りがメディアにも求められる。
 自主的な対応ができず、今のように感情を煽るような番組が垂れ流されている状況が続けば、様々な規制がかけられる事態も考えられる。そうなれば、事実を詳しく伝えたり、批判をしたりする報道の自由も危うくなってしまう。

 とされる。

 橋下弁護士と「たかじんのそこまで言って委員会」に対する批判のご意見については全く同感である。私もこのブログで同趣旨のことを何度も書いてきた。

 しかし、オウム真理教教祖麻原彰晃こと松本智津夫の控訴審の弁護人に対する批判については、私はまだ弁護人側の弁明を知らないので、賛否は決めかねる。

 また、富山の冤罪事件の国選弁護人については、弁護士会が調査中という記事が出ていたのを以前見たことがある。まだ処分が決まっていないのではないか。こちらについては、冤罪で逮捕された男性の言うとおりなら、弁護人は懲戒処分を受けても仕方がないと思う。

 その他、死刑廃止運動との関連についての記述には飛躍があると思う。

 弁護人が死刑の適用が見込まれる事件において死刑を回避するために弁護活動をするのは当然で、これは死刑存置論者の弁護人であっても当然しなければならないことだ。永山判決など他の判例の量刑基準を引き合いに出すのも当然である。

 今枝弁護士の話からしても、弁護団の全てのメンバーが死刑廃止論者ではないし、厳罰化の流れの阻止のために集まったわけではなかろう。21人(今は22人)というのも、本件のように業務妨害が見込まれる事件の弁護人としてはそれほど多い人数ではない。弁護人の仕事の内容からしても、2,3人でとてもこなせる量ではない。集中審理ともなれば、20人いても1人当たりの仕事の分担量は少なくなかろう。

 弁護団に対する批判「同じ内容の主張をするにしても、もう少し被害者側に配慮した対応はできるはずだ。なのに、もっぱら権力に敵対して権利を主張することを美学とする”原理主義”的な態度が、遺族の感情を逆撫でし、それに共感する多くの人たちの反感を招いている。にしても、もう少し具体的な指摘をして頂きたかった。

 「原則論だけで押し通そうとする弁護団の前時代的でKY(空気が読めない)的な対応」というが、私はヤフーの動画の記者会見からはそう感じられなかったが。特に今枝弁護士の対応はなかなかのものに感じた。

 ひょっとしたら最高裁の弁論後の安田弁護士らの記者会見のことだろうか。確かにあの記者会見については私もあまりいい印象を抱かなかった。安田弁護士と足立弁護士はどうも記者会見向きのお方ではないように思う。要するにヘタクソなのだと思う。しかし、弁護団の戦術や内容までも記者会見における「感じの悪さ」で評価するのはどうか。

 「今のように感情的なバッシングの嵐が吹き荒れていると、それには加担したくないと思えば、意見の表明がしにくい、実に不自由な状況になってしまっている。というのは本当だろう。

 しかし、江川さんには、ぜひワイドショーにコメンテーターとして参加して、この記事に書いてあるようなご意見をバンバン言って頂きたい。

 特に、橋下弁護士が出演する番組に一緒に出演して、橋下弁護士にバンバン意見を言ってほしい。

 (注) 枠内と青字は、江川さんの記事からの引用です。

               Yajirobei_mini

 

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刑事弁護」カテゴリの記事

コメント

江川さんの記事、個人的にはチラホラと違和感を覚える部分もありますが、マスコミの大半が思考停止状態で橋本弁護士を支持したり、我が身に火の粉が降りかかってこないように曖昧な態度でごまかしている中、ここまでキッパリと橋下弁護士の言動のすべてを否定しているのは爽快で、問題点の説明もわかりやすく、さすがだなあと思います。
ただ、

>番組では、橋下弁護士以外の出演者もすべて弁護団を叩いており、違う角度からコメントをする者は1人もいなかった。

は事実誤認ですね。
橋本弁護士以外の出演者の中、江本孟紀さんだけは違う角度からコメントしたりはしなかったものの、 他の出演者と一緒になって弁護団を叩いてもおらず、難しい顔をして沈黙を保っておられました。
この点だけは江本さんの名誉のために指摘しておきたいところです。

寺本先生のお気持ちはよくわかりますが、先生のお考えよりも、下のエントリーにある、今枝先生のお話の方が、心に響くんです。

先生が気づかれてないことを、今枝先生は気づいてらっしゃるからです。今枝先生のコメントはその点、大きな意味をなしていると思います。一般市民である私の心にスーっと素直にその言葉が届きます。

橋下先生のとった言動行動の是非とは別に(こだわらずに)、なぜ、あれだけの人が反応したのか、その裏の、その「心」に思いやり、耳を済ませていただければ幸いに思います。

「煽った、煽られた」という見方をしている限り。決して本当の気持ちは見えてこないでしょう。先生の立っているスタンスが変わらない限り、きっとそのお気持ちは一般市民の心に届かないでしょう。橋下先生があのような発言をしなかったとしても、同じような気持ちが一般市民の心の中でくすぶっていたのです。あれはそれを顕在させた「単なる」きっかけに過ぎません。もうひとつ。一般市民は、弁護士先生のように法律に詳しくなかったとしても、「バカではない」ということに気づいていただければうれしく思います。

つきつめれば、弁護団の方を攻撃したいのではなく、「本当のこと(いろんな意味を含めて)」をみなさん知りたいのでは?、と思います。謙虚で真摯なその言葉が聞きたい。ひいては、特定の弁護団うんぬんではなく、弁護士先生たちに意識を変えていただきたい・・(←これは私の個人的な願望に過ぎませんが)。

橋下先生を全面的に支持しようとは必ずしも思わないですが、橋下さんが仰った「一般市民を信じている」その言葉一点、それだけで私の心は動かされるのです。「信じる」。寺本先生は、信じられますか? 一般市民は、弁護団にむやみやたらに攻撃しようとする人たちばかりではないことを・・。

寺本先生のお人柄は伝わります。先生ならきっと気づいてくださるに違いないと信じて・・。

こんにちは。

橋下さんのブログに番組で主張を呼びかけていました。委員長も許可しているそうです。
http://hashimotol.exblog.jp/6366720/下のほうです。

本当のことが知りたいというわりには、弁護団の主張をロクな検証もしないでデタラメと決め付けていたのではないですかね?

橋下弁護士は、弁護士という肩書きでテレビに出演していたにもかかわらず「安田弁護士が中心となってそういう主張を組み立てたとしか考えられない」と断言してしまったことでしょう。

何を根拠にこんなことを言ったのか理解不能ですが、この発言の罪は重いですよ。

「市民の一人さん」へ

私は一法学部生ですが
基本的には橋下弁護士の行動や懲戒請求の乱発という事態について良く思っていません。
それについていろいろ書きたいことはありますが
それは寺本先生や他の方がおっしゃっているので
控えさせてもらいます。

ただ、一つ思うのは
国民の声を理解して欲しいという意見、
つまり、懲戒請求がこれだけ沢山でてきた
ことについて弁護団なり弁護士会は
しっかり耳を傾けろというようなことですが、

もちろん懲戒制度のあり方や弁護団の対応として全く問題がなかったわけではなくそれはそれで活かされるべきだとは思います。

しかし、一方法律を知らない方がた(国民)の皆さんにお伝えしたいのは弁護士のかたがたに対して国民の声を理解しろとおっしゃるのであれば
一方で弁護団なり、他の弁護士の方がたの意見にも素直にと申しますか、丁寧にしっかりと耳を傾けられるべきではないでしょうか。つまり、法制度上弁護士の役割はどうなっているのか、今回の事件での弁護団の対応にはどういう論理というか前提があるのかといったことです。

「市民の一人さん」がどれほど今回の事件について調べられたかはわかりません。もしかしたらかなりの部分まで把握されているかもしれません。

ただサイトによっては事実関係を精査せずに、ただただ国民の感情や国民の常識優位のようにおっしゃる方がいてどうかと思っています。

弁護士の方がたでも説明の仕方として国民感情を逆撫でするような言い方をされる方がいて、それはそれで問題があるかもしれませんが、
「言い方」と「説明内容」は切り離して理解されるべきだと思います。
 
幾つかのサイトを拝見しましたが法曹関係者はかなり一貫しているように感じます。その事についてもう少し考えられてはどうでしょうか?
あなた様の文面から判断しての意見ですが
誤解がありましたらすみません。
駄文失礼しました。

法学部生さん

>一方で弁護団なり、他の弁護士の方がたの意見にも素直にと申しますか、丁寧にしっかりと耳を傾けられるべきではないでしょうか。

全くその通り!

相手に理解して欲しいと思う人こそ、相手の気持ちを考えるべき!

>市民の一人さん


>一般市民は、弁護士先生のように法律に詳しくなかったとしても、「バカではない」ということに気づいていただければうれしく思います。


寺本先生は、一般市民が「バカではない」と思っておられるからこそ、これだけの多大な労力と時間を費やし、ネット上で色々説明しておられるという解釈はできませんか?寺本先生が一般市民をバカだと思っているなら、ハナから説明なんか試みないか、もっと早い段階でサジを投げているんじゃないかと、私なんかは思うのですが。


>つきつめれば、弁護団の方を攻撃したいのではなく、「本当のこと(いろんな意味を含めて)」をみなさん知りたいのでは?、と思います。謙虚で真摯なその言葉が聞きたい。ひいては、特定の弁護団うんぬんではなく、弁護士先生たちに意識を変えていただきたい・・(←これは私の個人的な願望に過ぎませんが)。


「謙虚で真摯なその言葉が聞きたい」というのは、弁護団がこれまで、謙虚で真摯な言葉で語ってこなかったとおっしゃっているのでしょうか?
そうであるならば、市民の一人さんは今枝弁護士や寺本先生の膨大なコメントを「謙虚でで真摯」な姿勢でお読みになられましたか?
上記引用中にある「意識を変えていただきたい」という表現や、コメントの随所に散見する「気づいていただければうれしく思います」「先生ならきっと気づいてくださるに違いない」などの表現をみていると、市民の一人さんは言葉遣いこそ丁寧であるものの、相手に対して一方的に歩み寄ることを求めているとしか感じられず、もっと自分のほうからも歩み寄れる余地がないか検討されたほうがいいのでは…という気がします。


>橋下先生を全面的に支持しようとは必ずしも思わないですが、橋下さんが仰った「一般市民を信じている」その言葉一点、それだけで私の心は動かされるのです。「信じる」。寺本先生は、信じられますか? 一般市民は、弁護団にむやみやたらに攻撃しようとする人たちばかりではないことを・・。

「聞こえのいいこと」は何の勇気も信念もなくても言えますが、「言いづらいこと」を言うには勇気や信念が必要です。
本件について考える場合、「言うことにより、経済的な見返りも期待できる“聞こえのいいこと”」と「言ったとしても一円の得にもならないどころか、身の危険にさらされる可能性すら想定しうる“言いづらいこと”」で比べれば、本件の本質がより見えやすくなるような気もします。

私も一般市民ですが、多くの一般市民には「裁判において被告人は弱者」ということが理解しにくいのだと思います。人を殺傷した凶悪犯がなぜ弱者なんだと。国家権力は被告の生殺与奪件を握っているといっても、凶悪な事件報道を見た市民には国家権力よりも目に見える犯人のほうがよほど怖い「強者」です。
このギャップ、どうしたら埋まるでしょうね。私も悩みます。

「正義VS悪」の固定的な図式では刑事弁護は理解できないと思います。だから「権力と闘い人権を守る」的な「正義VS悪」の図式を弁護士が言ってもすれ違ってしまう。江川さんはそう言いたいのでは?(私の想像ですけど)

市民の一人さん

世間が感じている気分を、上手く代弁していただけた
ご意見だと感じました。

私も今枝さんの文章には素直に頷けた方です、相手の
心に響く言葉とは何かと考えさせられます。
自意識が強すぎる言葉は相手の心になかなか響かない
のです。

無意識に作られた自分の意識の枠を、意識の中で
取り払う事ができるかだと思うのですが、これは
認識しないとなかなか出来ない事です。

例えば、一旦感情的になった女性を理だけで説き伏せ
られる方がいらっしゃいますか?
いたら私は尊敬します。私より遥か高みにいらっしゃる
方ですから。

自分が無意識に作り上げた枠の中だけで話してるから
相手が納得しないんだと気付いてから、周囲の関係性が
がらりと変りました。
これは私にとって大発見でしたが、辿り付くまでは
大分苦労しました。

随分横道にずれた話しになってしまいましたが、ここで
語られている方の意見を聞いていても、頭で理解していても
意識の枠ががっちり嵌っているなと感じる方も結構
見受けられるものですから。

江川さんのおっしゃる通りです。
また、国民の声として懲戒請求を利用するのは如何なものでしょうか。懲戒請求は社会運動のツールではありません。
国民の声というならその前に法律を勉強するべきです。

>市民の一人さん

昨日の自分のレス、その時は市民の一人さんの心情にも色々配慮しながら書いたつもりでいましたが、改めて読み返すと、配慮が足りなかったと思いました。
きつい印象、攻撃的な印象、上からものを言われたような印象などを受けられていましたら、それは一般の市民さんに何か責があるわけではなく、私が未熟だということです。
そう解釈して頂けたら幸いです。
申し訳ございませんm(_ _)m

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