懲戒請求問題について
橋下弁護士の記者会見があってから、また懲戒請求関係のコメント投稿が増えるようになってきた(当初ほどではないが)。
コメントに一つ一つお答えする余裕はないので、私の基本的なスタンスを記事に書くことにする。
1 私は光市母子殺害事件の弁護団に対して懲戒請求をした方、あるいは懲戒請求をしようとしている方に対して、やめろとか、やめた方がいいとは言わない。それはご自身の判断だ。橋下弁護士がご自身では労力と時間がかかるのでイヤだと言っておられる懲戒請求をあえてやると言われる方に、あれこれ申し上げても仕方がないであろう。
ただ、最高裁判例をよく読み検討してからの方がいいとだけはアドバイスしている。この最高裁判例は懲戒請求についての有名な判例であり、本件に限らず、弁護士であろうと一般人であろうと、懲戒請求を検討するときには読んでおくべき判例だからだ。
2 個別の懲戒請求が不法行為に該当するか否かは、その方がどの程度懲戒事由の有無について調査・検討されたか等という個別事情によるので、このブログでご回答できるようなことではない。個別の法律相談に該当する。ご心配であれば、懲戒請求の申立書を持参し、法律相談を受けられたらどうだろうか。自治体等で無料相談も実施している。
その際には、懲戒事由を何と考えるか、どうして懲戒事由に該当すると考えるのか、どのような調査をし検討をしたのか、調査に際し弁護団の主張等についてどのような資料を読んだのか、等を具体的に説明する必要があるだろう。
3 私は、弁護団が公表している弁護資料をほぼ全部読んだし、ヤフーの動画で公開されている記者会見も見たが、懲戒事由に該当するような弁護団の行為を見出すことはできなかった。
このブログにもいろいろと弁護団を批判するコメントが寄せられたが、
A 刑事弁護人の役割、刑事弁護の意義について誤解しているもの
B 本件の弁護団の弁護活動についてマスコミ(特にテレビ)からの情報によって誤解しているもの
が殆どであった。
Aについては、左サイドバーの刑事弁護についての記事を読んで頂きたいというほかない。
Bについては、私も当初より弁護団の主張について勉強しているので、皆さんの誤解を解けなくもないが、一つ一つ解いていくのは本当に大変だ。
弁護団には「マスコミが取り上げてくれないのであれば、公開できる限りの主張や証拠をインターネット上で公開してもらえないか」と思っていたところ、最近になってその準備をされているという情報を得た。
弁護団が公表しないのなら、先日の報告集会でもらった資料を私がネット上に掲載しようと思っていたのだが、どうやらその必要はなくなったようだ(協力を申し出て下さったSさん、ありがとうございます。こういう事情ですので)。
今後もこの弁護団の活動についての誤解(どうやら些細な誤解が大きく発展してしまったものもあるようだ)については、少しずつ記事の中で触れていくつもりである。
Aにしても、Bにしても、この事件に関心を抱いている方々が、いろいろな資料を読む等して「勉強する努力」が必要である。弁護団の資料にしても更新意見書、鑑定書、法医実験結果報告書など膨大な量であり、私も読むのに時間を要した。
最初からこの努力を放棄する方には何を申し上げても仕方がない。
しかし、一般市民の方々も、裁判員制度で裁判員に選任されたら、こういう努力を拒否することができないということは頭に入れておいて頂きたいものだ。
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コメント
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はじめまして
どうも論点がずれまくりのようなので一般市民の
意見を言わせて下さい。
こちらで言われている根拠は全て「司法のものさし」
で測った場合を言われていると感じます。
橋下弁護士のコメント聞いてると、そこは重々承知
なのが見て取れます。本人も司法の論理で裁かれたら
負けるだろうなと察知してる節もあります。
でも、彼が言いたい真意は「世間のものさし」で
測ったら逸脱してるから、あえてそっちを取った。
と感じました。
問題の弁護士法も「品位に欠けた」と定義してるだけで
今まで勝手に「司法の感覚で」と解釈してきただけ
でしょう。
私としても今回を機に「世間の感覚で」と明文化して
もらいたいと思ってます。
どこまでも世間とかけ離れていくなら、いずれ立法で
縛りがかかるのではないかと思います。
それは弁護士の方々も不本意でしょうし、一般市民も
本意ではありません。
投稿: ごんた | 2007年9月 6日 (木) 20時49分
はじめまして。
私は一般市民ですが、人の職業を辞めさしてしまうかもしれない危険がある懲戒請求を何の調査も努力もしないで提出することこそ通常の感覚を逸脱しているかと思いますね。
請求したからにはそれなりの責任があるのが普通でしょう。
橋下弁護士は自己の不満や鬱憤を他の弁護士や弁護士会に吐いているだけに見えてなりません。よっぽど他の弁護士から仲間はずれにされているのか、弁護士会が自分の意見を聞いてくれないから駄々を捏ねているのか知りませんけど、それを懲戒請求の呼びかけというかたちであらわすのは適当ではないと思いますよ。
他の弁護士を見下す前に、もっと尊重する態度が必要だと思いますよ。まあ自己の職業を批判したり、インテリ色を薄めたりすると世間受けがいいのだろうけど・・もうタレントですね。
まるで自分が世間の声の代弁者のようですが、光市母子殺害事件の弁護団の行動がおかしいとは思わない人も世間にはいることを忘れないでほしいです。
投稿: ポチ | 2007年9月 6日 (木) 22時27分
ごんたさんへ
ちょっと抽象的でご趣旨がよく分かりません。
世間の感覚で「品位に欠けている」のは、弁護団の主張自体ですか、それとも橋下弁護士の述べるような説明義務違反ですか。
ところで、私は、橋下弁護士が「自分の時間と労力を省くために」ご自身では懲戒請求せず
(記者会見では事務所経営に差し障るというようなことをおっしゃっていましたが、懲戒請求ってプロの弁護士でもそんなに大変なのですか。「たかじんのそこまで言って委員会」ではさも誰でも簡単にできるようにおっしゃっていたのに)
一般市民にのみ懲戒請求を勧める、というのは「世間の感覚」でもおかしいと思うのですが。
投稿: M.T. | 2007年9月 6日 (木) 22時33分
はじめまして。
僕はここの管理人さんの言っていることは賛同できますし、橋下弁護士の言っていることの「マナー」を大切にするべきという部分には同意できます。(橋下弁護士自身のマナーは理解できませんが)
しかし、「世間」という言葉がいったいどれほどの正当性を持っているというのでしょうか?
「世間」の意見イコール「絶対正しい」わけではないはずです。僕も一般市民ですが、勝手に橋下弁護士やごんたさんのいう「世間」に含めさせられるのは不本意です。
それとも橋下弁護士の意見に賛同できない人は「世間」から外れたおかしい人なのでしょうか?
いわゆる「カルト弁護団」の仲間にされてしまうのでしょうか?
投稿: 慶 | 2007年9月 6日 (木) 23時03分
今回の橋下弁護士の自身が請求しなかった件は
諸事情があったにせよ、まずかったと思ってます。
これで疑問を感じた方も多々いると思いますし
躊躇した人もいるでしょう。それはそれで
個人の意思で問題ありません。それだけの掘り
下げ方しか自身でしなかっただけの話しです。
でも、くだんの弁護団への懲戒請求を既に出した
方の正当性は揺らいでないだろうし、更に増えると
考えてます。
昔読んだ小説のセリフで
「例え悪魔の口から語られようが、正しいものは
正しいし、良い物は良い」というのがありました。
今回懲戒請求を出された方々は、自身の考えで
出されたはずで、後で橋下弁護士が品性下劣な
人間性だったと解かったとしても、それを理由に
取り下げるほど、考え無しに提出したとは思え
ません。
社会人なら自分の署名を入れて提出する意味を
知らないとは思えません。
少なくとも、前回書いた橋下氏の発言に私は
共感し本当だと感じました。その他の人間性は
保証できませんが。
橋下氏は所詮きっかけで、自身で本質を考えで
請求したと思います。また、そうでなければ
意味ありません。
投稿: ごんた | 2007年9月 6日 (木) 23時23分
>今回懲戒請求を出された方々は、自身の考えで
出されたはずで、後で橋下弁護士が品性下劣な
人間性だったと解かったとしても、それを理由に
取り下げるほど、考え無しに提出したとは思え
ません。
すでに取り下げてる方がいますし、
多くの方が弁護士会から届いた書類を目にして戸惑っておられると思います。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3110259.html
投稿: こと | 2007年9月 7日 (金) 12時46分
ごんたさんへ
>少なくとも、前回書いた橋下氏の発言に私は
共感し本当だと感じました。
ごんたさんが共感したという橋下弁護士の発言とは「弁護団の主張がおかしい」という方でしょうか、それとも「弁護団は被害者と国民に対して説明責任を果たしていない」という方でしょうか。
どちらかによって、回答が違ってきますので。
前者の場合は、今枝弁護士の話やこれからネット上で公開される弁護団の資料を読んでからご判断下さいというのが私の回答です。
後者の場合は、「弁護団の説明責任?」の記事に私の意見を書きました。
また、ごんたさんは(ごんたさんに限らず)、弁護団ないしは弁護士ないしは弁護士会ないしは司法全体を批判される方は、事実を提示されずに抽象的に批判されている方が多いようです。
たとえば、弁護団に「品位」に欠ける行為があったという場合、弁護団のどの行為を指しているのか具体的に指摘して頂かないと、意見を述べることができません。
投稿: M.T. | 2007年9月 8日 (土) 22時53分