医師不足ー苦しむ地方ー医師数は西高東低(中日新聞サンデー版)
当分まとまった記事は書けそうにないので、写真日記や他の方々のブログの記事の紹介や、新聞などの記事の紹介をさせて頂こうと思う。
これは、今週日曜日の中日新聞のサンデー版(6月10日 世界と日本 大図解シリーズ NO.789)の記事
よれてしまって写真では見にくいが、医師不足についてとても分かりやすく図解した記事だった。
この記事によれば、医師数は「西高東低」なのだそうだ。
写真の赤系統の県は赤に近くなるほど人口10万人あたりの医師数が多く、青系統の県は青に近くなるほど人口10万人あたりの医師数が少ない。
どうして西高東低になるのかまでは分析されていないが・・・。
しかし、どの県も医師配置基準(原則外来40人に1人、入院16人に1人)を満たす病院の割合は、非常勤医込みでも100%に達していない。
全国平均だと非常勤医込みで83.5%(常勤医のみだと35.5%)。
ちなみに、私の住む愛知県は、この医師配置基準を満たす病院の割合は89.1%。常勤医のみだと、たった39%だ。
人口10万人当たりの医師数が一番少ないのは、なぜか埼玉県。
北海道と東北地方は、人口10万人当たりの医師数も少ないし、医師配置基準を満たす病院の割合も極めて低い。岩手県などは、医師配置基準を満たす病院の割合は55.1%に過ぎない(常勤医のみだと、21.5%)。
この記事を見ると、医師の絶対数が少ないことに加えて、医師の偏在によって、地方の医療が崩壊の危機に瀕していることがよく分かる。
コムスンが事業所の介護士の人数をごまかしていたことが問題になっているが、医師配置基準を満たさぬ病院が多いことももっと問題にすべきではないのか。
昨日、久しぶりにある総合病院における証拠保全(検証)に立ち会った。
そのとき病院の外来を通ったが、長時間待たされて待ちくたびれた患者さんが大きな声で「まだでしょうか。」と看護師に尋ねていた。その患者さんは「朝早くから来て待っているのに、ちっとも診てもらえない。病院に来ると1日仕事になる。」などと他の患者さんに愚痴をこぼしていた。
しかし、まだ診てもらえる医師がいるだけましなのかもしれない。北海道や東北地方では、診療科によっては医師がいない病院もあるだろう。
この中日新聞の図解は、このほかにも日本の医師数を欧米主要国と比較したり、勤務医の過酷な労働条件についてグラフ化していたり、医師不足解消のための厚労省や自治体のあの手この手を説明していたり、とても興味深い。
一つ紹介すると、岩手県遠野市では、2007年度から、希望があれば県立遠野病院の常勤医に乗用馬を無償貸与するという特典を設けたそうだ。しかし、今のところ、希望者はいないのだそうだ(馬なんか貸してもらっても、おそらく常勤医は乗ってる暇ないだろうに・・・)。
この図解は、「学校の教材に役立つ大図解」のシリーズなのだが、学校に限らず、病院や公共施設などの人目につくところに貼って、国民の理解を深めるのに役立てたらどうだろう。
« お堀端の緑 | トップページ | 地下鉄の女子高生+裁判員制度考 »
「医療過誤」カテゴリの記事
- 弁護士報酬の衝撃(その2)・・・Twitterもどき(3月27日午前9時15分)(2015.03.27)
- 弁護士報酬の衝撃・・・Twitterもどき(3月26日午後5時10分)(2015.03.26)
- 腹立たしい証拠保全・・・Twitterもどき(5月21日午後10時50分)(2014.05.21)
- ハッカ油パワー・・・Twitterもどき(6月19日午後8時5分)(2013.06.19)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 医師不足ー苦しむ地方ー医師数は西高東低(中日新聞サンデー版):
» 介護についての最新ニュース [介護情報]
介護についての様々なニュース [続きを読む]
日本の医師は偏在しています。2000年度の統計では、人口10万人あたりの医師数が、特定の地域においては
高知県 251人
徳島県 250人
京都府 252人 なのですが
一方で、
千葉県 136人
茨城県 135人
岐阜県 158人
という具合に、地域ごとに単位人口当たりの医師数にかなりのばらつきがあることがわかると思います。
医師不足は、個人的には医師の偏在が原因だと思います。
投稿: P_0 | 2007年6月14日 (木) 00時38分
ブログを読ませていただきました。
遠野の友人に「お医者さんには馬は魅力ないみたい」と言いますと、「じゃ、牛は?」と言うので、「生き物は止めたら」と呆れて言い返したところ、「じゃあ、妖怪は? 座敷わらしなんてどうかな」と。
友人が何処まで本気かは分りませんが、遠野は人口よりも妖怪が多いと言われる地区ですし、オカルト系が好きなお医者さんとかが居てくれたら、案外気に入ってくれるかと思います。
馬は乗るだけでなく、あの瞳で見つめられると癒されたりする効果もありますので地元民の不器用な心使いだとご理解下さい。
岩手は確かにお医者さんは本当に少ないです。産気づいた友人を車に乗せて、夜道を一時間も走った事があります。
冬は道路が凍るので、救急車を呼んでも間に合わないのです。
医師不足はとても深刻です。
投稿: すずろ | 2007年6月14日 (木) 17時47分
医師は一部の診療科に偏って、増加しつつあります。(ちなみに、医師の数は毎年増えています。)
産婦人科や小児科を志す使命感のある医師は極めて少ない状況にあります。
その代わりに比較的訴訟のリスクも低く楽な診療科を選ぼうとする傾向が顕著になっています。
医師不足は医師の責任なのです。医師に最も必要なモラルはどこへいってしまったのでしょう。医療ミスをおかしてもそれを隠蔽したりする体質があることは今までの医療事件からも明らかですよね。おまけに裁判になったら争う姿勢をとろうとする。その前に一言あると思いますよ。まずは自らのミスに対する患者への謝罪ではないでしょうか。
投稿: P_O | 2007年6月28日 (木) 18時24分
>医師不足は医師の責任なのです。医師に最も必要な
>モラルはどこへいってしまったのでしょう。
医師です.
この言葉は「患者のモラルはどこへ行ってしまったんでしょう?」とお返ししましょう.教育における「モンスターピアレント」ならぬ「モンスターペイシェント」の跋扈が医師のモチベーションを無くさせているのです.
感謝の言葉の代わりに不平不満の言葉を発し,権利ばかり主張する...
医療の本質である「不確実性」を理解せず,「医師にかかれば病気は直って当たり前」と考えていることがそもそもの間違いなのです.
医師も人間ですし,プロスペクティブに治療を行う限り完璧な治療などあり得ないのです.また適切な治療が行われていても「治る保証」はありません.
「医療崩壊 ー立ち去り型サボタージュとは」をご一読下さい.
「医師不足」を医師のせいにしている限り,それは解消されず,そのうちに医師に掛かりたくても書かれない世の中になるでしょう.その時になって後悔しないように正確な状況判断をしてくださいね.
困るのは我々医師ではなく医療を受けるあなたがた非医療者ですから... >P_OIさん
投稿: Level3 | 2007年7月26日 (木) 10時09分
P.O殿
いつまで昭和40年代の理想の医師像を追いかけ続けているのですか?
言いたいことは、Level3先生が殆ど述べられているので私が加筆すべき事は殆どありませんが、貴方のような考え方を持つ「Monster Patient」が、今の医療を崩壊させている大きな一員であると言うことを御自覚ください。
ちなみに貴方は「医療事故」と「医療過誤」の違いを分かって書いているのですか?
投稿: 僻地勤務医(絶滅危惧種) | 2007年8月21日 (火) 08時46分