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2007年6月 2日 (土)

東京地裁の裁判員制度模擬裁判

 東京地裁が、トヨタ自動車、キャノンなどの大企業の協力を得て、裁判員制度の模擬裁判を実施した。

裁判員制度 本番同様の模擬裁判、3日間の日程終える毎日新聞

「専門用語難しい」 模擬裁判に挑んだ6人 量刑判断…裁判長「まずは直感で」産経新聞

「疲れた」「もっと時間を」=判決終えた模擬裁判員-3日間で集中審理・東京地裁時事通信

 裁判員の一人で、キヤノンCE本部の室長加藤吉幸さん(59)は判決後「ものすごく疲れた。選ばれる前に裁判員のビデオを見たが、選任手続きが中心。調書とか最初は意味が分からず、もっと事前に裁判自体の説明があるといい」と語った。

 会社員女性は「もう少し評議の時間がほしかった。3日間で決めるのは難しい。ただ3日以上会社を空けられるかどうか。リラックスした雰囲気をつくってくれた裁判官には感謝したい」と述べた。

 合田裁判長は評議で一番苦労した点について「今、どういうことをやっているのか繰り返しお話しし、理解を得ていただくこと。正当防衛とか言葉の説明に配慮した」と話した

 (上記青字は時事通信のニュースから引用。)

 このお三方の感想はごもっともだ。真面目な方々なのだろう。

 こういう事件を、3日で審理するなど、しかも刑法や刑事訴訟法の基礎知識のない方々が3日で審理するなど、土台無理というものだろう。刑事裁判は教育の場ではない。

 次は量刑判断。裁判長に「まずは直感で」と促され、各裁判員が意見を述べたが、執行猶予付の懲役3年から懲役7年までバラバラ。「酌量の余地もあるのでは?」と再度裁判長から問われ、出された量刑は懲役5年が1人、同4年が4人、同3年が4人。裁判員法が定める量刑評決の手続きにのっとり、懲役4年と決まった。

 (上記青字は産経新聞のニュースから引用。太字は管理人による。)

 本番だったら、直感で量刑判断される被告人はたまったものではない。

 この模擬裁判では検察官の求刑は懲役13年だったそうだから(ボツネタ経由)、懲役4年では検察官はかたなしだろう。

 ますます混迷を深める裁判員制度・・・。

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刑事弁護」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。

裁判員制度についてお聞きしたいことがあります。

「ストップ!裁判員制度」というチラシが右のリンクにあり、関連サイトを閲覧したのですが、国会で裁判員法は成立してしまいましたので、いかに模擬裁判で困難が多くとも、施行の中止の実現はまず無理ではないかと思うのですが、実際のところはどうなのでしょうか。

どのような手続きを経て中止になると思われますか、またその可能性はありそうなのですか。

私としては、法の専門家である弁護士の方々の中にも反対される方が多く、しかし裁判員制度はそういった方の反対にも関わらず成立しました。法律の専門家の先生方の力が及ばなかった方向性が、今更変えられることなどありえない気がします。一旦専門家の協議も通過したという前提で成立した以上、中止することは困難な気がするのです。

ただ、反対の運動が今もされているわけですから、何らかの目算があるのでしょうか。実際覆すことが可能なのかどうか、見通しや手ごたえについてご教示頂ければ幸いです。

元内科医さんへ
 反対運動の「見通しや手ごたえ」とのご質問ですが、私は運動に参加はしていますが中枢部にいるわけではないので請願書がどの位集まっているかなどは分かりません。

 ただ、この裁判員制度は、施行前か施行後になるかは分かりませんが、いずれ廃止になるだろうと思っています。

 日本でも戦前に陪審院制度が導入されたことがあります。しかし、僅か2年で審理件数が半減(陪審裁判を受けるか否か選択制だったため殆どの被告人が職業裁判官による裁判を選択した)、15年後に消滅しています。

 間違った制度であるならば、犠牲の生じる前に(施行前に)廃止すべきです。

 勝算ということを考える前に、反対であるならば声を上げていくべきだと思います。
 このままでは、反対の国民や裁判官や弁護士の方がいくら多くても、国は莫大な広告費や運営費を導入し、裁判員制度の導入に向けて突っ走っていってしまいます。

 裁判員法が多くの団体や有識者の反対を受けながら成立してしまった経緯や、裁判員制度の問題点については、「裁判員制度はいらない」(高山俊吉著、講談社発行)を読んで頂くと、多くのことがお分かりになると思います。
 

たびたびすいません。遅くても結構ですので、ご教授願いたいことがあるのですがよろしいでしょうか。

裁判員制度についてですが、模擬裁判で量刑判断にばらつきがみられたり、「用語がわからない」など裁判員となった方からの声があったという報道があります。

一方私が本当に疑問に思うのは、外国(例えばアメリカ)では裁判員制度がそれなりに機能しており、中止されることもなく運営されていることです。

日本と他の国で一般の人の法律に関する知識に著しい差があったり、知能に差があったりすることは考えにくいと思います。

何か、根本的な制度の相違がそうさせているのかも知れないと思うのですが、何分私もわが国の裁判について理解し始めたばかりなので、他国のことまで到底理解ができません。

もし、彼の国において裁判員制度をうまく運営させている原因があって、それが同定できれば、日本でも運営させるための参考になるのではないかと思うのですが、何かお考えはありますでしょうか。

元内科医さんへ
 日本の裁判員制度とアメリカの陪審制との違いについては、いずれ記事に書きたいと思っているのですが、忙しくてなかなか文章にできません。
 お急ぎでしたら、「裁判員制度はいらない」の「第4章 陪審制とはまるきり違う」をぜひお読み下さい。

 簡単に言えば、
 陪審制では被告人を有罪とするためには12人の陪審員全員の一致が必要です。
 アメリカ映画「12人の怒れる男」を見られた方ならよくお分かりでしょう。ヘンリー・フォンダが演じた建築家のように、陪審員はたった1人でも被告人の盾となりうるのです。
 これが多数決で有罪を可とする日本の裁判員制度との決定的な違いです。

 また、陪審制では陪審員による有罪の評決が出た後は職業裁判官が量刑判断をするのに対し、裁判員制度では量刑判断まで裁判員が行うところも違います。

 更に、陪審制では被告人は陪審員による裁判と職業裁判官による裁判を選択することができるのに対し、裁判員制度では被告人にこのような選択権はありません。

 最近、アメリカの弁護士から話を聞く機会があったのですが、被害者が子供のような場合はどうしても陪審員の感情が被害者側に向くので、弁護人は陪審員による裁判を選択しないということです。
 ですから、アメリカで光市母子殺人事件のような事件が起こった場合、おそらく陪審員による裁判は選択されないのだろうと思います。

(もっともアメリカでも州によって陪審制に若干の違いがあるようです。)

なるほど!
全員一致とはそれは全く違いますね。
有罪か無罪かだけに関わる点も知りませんでした。
紹介されたご本を読んでみます。
ありがとうございました。

はじめまして。
「安田弁護士懲戒請求発言の影響」のリンクから過去の日記を読ませてもらい、とても興味深かったのでコメントさせてもらいます。

裁判員制度の問題点についての提言、うなずけることが多いです。個人的にはそれに加えて良識のない一部の人が裁判内容を匿名ブログで書き込んだりするんじゃないか?という懸念もありますし、なにより最初のうちは窃盗や痴漢、暴行などの比較的軽度な事件のみにすべきだと感じます。

ただだからといって「裁判員制度なんていらない!」というのは極端です。多少制度は違えどアメリカの陪審員などは機能しているのですし、日本の裁判員制度に問題があるのならそれらを修正しつつ、日本式の裁判員制度を確立していくということはできないのでしょうか?

問題点が多いにせよ、これまで重大事件の裁判で理不尽な判決があった際でも蚊帳の外からブログや2chなどで騒ぐことしかできなかった一般人にようやく直接意見を言う機会を与えられたのです。楽観論かもしれませんが、もう少し暖かい目で見てみませんか?

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