昨日のビートたけしのTVタックルで、医療崩壊問題が取り上げられていた。ご覧になった方も多かろう。
出演者は、TVでおなじみのこの方々。
三宅久之氏(評論家)、宮崎哲弥氏(評論家)、坂口力氏(元厚生労働大臣)、武見敬三氏(厚生労働副大臣)、鈴木寛氏(民主党衆議院議員)、小池晃氏(共産党衆議院議員)、南淵明宏氏(医師・大和成和病院心臓センター長)、浅野史郎氏(元宮城県知事)。
私は知らなかったのだが、メタボ対策で有名なこの武見敬三氏って、あの有名な元日本医師会会長の武見太郎氏の息子さんなのだそうだ。
この方のプロフィールはこちら。
この方のHPでのTVタックルへの出演予告には、こう記載されている(青字はHPからの引用)。
過酷な労働を強いられる医師、
そしていわばサービス残業の上に成り立っている勤務医の実態、
産科・小児科だけでない医師不足問題。
相互扶助で成り立つ国民健康保険制度での保険料の滞納、
国民皆保険制度を如何に保持するか。
日本の医療の現状と課題を武見が議論します。
しかし、番組では、医師不足について宮崎氏から「医師偏在か医師不在か、どちらか厚生省の立場をはっきりさせよ」と詰め寄られ、三宅氏からは「(今日の医師不足は)厚生省の無策によるものだ」と叱られ、「武見が議論します」どころではなく、「武見が責められます」状態で、ちょっとお気の毒だった。
武見氏は、厚生労働省が医師の数を制限してきた理由として「医師の数が増えると医療費の支出が増加するという考え方、即ちコスト管理という考え方で医師数の適正化をはかってきた。しかし、もはやそれは限界にきている。」と述べられていた。
そこを今度は小池議員から「武見さんは医師会の仲間だからいい顔してるけど、厚生労働省はまだ方針を変えていないでしょう。まだ医師偏在と言って医師不足とは認めてないでしょう。」などと責められる。
これに対して武見氏は「私は厚生労働省の中でもきちんと今みたいに意見を言ってますよ。」と答えていたが、そこへすかさず、三宅氏が「あなたが言ってても(厚生労働省が)動かないっていうことは、あなたが無力だっていうことでしょ。」と皮肉を言われる。
武見氏に言われなくても厚生労働省ははっきり医師不足であるという紛れもない事実を認め、医師を増やす対策を取るべきだ。
この問題については過去の私の記事とそれに対する医師の方々のコメントもご参照下さい。
医師の卵も弁護士の卵も同じなのか・・・。:
この記事の頃には、厚生労働省は「医師は足りているが、(若手医師の気質などによって)偏在が生じているだけだ」と主張していたのか。
さて、TVタックルには小泉政権下で厚生労働大臣をされていた坂口氏も出演されていた。
私は知らなかったけれど、坂口氏は小児科医だったんですね。
坂口氏も前厚生労働省大臣として三宅氏に「(医師不足を生じさせたことなどについて)厚生労働省は全く無能だね。」と責められ、「厚生労働省としてもやりたいことは山ほどあるけれども、そこは財務省からピシッと抑えられるわけですよ。」と言い訳をされていた。しかし、三宅氏は「それは厚生労働省が自らの手腕がないっていうことを言っているようなものでしょ。それは財務省の横っ面をはり倒してでも俺ら人の命を預かっているんだからヤレって言えばいいじゃないですか。」と追求の手をゆるめない。これに対して、坂口氏は「そこは政治の出番だと思う。与野党問わずバックアップをして頂いて・・・」とお茶をにごしていた。
そして、最後に、宮崎氏が「そこは選挙のときに国民に負担は増えるだろうけど命は守られるというのをとるか、命はあんまり守られないかもしれないけれども財政は良くなるということを選ぶのか、選択をしてもらわなければいけないと思う。」などとしめていた。
・・・それって、参院選で「医師増員」と「保険料増額ないしは自己負担割合アップ」あるいは「消費税アップ」がセットで問われるということ?
家計の負担を増やさずに医師の増員は望めないのだろうか。
これについては、「家計の負担を増やさずに医師を増やす方法がある」という山家悠紀夫氏(元神戸大学教授、元第一勧銀総合研究所専務理事)の講演をご参考にして下さい。
この講演は、全国保険医団体連合会(開業医の過半数ー約10万人ーの医師が加入されているという)発行の冊子に記載されているもの。
下記で同連合会のHPから読むことができます。
「医療も命を削られる 医師不足、医療難民はなぜ生まれたか?」
このパンフは、看護師と患者が一緒に穏やかにほほえんでいたり、医師の方々が並んで穏やかな笑顔を見せている写真などが掲載されていて、一見普通の医療関係のパンフのようである。
ところが、実は厚生労働省や政府やあの有名な規制改革推進派の方(私たち弁護士にも超有名なあのお方)に対する大変辛辣な批判を加えている(よくここまで書いたなと思った)、相当過激な内容のパンフなのである。
しかし、医師不足の現状やその原因について多角的に分析し分かりやすく説明されており、大変格調の高いパンフでもある(弁護士会の通称「ノキ弁のすすめ」パンフとは大違い!!)。
医師不足のため、「外科医の7割が当直明けで手術、病院勤務医は週70時間労働」なのだそうだ。それじゃミスも起こるはずだ。
あまりの激務のため、地方でいくら医師の年俸を高くしても(北海道など年2000万円以上)、勤務医が集まらない。
勤務医の先生方が「もはや逃散しかない」と次々と病院をやめていき、休診となってしまった診療科や病院が続出している。
こんな状態では、安心して病院に行けやしない。
国は「弁護士はフランス並みの人口にするために司法試験合格者を3000人に増員せよ」と言う。しかし、上記パンフによればフランスでは医師は国民1000人当たり3.4人であるのに対し、日本は2.0人であるにすぎない。どうして、「医師もフランス並みの人口にするために増員せよ」と言わないのか。弁護士よりも命を預かる医師の方が、より国民にとって必要ではないのか。
同じ規制緩和路線にありながら、どうして医師と弁護士でこうも違うのか。ここにアメリカ政府、日本の財界、新自由主義者らの意図するところが露骨にあらわれている(上記パンフ参照)。
病気や怪我はいつ降ってくるか分からない。若い人であってもいつお医者さんのお世話になるか分からないのである。
私もここ1年近く、父が入退院を繰り返していたので、病院がいかに人手不足かを実感している。土日、祝日などは病棟は閑散としているのだ。実際、医療ミスは休日に起こることが多い。
しかし、医師不足について、TVタックルを見る限りでは、政治家も厚生労働省もあてにはならないようだ。
参院選で医師増員が主要な争点になるとも思えない。
一体どうしたらいいのだろう。
今できることは、上記連合会のHPの医療危機打開の署名活動に参加すること位だろうか。
この記事をお読みの方は、ぜひ上記署名にご協力下さい。
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