「ノキ弁」とは(その2)
海上自衛隊のCMの話に脱線してしまったが、再び日弁連(日本弁護士連合会)発行のノキ弁のススメのパンフレットの話の続き。
このパンフレットには、次のような会長からの「お知らせ」もついてた。
なお、本パンフレット11頁に、「事務所内独立採算弁護士(ノキ弁)タイプ」の実例を紹介しております。
「ノキ弁」という呼称は、ややもするとマイナスイメージもありますが、今回ご紹介した「ノキ弁」の実例では、「軒」を「貸す」弁護士と「借りる」弁護士が互いに独立性を保ちつつ協力し合い、双方にメリットをもたらすシステムになっています。このシステムにふさわしい呼称が定着されることを期待しながらご参考までに紹介します。
さて、ノキ弁のパンフレットの中身を紹介すると、
ノキ弁の
<基本内容>
① 後輩弁護士(以下、仮に「ノキ弁」と呼びます)は、先輩弁護士の事務所に所属しますが「勤務弁護士」ではありません。
② 机・パソコン・電話・名刺・職印等必要な備品は、ノキ弁入所時に先輩弁護士が用意します。
③ 先輩弁護士は、自分の事件をノキ弁と共同受任し、報酬の一部を共助料としてノキ弁に支払います。
④ ノキ弁も、個人として事件を受任します。他の事務所の弁護士と事件を共同して構いません。ノキ弁は積極的に法律相談・国選事件等を受任し、個人事件を増やすよう努力します。
⑤ 先輩弁護士は、ノキ弁の収入が一定額を下回らないよう、優先して事件を回すなどして配慮します。また、入所時に、ノキ弁にある程度の生活資金を無利息で貸与するなど、ノキ弁が生活を維持できるように工夫します。
⑥ ノキ弁個人の収入(売上)が一定額を超えた場合には、超えた部分の一部を事務所経費として納めます。
<このタイプのメリット>
「先輩弁護士」にとってのメリット
① 「勤務弁護士」のように低額の給与を支払う必要がなく、経済的な負担が軽くて済みます。
② その一方で、事件処理に広がりが出る、判例等新しい知識を吸収する機会ができるなど、勤務弁護士を採用した場合と同じメリットを享受できます。
③ 経済的にプラスとなります。(事務所で扱える事件が増える上、ノキ弁が一定以上の収入を得られるようになった場合には経費を負担してもらえます)
「ノキ弁」にとってのメリット
① 先輩弁護士が仕事を回す・経費を負担するその他必要な配慮をしてくれるため、いきなり独立開業するのに比べてリスクがあまりありません。
② 他方、ノキ弁は、事務所の一員であるものの独立性があり、「勤務弁護士」より拘束力が少なく、自由な立場にあります。
③ 先輩弁護士と事件を共同受任することにより、様々な事件に関与でき、勉強になります。
※ 青字はパンフの文章をそのまま引用。但し、下線は私が引いたもの。
さて、このパンフレットの言っていることは本当だろうか。そして、このパンフレットを読んで、すすんで「ノキ弁」になりたいと思う司法修習生はいるのだろうか、あるいは、すすんで「先輩弁護士」になりたいと思う一人事務所経営の弁護士はいるのだろうか。
また、このパンフレットには、「先輩弁護士」と「ノキ弁」にとってのメリットの記載はあるが、「相談者や依頼者」にとってのメリットについての記載は全くない。「ノキ弁」は相談者や依頼者にとってもメリットがあるのか。また、ノキ弁の相手方となる当事者や弁護士、司法の利用者としての国民にとって「ノキ弁」が増えることはよいことなのか。
こういう点について、現実を踏まえつつ私なりに考えた記事を、少しずつ書いていきたい。また、日弁連が「ノキ弁」を推奨せざるをえなくなった背景(弁護士人口激増による破綻にほかならないが)についても触れていきたい。
※ 仕事が忙しいので、かなり時間がかかります。興味のある方は気長にお待ち下さい。
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