司法試験は受かったけれど・・・弁護士の2007年問題。
今、59期司法修習生(次期就職予定の修習生)のうち、就職未定者が東京では約100名、大阪では10数名ほどいるという。
しかし、問題はその次。
2007年には約2400人から2500人(60期修習生)が司法修習を終了する。これは現在の約2倍の数。
司法修習生のうち、裁判官として採用されるのは毎年90~105人、検察官は毎年70~80人程度。
裁判官や検察官を増やすことは国民の望む迅速な裁判のために不可欠だが、司法予算が乏しいために最高裁も法務省も毎年僅かな増加しか認めない。
よって、60期司法修習生の大半が弁護士登録することになる。しかも、その後も毎年どんどん増えていくのだ。
しかし、法律事務所にはそれだけの修習生を吸収できるだけの余力はない。約半数であった59期の修習生でさえ就職できない者が多数出ているのに、その倍の60期の修習生を吸収できるはずがない。
今年度の日本弁護士連合会の会長選(候補者3名)では、この2007年問題が大きな争点となった。こんなに多くの修習生をどうするのか、どこに弁護士のニーズがあるのか、という点である。
普通に考えて、法律事務所が吸収できないということは、もはや弁護士本来の仕事のニーズが頭打ちだということだ。
それなのに、弁護士の中の一部の増員論者ら(当時は執行部の中枢にいた)は、企業や自治体に弁護士が入り込む余地がある、増加した弁護士がどんどん「需要を掘り起こす」ことで念願の「法化社会」を達成することができる、という幻想のもとで、財界主導(規制改革・民間開放推進会議ー議長宮内義彦オリックス会長)の司法試験合格者数の増大、弁護士の大量増員に賛同してきた。
大体、弁護士は人の不幸を飯の種にしているところがある。増員論者らが決まって使う「需要を掘り起こす」という言葉は一体どういう意味なのか、私は常々疑問に思っている。「紛争の予防」という意味なら許されようが、「紛争の事後処理」という面でいえば、大変危険な意味を持つ言葉だ。
私が独立開業した頃に弁護士仲間の研修旅行で他の弁護士と一緒にお土産屋さんに入ったときのこと。私は民芸品の「招き猫」がかわいいので事務所のカウンターにでも置こうと思って買おうとした。しかし、見ていた先輩弁護士に「そんな物が置いてあるのを見たら法律事務所にやってくる人はいい気持ちがしない。置いてはだめだ。」と言われ、「なるほどな。」と思って買うのをやめた。
確かに、法律事務所にやって来る人は様々な不幸を背負った方々だ。そういう方々が法律事務所の招き猫を見て不快になるというのも理解できる(もっとも、招き猫は「商売繁盛」の意味以外に「福を招く」という意味もあるそうだが)。
増員論者の弁護士が「需要の掘り起こし」という言葉を使うとき、私は決まってこの「招き猫」のことを思い出す。
いくら日弁連が法律事務所に「求人」を促しても(最近、日弁連は全会員に求人アンケートなるものを3回も配布した)、そんなに大量のイソ弁を採用できるはずがない。企業も自治体も弁護士をそんなに欲しがってはいない。ニーズのないところに、そんなに弁護士ばかり増やしてどうするのか。
弁護士の就職難という現実のもと、増員論者らも夢から覚めて現実を直視すべきである。
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>財界主導(規制改革・民間開放推進会議ー議長宮内義彦オリックス会長
こんなところにもお名前が。。。。司法改悪もこのお方ですか。。。
ご存知かもしれませんが、昨今の医療改悪もなぜか経済界が深く関わっているのです。
世界に名高い評価をうけている日本の医療・保険制度を破壊し、混合診療・自由診療であまい汁を吸おうとしている民間保険会社が。
「高いお金を払ってもいい医療を受けたい人がいるはずだ」とおっしゃったそうです。
でも高いお金を払えない大多数の国民のことは????
今回の記事とても共感します。そしてこういうまっとうな感覚をお持ちの弁護士の方がいらっしゃることにほっとします。私もマスコミ報道に毒されて弁護士に対して偏見があるのかもしれませんが。
火のないことろに火を起こしてどうするんだと思っていましたから。
自分だけ甘い汁を吸おうとして社会全体の幸福はどうでもいいと考える人が国政の中枢に関わり改革を行うなんて信じられません。
結局勝ち組さえよければいいという社会は治安の悪化させ、社会不安をきたすことはアメリカをみればわかるのに、どうしてアメリカの追従をするのでしょうか。
投稿: 医療って | 2006年7月26日 (水) 23時03分