クローズアップ現代を見た。
きょうは仕事を早めに切り上げて耳鼻科の医院に行った。風邪を引いてからずっと鼻づまりが続いていたから、「もしや副鼻腔炎では?」と心配になったからだ。
この医院には10年近くお世話になっている。私はのどや鼻が弱いので、たびたび診て頂いている。女性の先生だけあって待合いや診察室もこぎれいにされており、説明も丁寧だ。看護師さんたちの手際もよく、よく訓練されている感じである。
予想どおり直ぐに顔のレントゲン撮影をされて「異常なし」と言われ、ほっとした。
点鼻薬などをもらうために医院の直ぐ近くにある薬局に行った。薬局に入って驚いたのは、目の前に貼ってあった特大ポスターを見て。そのポスターは、インターネットによる患者の投稿で病院の評価付けをするというサイトを紹介するものだった(残念ながらサイトの名前までは控えなかったが)。
こういうサイトの紹介を医院の直ぐ横にある薬局がしているというのには驚いた。開業医の方々は、患者の医療不信にとても敏感なのだと感じた。
帰ってからNHKのニュースを見ていたら、クローズアップ現代で医療事故の特集をやっていた。
私は3月に放映された司法改革や法曹人口問題を取り上げたクローズアップ現代を見てから、この番組に対して不信感を抱いている。30分という短さから仕方がないかもしれないが、かなり一面的にしかテーマを取り上げていない気がする。もう少し掘り下げてほしいと感じた。
司法改革を取り上げたときは日弁連の会長が出演していたのだが、今回は医師会の関係者ではなく女性のジャーナリスト?(記者?)の出演だった。この女性の解説は、ほとんどこのブログのコメントに投稿されている医師の方々の意見と同じであった。こういうことを、(一応第三者的な)女性ジャーナリストに話させるというのは非常にうまい戦略だ(司法改革の特集のときも、弁護士会の会長ではなく、こういう方に現場の弁護士が抱えている深刻な問題や訴えを解説して頂きたかったものだ)。
番組の中では、患者側として、医師の逃散によって転院せざるをえなかった妊婦の患者、かつて医療過誤によって子供を失い今は病院内に勤務して患者側の立場に立ったアドバイスをするという仕事についている女性、が意見を述べられていた。お二人とも多少苦言は呈していたが、どちらも病院内におられるせいか、それほど厳しい意見ではなかった。
しかし、普段、医療事故相談で、医療被害にあった(あるいはあったと思いこんでいる)患者側の相談をしている私からみれば、患者側の怒りはそんなもんじゃない。つい最近も、いきなり「刑事告訴したい」という相談者を、「よく調査してからにした方がいい」と諭したばかりだ。ただ、(具体的事例を出すことは守秘義務に反するので言えないが)、医療側にも、その方が刑事告訴したいと思うのも無理からぬほどの問題があった。
司法改革のときは、クローアズアップ現代は弁護過疎を取り上げて、過疎地で自己破産などを弁護士に頼めない、あるいは都市部で着手金を払えないので弁護士を雇えず訴訟ができない、などと訴える一般市民のインタビューを放映した。
しかし、都市部で余っている弁護士がインターネット上で「多重債務者の無料相談」「日本全国で自己破産を引き受けます」(自己破産の場合、弁護士が裁判所に出向かなければならないのは通常1、2回程度)などというホームページを公開していることについては全く触れられなかった。また、「弁護士は金がない者の弁護はしてくれないのか」などと厳しい口調で訴えられた方についても、弁護士仲間では「えっ。言われていることが本当なら弁護士にとっても十分報酬がもらえる事件じゃない。どうして引き受け手がないの。法律扶助だってあるじゃない。」と話し合っていた。しかし、出演されている日弁連会長も法律扶助制度について触れられた程度で、このような事実に対する言及はなかった。
患者側が(弁護士には怒りをぶちまけるのに)、実名でなかなか医療側に対し面と向かって批判的な意見を言えない理由の一つには、「恐怖」があるからだと思う。
医療事故相談では、医師に対して怒りをぶちまける相談者であっても、「証拠保全をしたら、自分や家族が病気になったとき、その病院やその病院の関連病院では診てもらえないのじゃないか。あるいは変な扱いを受けないか。」などと真剣に心配される。私は、「病院や医師にも職業人としての良識があるのだから、まさかそんなことはされないでしょう。」とは答えるが、相談者の不安はなかなか消えるものではない。そこまで患者の「医療不信」は進んでいるのである。
そして、患者が自ら身を守るために、冒頭で紹介したようなインターネット上の口コミによる病院評価のサイトが生まれ、安心できる病院OO選、日本の名医紹介などという本が売れるのである。
医師も弁護士も、その仕事の公益性からすれば「自由競争」ばかりでは必ずひずみが出てくる職業だと思う。私には、今の司法改革も医療改革も、間違った方向に進んでいるようにしか思えない。その被害を受けるのは、一般市民である患者や依頼者である。
医師も弁護士もプロフェッションとして市民に対する責任があることは同じだ。しかし、個人でできる努力には限界がある。被害が拡大しない前に、なんとか食い止めることはできないものだろうか。
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コメント
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>―この文章から透けて見えるのは、貴方の
>「私は『被害者』の弁護人であり、正義は
>常にこちらにある。医療関係者はどう弁明
>するつもりなのだろうか。」とでも言い出
>しかねない、あなたの訂正困難な思い込み
>である―
>私は、そんなことを言っていません。
と、以前コメントに書かれていましたが、
番組の感想として書いてある
>患者側の怒りはそんなもんじゃない
というのは、あなたの言葉の端々から感じられる「正義は常にこちらにある」といった印象を受けます。
訂正困難なようですね。
削除します?
投稿: 一医師 | 2006年6月23日 (金) 09時46分
「一医師さん」へ
私の記事をよく読んで下さい。
患者側にもいろいろな人がいるのであって、本当の「医療過誤の被害者」と単なる「医療事故」を「被害にあったと思い込んでいる患者」がいるのです。
一度、「一医師」さんにも、私たちの医療事故相談(無料)に立ち会ってもらいたいものだと思いますね。
投稿: M.T. | 2006年6月23日 (金) 10時10分
「一医師」さんへ
追記
クローズアップ現代で紹介していた病院のリスクマネージャーのような方が、「医療事故を医療過誤にあったと思いこんでいる患者」を説得して下さるのなら、私たちも大いに助かるのですが。
多くの病院にはそういう努力が足りないと思います。
本当の医療過誤の被害者が怒るのはもっともだし、弁護士がそれを救済したいと思うのは当然ではないでしょうか。
もし一医師さんが、こういうことを理解されないのであれば、今後は「記名」されない限り、コメントを削除させて頂きます。
投稿: M.T. | 2006年6月23日 (金) 10時17分
>本当の医療過誤の被害者が怒るのはもっともだし、弁護士がそれを救済したいと思うのは当然ではないでしょうか。
誰もそんなことに対して批判していません。医師側の書き込みでは明らかなミスは裁かれるべきだとしているものがほとんどだと思いますが?
そちらこそ、皆さんの書き込みを良くみていますか?
それから、あなたのように営業活動の一環として書き込みをしている訳ではないので実名などは書けません。
捨て台詞と思われるかもしれませんが、どうぞ削除されてください。
投稿: 一医師 | 2006年6月23日 (金) 11時33分
「一医師」さんへ
仕方ないですね。私も反論していますので削除はしませんが、今後はコメント規制をさせて頂きます。
ーあなたの言葉の端々から感じられる「正義は常にこちらにある」といった印象を受けます。ー
具体的な指摘がないので、なんとも反論しようがありません。
「言葉の端々」とは、一つは「(私が経験している)患者側の怒りの表明は、クローズアップ現代でインタビューを受けていた患者さんらのものよりも、はるかに激しい。」と言ったことなのでしょうか・・・。
でも、これは事実です(具体例はいくらでも掲げられますが、守秘義務に抵触する可能性があるので書かないだけです)。
これが「正義は常にこちらにある。」物言いだということになるのであれば、経験談も書くな、ということになります。
ーそれから、あなたのように営業活動の一環として書き込みをしている訳ではないので実名などは書けません。ー
以前は弁護士には広告規制がありました。しかし、弁護士は市民に「取扱分野」や「弁護士報酬基準」を明かにせよ、という要請が出てきて、私もその要請に応えたつもりです(ホームページには取扱分野や報酬基準をできるだけ明解に書いたつもりです)。
それに、弁護士に自由競争を強いる以上、営業や宣伝も必要ということではありませんか。
医療の分野でも、たくさんの病院や医院がホームページを持っています。私は大変便利だと思い、よく使わせて頂いています。
医師も弁護士も、報酬を頂いて生活しているので、節度ある「営業活動」が悪いとは思いません。
私が「他人を中傷するコメントを投稿するなら実名を明かにせよ」と言っているのは、これとは全く別のことです。
無記名で無責任な投稿をされるのでは2チャンネルと同じです。
「一医師」さんがご自分の発言に責任が持てるのなら、記名ができるはずです。
投稿: M.T. | 2006年6月23日 (金) 11時54分
一医師さんの、正義面してるという言葉は専門職としての医師側の感覚と、被害者(と思ってる)側の法的代表者となる弁護士側の認識の違いから出てきているように思われます
医師側からすれば、それこそ機械の部品を取り替えるようにはいかない人間の身体に関して患者のリスク認識が異常さを呈しており、それに輪をかけて弁護士が助長しているという認識を持っていておかしく無い状況にあると思われます
それと弁護活動自体は究極的に単なる仕事(金銭活動)であって、それに託けて社会正義とか言われる(医師が悪の如く言われる)ことに、嫌悪感を感じるのでしょう
世の中の活動全てにも当てはまるのでしょうが、ごく一部の不逞な活動を行う輩によって全体が悪の如く対応する判断が正しいこととは思えませんが如何でありましょうか?
PS.一般論として無記名は無記名なりのものしかないので、気にするだけ無駄と思われます
一方無記名を無視するなら内部告発など求めようも無いのは考えれば理解できるはずですが?
あまり自分の立場を正当化するための意見表明であれば、そこに陥穽が出てくることはお忘れなく
投稿: じおんぐ | 2006年6月23日 (金) 23時37分
「じおんぐ」さんへ
ー医師側からすれば、それこそ機械の部品を取り替えるようにはいかない人間の身体に関して患者のリスク認識が異常さを呈しており、それに輪をかけて弁護士が助長しているという認識を持っていておかしく無い状況にあると思われます。ー
このままでは、ますますそういう状況が加速していくことを、医師の方々はもっと認識すべきだと思います。
そのためには、もっと患者側の視点での活動も必要だと思っています。間違った「リスク認識」を持っているという患者への説明がもっと必要です(リスクマネージャーーできれば病院外のーというのもいいかもしれません)。
私たち弁護士は、医療に関しては素人ですが、文献などを読んで一生懸命相談者に説明しています(できるだけ平易な言葉を選んで)。そうすると、結構納得する人も多いのですよ。
医師の方々にもそういう努力をしてほしいと思うのも「金銭活動」からでしょうか。
ーそれと弁護活動自体は究極的に単なる仕事(金銭活動)であって、それに託けて社会正義とか言われる(医師が悪の如く言われる)ことに、嫌悪感を感じるのでしょうー
これについては、いろいろ言いたいことがありますが、やはり「弁護士とは何ぞや」というような内輪の話になりかねないので今はやめます(司法改革問題と併せて一度記事の方ではじっくり書きたいとは思っていますが)。
ただ、これは弁護士と医師との違いばかりではなく、経営者側(開業医、病院経営者、経営者弁護士)と勤務医、勤務弁護士の違いからもきているように思います。
このブログのコメントに記載されている経営者側の医師の方々の苦悩には、私は実に共感を覚えます。これに対し、勤務医と思われる方々のコメント(一部ですが)を読んで「自分たちのことばかり言っていないで、もっとお客の患者を大切にしてよ」と思うのもそのせいかもしれません。
医師には保険制度があるため患者が「お客」であるという認識が薄いように思います。これに対し、弁護士は依頼者から直接報酬をもらっているため、依頼者は「お客」という意識が強いのです(弁護士が増えすぎて自由競争が激化し、その意識ばかりが先行するようになるとそれはそれで極めて危険なことなのですが)。
P.S. 先日、ある病院に証拠保全に行ったら、ロビーに「当病院は患者様のために・・・」という患者の権利宣言のようなものが大きく掲載されていました。「患者様」という表現に非常に違和感を感じました。
また、もし弁護士が「究極的」に金儲け主義に走ったときの怖さも、考えて頂きたいものです。
これは医療紛争に限ったことではありませんが、訴訟を起こしたい、刑事告訴をしたい、という相談者に対し、「そうでしょう、そうでしょう」と言って、しっかり着手金をもらい(あるいはアメリカ式にタイムチャージ制で報酬をもらい)、勝訴や立件の見込みなどおかまいなしに、どんどん訴訟や告訴をしていったときの怖さを、世間の人はもっと認識すべきです。
私がこのブログで一番いいたいのはここです。はっきり言って、こんなブログをやっていても「金儲け」にはなりません。また、弁護士は普段から仕事でたくさん主張書面を書いていますので、ブログでまた文章を書かなければならないとなれば、ストレスの解消にもなりません。私もあれこれ忙しいので、正直、コメントにいちいち反論するのが面倒くさくなっています。ただ、刑事弁護のときもそうですが、あまりに誤った認識の方が多いので、ほおっておけないのです。
ホームページは営業目的と言われても仕方がありませんが、これは病院のホーームページも同じだと思います。しかし、ブログは違います。弁護士の現実の活動を知ってもらい、今の司法改革路線でいいのですか、という問いかけをするつもりで始めたのです。
医療過誤の患者側弁護士の仕事を紹介しているのも、その一環であり、別に医師の方々が全て悪者だとか決めつけるためにやっているわけではありません。
ー世の中の活動全てにも当てはまるのでしょうが、ごく一部の不逞な活動を行う輩によって全体が悪の如く対応する判断が正しいこととは思えませんが如何でありましょうか?ー
もちろんです。
ただ、医師の方が、そのような「ごく一部の不逞な活動を行う輩」を放置しておくことは、患者の不信感を助長し、自らの頸を絞めることになると申し上げているのです。鑑定医や協力医、また後医の問題を取り上げているのはそのためです。
また、医療過誤は、個々の医師のミスもありますが、病院の体制や組織的活動に問題があるものも多く、この点も認識すべきです。
ー一方無記名を無視するなら内部告発など求めようも無いのは考えれば理解できるはずですが?ー
内部告発の場合であっても、無記名の証言には証拠価値がありません。医療紛争でも無記名の意見書なら書いて頂ける医師の方は結構多数おられるのですが、裁判では証拠価値がありません。裁判所も誰が書いたものか分からないような書面に証拠としての価値を認めません。
ブログは本来管理者の意見の表明の場です。私は記名で記事を書いて意見表明をしているので、コメントを書かれる方も「そこまで言われるなら記名で反論ー意見表明ーするのが公平でしょう」と思っているだけです。
なお、私の所属する愛知県弁護士会のホームページにも会員専用の「掲示板」がありますが、記名でないと投稿を受け付けません。
会員しか閲覧できない掲示板(弁護士の内輪のもの)であっても、2チャンネルのような無記名、無責任な投稿は許せん、という弁護士が多いからです。
投稿: M.T. | 2006年6月24日 (土) 05時56分
いつもお忙しい中、お疲れ様でございます。
沈黙しておくつもりでございましたが、あまりに屈辱的な侮蔑の記載を拝見いたしましたので、いささか驚きの念を覚えながら記載させていただきたいと存じます。お許しください。
私が思いますに、管理者先生の担当なさる例の医療者レベルがあまりに低すぎ、全ての医療者がそのようなものだと大変な思い違いをなさっておられると思います。管理人様は殆どの医療現場のことを全く理解なさっておられません。ご自分の事案の相対する医療者が医療だと思っておられるのではないでしょうか。
>このままでは、ますますそういう状況が
>加速していくことを、医師の方々はもっ
>と認識すべきだと思います。そのために
>は、もっと患者側の視点での活動も必要
>だと思っています。間違った「リスク認
>識」を持っているという患者への説明が
>もっと必要です。私たち弁護士は、医療
>に関しては素人ですが、文献などを読ん
>で一生懸命相談者に説明しています。そ
>うすると、結構納得する人も多いのです
>よ。医師の方々にもそういう努力をして
>ほしいと思うのも「金銭活動」からでし
>ょうか。
私どもは、寝食を忘れて患者様を拝見しておりますが、それでも病院は赤字になります。そのように国家の方針がとられておりまして、政治的な解決以外どうしようもありません。患者様に対し、私どもはこれ以上ないほど説明いたしております。それを「もっと説明」を希望なさるとは正気の沙汰と思えません。説明については、私どもは説明の料金を頂いても構わないほど時間と手間を割いて行っております。管理者様の相手なさる原告の方々がおかかりになるような低レベルなお話をしているのではございません。ほとんどの医療機関で、このようなことを身を挺して行っております。それに対してもっと説明などとはいったいどこまでやればよいのでしょう。このままでは死んでしまいます。
このようなことを記載すれば、「医者同士の自助努力が足りない」「医者自身で解決する問題だ」とおっしゃるかと存じますが、それは違います。患者様が存在し、医療を受けること希望されれば応召義務に従って診療せざるをえません。医療機関に患者様が殺到し、その大量のなかから本当の重症の患者様を拾い出してケアするわけですが、その仕事量をコントロールすることができないのです。説明はこれ以上できないほど行っております。それをもっと説明とは私どもに対するこの上ない侮蔑だと考えます。許すことができません。
>このブログのコメントに記載されている
>経営者側の医師の方々の苦悩には、私は
>実に共感を覚えます。これに対し、勤務
>医と思われる方々のコメント(一部です
>が)を読んで「自分たちのことばかり言
>っていないで、もっとお客の患者を大切
>にしてよ」と思うのもそのせいかもしれ
>ません。医師には保険制度があるため患
>者が「お客」であるという認識が薄いよ
>うに思います。
患者様はお客ではありません。医療は何かという根源的な話になりますが、医療は商売ではないのです。そこを全く理解しておられないため、本当にこちらの記載には傷つきました。このような屈辱的な記載は見たことがありません。医療は社会福祉です。警察や消防の仕事と同じ質のものです。患者様がお客さまだと思うということは大きな間違いなのです。もし患者様がお客だとしたら、サービスを買うとしたら、病院側も利益を上げなくてはなりません。利益が上がらないのは重い病気を背負った方です。自分で医療費を払うことに困難な方です。究極的には命をお金に換算することになります。
病院を、医療サービスを買う店として捉えてお考えになるのはやめてください。現在の日本は健康保険制度で成り立っています。もうすぐ自由診療が解禁になるでしょう。その時、管理人様の希望する一見お客を大切にする病院が林立するでしょう。その時、内部でどういう医療がなされるか、そこまでお考えかどうかわかりませんが、とにかく現状では医療はサービス提供業ではないのです。
管理人様が「病院経営者側には非常に共感するが勤務医は自分のことばっかり言っているとしか思えない」とお書きですが、この上ない侮辱です。本当に、本当に信じることができず何度も読み返してみました。こんなに辱めを受けたのは初めてです。病院の経営側は、国が診療報酬を低く抑えているのに、サービス業として一般の企業と同じく利益を出すことを求められる(公的病院なら補助があることもありますが)矛盾を抱えて経営的に苦しんでらっしゃるわけです。それは医療を直接提供する勤務医の側も感じていますが、実際患者様を診療し治療している者の苦しみとは質が異なります。
こんなに酷薄な記載をなさる方の心は、どれほど冷たくていらっしゃるのか。全く人間味を感じません。いつだが、一般人と名乗る方が、「医者の書込だけ心や愛が感じられない」と書いておられましたが、管理人様の記載は冷酷でこのうえなく侮蔑的です。私どもの職業に対する気持ちを大きく毀損されました。管理人様はもっと常識というものをお持ちになられたほうがよろしいのではないでしょうか。
病気の方は、体に緊急事態を抱えた、火事現場のようなものです。火事はいつ起こるかわからないですし、いつでも駆けつけられるように消防隊は交替で勤務しています。医者は消防や警察などと同じ性質の仕事なのです。それに対して「赤字が出た」「報酬を下げる」と責めているのが今の行政の方針です。管理人様は、「もっと家事現場の被災者にサービスを」とおっしゃっているのと同じことです。交替勤務もなく必死で説明もしながら働く私どもに対して唾を吐くようなものです。私は、管理人様の記載によって、私の人間としての基本的な名誉が毀損されたと感じています。非常に傷つきましたし、誠に遺憾です。
投稿: 医療者 | 2006年6月24日 (土) 18時00分
ー医者は消防や警察などと同じ性質の仕事なのです。それに対して「赤字が出た」「報酬を下げる」と責めているのが今の行政の方針です。ー
私は、ERなどで働いておられる医師の方々を大変尊敬しています。
今の行政の方針については、私も非常に腹立たしく思っています。医師の方々は、行政に対しもっと声を上げるべきだと思っています。
ー管理人様は、「もっと家事(火事)現場の被災者にサービスを」とおっしゃっているのと同じことです。交替勤務もなく必死で説明もしながら働く私どもに対して唾を吐くようなものです。ー
医療の現場にもいろいろあり、たとえば、ERの救急患者に対する治療の注意義務、説明義務と、慢性疾患の入院患者に対する治療の注意義務、説明義務では、内容や程度が異なります。
私が書いたのは、どなたかが書いておられた「ごく一部の不逞な活動を行う輩」のことです。
何度も申しておりますが、全ての医師を悪者と決めつけているのではありません。
ただ、そういう「輩」を放置しておくのはいけない、と申し上げているのです。
このブログに書き込みをされている医師の方々は皆誠実な方で自身の医療行為に自信と誇りをもっておられるから腹を立てられているのだと思います。
しかし、弁護士のところに相談にくる患者さんの話を聞いて頂ければ分かることですが、非常に不誠実で低レベルな医療行為、それに明らかな説明不足も実際には存在しているのです。そして、それが医療全体に対する患者の不信を招いているのです。
「医療者」さんはこの現実をどうすればよいとお考えなのでしょうか。
ー私の人間としての基本的な名誉が毀損されたと感じています。ー
私は、誠実な治療行為をなさっている「医療者」さんの名誉を毀損するつもりはありません。
(それを言うなら、私だって、「弁護活動自体は究極的に単なる仕事(金銭活動)」と名誉を毀損されているのではありませんか。)
医療はサービス業ではないというお考えのようですが、私はサービス業の側面もあると思っています。これは、弁護士も同じだと思います(但し、「患者様」とか「依頼者様」とかまで言う必要はないと思いますが・・・)。
医師も弁護士も公益性と採算性の狭間でいつも苦しんでいるのです。
追記 「医者は消防や警察などと同じ性質の仕事」であり、医療は福祉であって医療サービスという側面が全くないのであれば、病院は全て国公立、医師は全員公務員になって頂かなければなりません。でも、その方がいいのかもしれません。
投稿: M.T. | 2006年6月24日 (土) 19時59分
どうもお互い感情的なコメントですね。医師にも弁護士にも駄目な人はいるがそれはごく一部で大多数は仕事に誇りを持って真面目にやっている、ではだめなんですかね?
ぼくは管理人さんが責めているのはそのごく一部の駄目な医師のことと考えスルーしてしまいましたが。
でもちょっと引っかかったのは
>私は、ERなどで働いておられる医師の方々を大変尊敬しています。
という部分です。他の医師も寝食を削って患者さんのために働いてますよ。まあ、ほとんどの医師が文句いわずにがんばりすぎたのが今の日本の医療をWHOをして世界一と言わせている反面、疲労などによる医療事故を起こしている原因にもなっているんでしょうね。
全員公務員になったほうがいい、というのもちょっと感情的になった発言ではないでしょうか?実際にそのような国はありますが(調べてみればすぐわかります)問題多いですよ。まあ、アメリカのように利益を追求する医療機関(どうやら政府はこうしたいみたいですが)も極端ですが。日本はこの間で医療従事者のボランティア的な自己犠牲もあり、世界一の医療を実現しているわけですよ。
ぼくは医師のサービスとは、きれいな病院、やさしくてきれいな受付嬢、ではなく患者さんをすばやく適切に具合のよい状態に戻してあげることでは?と考えて日々診療していますが。
投稿: なっく | 2006年6月25日 (日) 23時43分
なっくさんの書き込みにもあるように「医療ミスは存在するし、問題のある医師もいるが、全体としては日本の医療水準は世界トップレベル」というのがこちらに書き込んでおられる医師の方々の共通した思いでしょうし、私もそう思いますが、こちらの管理人さんはそうは思っておられないようなので、そこに非常に大きなギャップがあり、時々感情的な意見が出てくる理由になっているのでしょうね。
管理人さんは医療ミスが生まれる要因として「日本の医療事情」に根本的な問題があってそれが背景になっていると思っておられるのだと思いますが、違うでしょうか。日本の医療水準は世界トップレベル、というのは別に医師の自意識過剰ではなく、統計数値に基づくものなのですが、なかなかそうは思っていただけないようですね。
投稿: 一研究者 | 2006年6月26日 (月) 13時57分
「なっく」さんへ
ー医師にも弁護士にも駄目な人はいるがそれはごく一部で大多数は仕事に誇りを持って真面目にやっている、ではだめなんですかね?
ー
このことは何度もご説明しています。最初の記事から読んで頂くと分かって頂けるのでしょうが。(何度もコメントするのはいささか疲れます)。
ただ、そういう一部のレベルの低い医療行為をしている医師を放置しておいたことで、マスコミや患者側の医療不信が高まったのだと思います。
(まあ、そのうちに弁護士も増えすぎていろいろな不祥事が出てくるでしょうから、そのときには同じような状況に陥る可能性が高くなってきていますが。)
ー>私は、ERなどで働いておられる医師の方々を大変尊敬しています。
という部分です。他の医師も寝食を削って患者さんのために働いてますよ。まあ、ほとんどの医師が文句いわずにがんばりすぎたのが今の日本の医療をWHOをして世界一と言わせている反面、疲労などによる医療事故を起こしている原因にもなっているんでしょうね。ー
ERに限定したつもりはありません。「医療者」さんの記載内容から、「医療者」さんはERで働いてみえるのかなと思って書いただけです。
やはり医師の絶対数が不足していることが医療事故や医療過誤の根本的な原因であるように思います。
ただ、ご注意頂きたいのは、医療過誤ではなくても、それどころか高い医療水準の治療をされていても、ほんのちょっとの言葉の不足が患者の誤解を招いていることも多いのです(たとえば、入院患者の家族が、担当医が病室にちょっといただけで直ぐに出て行ってしまう、ちっとも病状について説明をしてくれない、という苦言を言うことが多いのです。治療行為自体は高水準でも、それが患者側にあらぬ疑念を抱かせたりすることがあります)。
これを書くと「医療者」さんは「忙しいのでこれ以上の説明などできない」「そういう説明不足もごく例外だ」と言われるかもしれませんが、実際に弁護士のところに相談にみえる患者さんにはこういう例が多いことは確かです。
医師にとっては多くの患者の一人にすぎなくても、患者にとっては担当医は一人なのです。
ー日本はこの間で医療従事者のボランティア的な自己犠牲もあり、世界一の医療を実現しているわけですよ。ー
皆様のコメントを読ませて頂くと、「ボランティア的な自己犠牲」にも限界があると思います。
医師会も組織的に医療従事者の不足を訴えることは難しいのでしょうか(弁護士も法曹人口問題について組織的に訴えることが相当難しい状況ですが)。
ーぼくは医師のサービスとは、きれいな病院、やさしくてきれいな受付嬢、ではなく患者さんをすばやく適切に具合のよい状態に戻してあげることでは?と考えて日々診療していますが。ー
これももちろんです。ただ、それに「十分な説明」も加えて下さい。
私は、最近、NHKで放映していたERシリーズをDVDで見直しています。これがアメリカのERの現実ではないでしょうが、主人公の医師たちがどんなに忙しくて寝る暇もなくても、時間をとって患者の目を見て患者のレベルに併せた言葉を選んで説明しているのを見て感動しています。
どなたかが「臓器の位置も分からぬ人に説明などできるか」と書かれていましたが、そういう患者であっても説明は必要です(それが難しいことは私も医療事故相談でよく経験することなので、分かってはいますが)。
それから、「きれいな病院」や「やさしくてきれいな受付嬢」については、受付嬢が「きれい」である必要はありませんが「親切」であることは必要だと思います。病気で滅入っているときに、病院がきたなかったり、受付嬢がつんけんしていているのは嫌なものです。特に入院患者などには、病院のメンタル面でのホローも重要な医療サービスだと思います。
投稿: M.T. | 2006年6月26日 (月) 15時36分
ー管理人さんは医療ミスが生まれる要因として「日本の医療事情」に根本的な問題があってそれが背景になっていると思っておられるのだと思いますが、違うでしょうか。ー
思っています。皆様のコメント(「忙しすぎる。限界だ。」というコメント)を読んでますますそう思うようになりました。
1人の医療従事者が欧米の5倍も働いていてはミスが生まれても不思議ではありません(群馬大学医学部付属病院の院長の言うとおりだと思います)。
ー日本の医療水準は世界トップレベルー
これはどういう分野で、どういう観点からみて、でしょうか。
確かに高度先進医療においてはそうかもしれません。
しかし、裁判例において考慮される医療水準とは、開業医、総合病院、大学病院など医療機関の性格、専門分野、地域の医療環境などによって、それぞれ異なります。
この全てにおいてでしょうか。
投稿: M.T. | 2006年6月26日 (月) 19時11分
中核病院、基幹病院では
マスコミや法の要求する「十分な説明」が
事実上物理的に不可能な場合も多いと思われます。
福島の事件の医師も術中の急変に手を下ろして説明に赴かなかったことが「不誠実」とみなされたと聞きます。
患者さんの攻撃に晒され裁判の俎上にのせられるのが「一部のダメな医師」ではない現状です。
一部のダメな医師、ダメな医療業界への非難批判が臨床でぎりぎりの線で頑張っている人間へ集中する、その結果としての崩壊がすすんでいます。
現在田舎の診療所に派遣されていますが、
患者さんが少ないために二十分でも三十分でも話を聞くことも説明することもできます。
どうやって患者さんを不快にさせずに話を中断するか、いかに手早く納得してもらうかに腐心していた基幹病院時代(計算上、挨拶・入れ替えを含めて一人6分以内ですませないと予約どおりにはすすめない)のストレスはなく、快適な勤務環境です。
当直明け一睡もせず外来にのぞむこともないし、外来をはじめようとする瞬間に救急で呼ばれることもない。
そんな診療所は、当然真っ赤な赤字です。
なんというか医療過誤訴訟も医療ミスの糾弾も一つの正義には違いないのでしょうが
国民も司法も行政もメディアも自らの責任を放棄して現場への要求に終始しているようにみえるところが、現場からの反発の所以であると思います。
忙しいからミスや説明不足を許せ、といっているのではないことをご理解いただければと思います。
医療水準の話については、
高度先進医療がというよりも
アクセスが容易であること、
平等な医療が受けられること、
が日本の医療の長所である(あった)のだと思います。
投稿: へきち内科医 | 2006年6月26日 (月) 20時37分
ー患者さんの攻撃に晒され裁判の俎上にのせられるのが「一部のダメな医師」ではない現状です。
一部のダメな医師、ダメな医療業界への非難批判が臨床でぎりぎりの線で頑張っている人間へ集中する、その結果としての崩壊がすすんでいます。ー
そういうことをできる限り避けるためには、やはり裁判に至る前の十分な調査(しかるべき協力医ー参考医ーからの意見聴取も含む)、裁判になった場合の鑑定、が重要だと思っています。
(大野病院事件のことには事実関係がはっきりするまであまり触れたくはないのですが)、医療事故調査委員会の有責の「報告書」を書いた3名の医師、検察官に有責の意見を述べた医師がいると聞いています。
「司法が悪い」と言われますが、専門家である医師が、複数「有責」と言わなければ、今回のような逮捕という事態にはならなかったと思うのですが。
(これはあくまで部外者からの疑問です。)
投稿: M.T. | 2006年6月26日 (月) 21時04分
御意見ありがとうございます。
まず、私としては弁護士が法の枠内で依頼人の最大限の利益になるよう行動することは当然と考えます。
しばしば首を傾げる判決が出ることについても、個々の裁判官に高度な専門知識を要求することに無理があると思います。
そういう意味で、「司法が悪い」といったつもりはないのです。
日本の医療の特徴について前回書き落としたものに「コストの安さ」があります。
アクセスの容易さ(仕事量をコントロールできない)、コストの安さ(人員の不足)は医療者の裁量の外で決定されています。
コストを惜しみ負荷を増大させながら
「もっと多くの説明を、もっと良いサービスを」と声高に要求すれば、医療ミスを非難弾劾しさえすれば、労せずしてより良い医療を享受できる、と考えるのなら、それは虫が良すぎるのではないかと。
その要求・非難がもっともだといってみても、現実を(良い方向に)変える力は持たない、ということです。
ところで大野の報告書については、あの内容でも逮捕に相当するような重大なミスがあったとみる医者は少ないのではないのでしょうか?
また検察を支持した医者が何人いたのかは知りませんが、その後声明を出した「複数の専門医団体」の意見を検察が全く無視できる理由が分かりません。
投稿: へきち内科医 | 2006年6月27日 (火) 14時06分
「日本の医療水準は世界トップレベル」ということについてはこれまでにも何人もの方々がかなり長い文章を書いておられるので、私など特に付け加えることも無いのですが(例えば整形Aさんの 2006/05/31 19:46:49のコメント)どうもそういうメッセージは管理人さんの心に響いている様子はないようです。
日本の医療水準、といった非常に大雑把にも聞こえる言い方をすると、そこで何を想定するかは人それぞれだろうと思われます。私などは、非常に低い周産期死亡率や世界一の平均寿命、低い医療費負担、全ての医療機関への自由なアクセス、などを想起しますが、管理人さんは、勉強の足りない開業医、何時間も待たされる大病院、医療過誤関係の争いで間違いを認めない医師、などを想起されるのだろうと思います。
こういういろんなデキゴトのなかで何をもって「日本の医療」を判断するかは人それぞれですが、人間は結局のところ、自分の信じたいことを信じるに過ぎないものだと思いますし、ある「信念」を持ってしまった人にそれを変更させるのは至難の業なので、管理人さんのお考えに付きどうこう言ってもいたし方ありません。
それにもかかわらず、多くの医師の書き込みが続くのは、色々と医療関係の係争に関わってこられた管理人さんの現在の態度が結局は世間一般でとくに知識もなく「日本の医療」を批判している人々の言っていることと特に変わらないように思われるからなのではないでしょうか。まことに残念なことですが。このブログが管理人さんのような職のかたのものでなければ、誰もわざわざ時間をかけて書き込みなどしないでしょう。
投稿: 一研究者 | 2006年6月27日 (火) 15時30分