塀の中の人たち(ちょっとした思い出)
刑事弁護について、柄にもなく真面目な考え事をしたり、ホリエモン保釈のニュースで拘置所の紹介をしているのを見て、昔やった刑事事件のことをよく思い出すようになった。
ホリエモンは豪勢なマンションに住んでいるので、さぞかし狭くて不自由な拘置所生活は辛かったであろう。それにしても、よく3ケ月も否認を貫いたものだ。かつての部下は次々と自白をしているというのに。なかなかこれは出来ることではない(別に褒めているわけではないのだが)。ホリエモンは弁護人とは毎日のように打ち合わせをしていたというが、弁護人がどういうアドバイスをしていたのか、ちょっと興味をそそられる。
被告人の供述調書を読むと、しゃべらなくてもいいことまでしゃべっている(取調官の誘導によるところも多いのだろうが)のが多い。狭いところに閉じこめられている人間にとって、「黙っている」というのは相当な苦痛なのだ。警察署に接見に行くと、警察官と被疑者が結構仲良さそうに話しているのに驚いたものだ。
ニュースでは拘置所内の食事などについても紹介されていたが、私も司法修習生のときの見学の際に拘置所内で昼食を頂いたことがある。昔のことなのであまり覚えていないが、まずいものではなかったと思う。野菜の煮物などもついていて、結構健康的でおいしかったように記憶している。
(拘置所の麦飯についてこんなニュースも http://www.nikkansports.com/general/p-gn-tp0-20060429-25159.html)
さて、私が思い出したのは、次のような被告人たち。
一人は、木枯らしが吹き始める頃、女性用のストッキングの入った紙袋を盗んだ初老のホームレス。この人の意図は明らかだった。寒くなる前に拘置所に入りたかったのだ。
もう一人は、車止めの杭を引き抜いてくず鉄屋に売ったホームレス。杭はステンレス製なので高く売れるのだ。この人はまだ中年だったと思うが、栄養失調のために歯の殆どが抜け落ちていた。拘置所に接見に行くと、なんだかホッとしたような顔をしていたのを覚えている。
いずれも常習累犯窃盗で実刑確実。情状立証をするにも、被害弁償もできず、情状証人になってくれる人もいない。彼らも情状立証で刑が短くなることを望んでもいないし、期待もしてもいない。
拘置所の住人にはこういう人たちも多いのだ。拘置所や刑務所も、彼らにとってはありがたい場所なのだろう。
3億の保釈金を積み、百何十億という資産を持つというホリエモンも、こういう人たちと一緒に拘置所にいたわけだ。
日本で平等な場所は塀の中だけかもしれない。
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