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2006年4月19日 (水)

光市母子殺人事件の弁護人の意図

 ここ2,3日、あまりニュースやワイドショーを見ていなかったのだが、例の光市母子殺人事件の最高裁弁論について安田、足立両弁護人が記者会見やテレビ出演をして弁論内容について説明をされているようだ。これが、マスコミやブロガーにまた新たな怒りの種をばらまいたらしい。

 私は両弁護人の会見を見ていないしワイドショーなども見ていないのだが、インターネット上で見る限り、正直私には両弁護人がなぜこのようなときにテレビ出演までして弁論内容の説明をしたのか、よく分からない。また、その内容も一般人のみならず裁判官を説得できるようなものとは到底思えない。

 元検事の矢部氏(http://www.yabelab.net/blog/2006/04/19-142053.php)の言われるように、本当にただ被告人の死刑を一日でも先延ばしにするためなのだろうか。

 それとも、死刑が恐くて錯乱している被告人の言い分を弁護人として主張せざるを得なかったのだろうか。

 こういうことは、当の弁護人でないと分からない。弁護人と被告人の接見室での会話を知らないとなんとも言えない。

 ただ、両弁護人とも殺意を否定するための弁明が裁判所に通用する代物ではないということは十分に承知の上であることは確かだろう。

 それで私はある被疑者の刑事弁護人となったときの体験を思い出した(守秘義務との関係で多少の虚構が入っている)。

 私が当番弁護士として窃盗罪で逮捕された青年の弁護人となったときのこと。この青年は、建造物侵入、窃盗未遂の現行犯で逮捕されたのだった。しかし、ご本人は頑として犯行事実を認めない。

 現行犯逮捕されたときの状況というのは、建物近くの川べりにいるところを逮捕されたものだ。建物は川と道路に挟まれており、川は低い位置にあるので、道路側の1階入り口から入って、川の方に出るときは地下1階の出口からということになる。

 被疑者の青年は、「この建物には入っていない、道路から川の方に降りる小路があったので夕涼みに川べりに降りたにすぎない」と主張する。そして、その路も図面を書いて説明していた。

 私は彼の言うことが本当か現地に行って確かめてみた。すると、彼が図示した小路などないのである。川べりに降りるには、建物の中を通らないと絶対に降りることができないのである。

 私は直ぐに青年に接見してこのことを話した。しかし、青年はそれを認めない。いくら説得しても頑として自分は建物に入っていないと言い張った。

 実は彼がタイミングよく逮捕されたのは、彼が警察から別件でマークされ尾行までされていたからだった。そして、逮捕後彼の預金口座からは多額の金が見つかっていた。しかし、彼は競輪で儲けた金であると言い張っていた。

 私はいろいろと説得を試みたが、どうしても彼は罪を認めない。そのとき、私は一番楽な道を選んだ。つまり、「信頼関係が築けない」という理由で辞任したのだ。起訴は必至であり、公判で彼の言い張る「物理的に無理」な主張をする気には到底なれなかったからである。

 被疑者や被告人がこのように絶対に通用しない弁明をすることはよくあることだ。そういうときに、弁護人としてどうするかは難しい問題だ。

 私の後についた弁護人は無理を承知で被告人のいうとおり主張し大変苦労されたようだ。もっとも、この青年は最終的には公判で罪を認めたそうだが。

 光市母子殺人事件の被告人の場合もこうだったのかは、分からない。あくまでも私の推測だ。ただあり得ることだと思う。少なくとも、安田弁護士らがテレビで発表していた弁明は被告人が言い出したことであり、安田弁護士らが考えついた弁明ではあるまい。 

 しかも、今回の安田弁護士らの場合、被告人を説得できなくても簡単には辞任できないだろう。また、期日延ばしのための辞任か、と言われるに決まっている。しかし、説得しようにも裁判所は時間をくれない。

 前の記事でも書いたが、こういう被告人と意思疎通する(信頼関係を築くまでに至らないとしても)には時間が必要なのである。ましてや、遺族やマスコミらが求める「被告人に犯行事実を直視させ改悛の念を抱かせる」のには相当の時間を要するのである。

 世間は今回の裁判の遅延を全て弁護人のせいのように言われるが、よく考えて頂きたい。検察が上告してから最高裁が弁論を開くと決めるまでに一体何年かかっているのか。私はいつ検察が上告したのか知らないのだが、矢部氏のブログでは2年以上はあったという。

 記録を読むだけでなく被告人と何度も接見しなければならない安田弁護士ら弁護人には数ヶ月も与えずに、最高裁は記録を読むだけに2年以上も要していいのか。どうしてこちらの方は非難されないのだろう。

 こういう刑事裁判をよしとするなら、まず、憲法32条「裁判を受ける権利」と憲法37条「刑事被告人の諸権利」を「殺人犯は裁判を受けさせずに直ぐにつるし首にすべし」という条項に改正すべきだ。

 おかしくないですか?日本の刑事裁判、日本のマスコミ。

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刑事弁護」カテゴリの記事

コメント

 疑問に思っていたのですが、愚問だと思ってお尋ねしなかったのですが。。。
 「弁護士にとって真実と勝訴(依頼人の利益)」とどちらが大切なのでしょうか?
 管理人さんのリンクのエッセイを読んで弁護士は中立ではなく依頼人の要請で動くから対立する人には冷たくて当然である、(内容が正確でなかったらすいません)を読んで目からうろこが落ちました。
 「弁護士は正義の味方」という思い込みが間違っていたのだと思いました。
 そうすると弁護士が勝訴のためになりふり構わないというのは当たり前のことなのだと思いました。この辺を規制するものはあるのでしょうか?弁護士さんの良心しかないのでしょうか。そうすると弁護士が量産される(つまりおかしな訴訟でも手がけないと弁護士さんが生活に困る)社会は恐ろしいことだと思いました。法科大学院ができるのでそうなるのでしょうか。

 そもそも弁護する対象は「弱者?」なのでしょうか。よく「弱気助け、強気をくじく」というような言葉も聴きますが。
 
 マスコミに関しては同感です。割り箸事件でも医療側勝訴なのにあたかも敗訴のような報道(ただ過失を認めた点で医療側としては実質敗訴だと思いますが)、ご両親のコメント、作り上げられた映像とともに何度も流しています。この報道を見たら一般の方はほぼ医療側が悪いと思うのでしょう。大半の臨床医が、診断は困難だった、また夜間の救急体制は充分でないことを言っているのにもかかわらず、医師が殺したかのような書き様です。
 この事件が刑事事件になったことで必要のない頭部CT増加、小児救急をみる医師の減少などの医療現場に大きな影響を与えましたが、司法も、マスコミも責任をとりません。結局批判しっぱなしの印象があるのですが。。。

 管理人さんは一生懸命な方だと思います。厳しいコメントすいません。

 もうひとつ、この強姦殺人者が「過失致死」を弁護士が要求して、日々患者さんのために自己を犠牲にして頑張っていたけど何万例に一人の疾患で患者さんが亡くなってしまった医師が「業務上過失致死」を検察に求刑される、

 日本の司法って、おかしくないですか?

あの・・私は頭が良くないので、愚問になるかもしれませんが教えて下さい。
被疑者(被告人)が通用しない弁明をした場合、弁護士側はその弁明は通用しないから無理です。と拒否する事は出来ないのですか?
弁護士自身が嘘だと確信を持っていても、立場上被疑者の弁明に沿った弁護をしなければならないのですか?
その無理の有る主張をする事で、被害者側の心が更に傷つけられるのは仕方の無い事なのですか?
その時は別件として、その損害を求める裁判を起こしたら良いのですか?

皮肉っぽく読み取れるかもしれませんが、本気で解らない(知らない)ので教えて下さい。

前日のブログを含めて拝見しました。
弁護士の立場としての発言を興味深く読ませて
いただきましたが、一言だけ書き込みをさせて
下さい。

弁護士という職業に対する風当たりが強く
なったというご発言ですが、その通りだと
思います。実際、世間から見た弁護士に対する
信頼というのが揺らいでいるのが現状だと思い
ます。
「裁判を開くことで真実が明らかになる」と
いう考えを今まで多くの国民が支持して
来ましたが、オウム裁判をはじめていくつかの
刑事裁判で「結局、長く時間を掛けても
決して真実が明かされることがない裁判が
少なからずある」という諦めにも似た考えが
主流を占めてきたようです。
その上で一般人から見ると充分過ぎるほど
時間をかけており、なおかつ裁判員制度の導入
を含める審理の迅速化をすすめている現在に
おいて、「真実を明らかにするため」と主張
してこられた弁護士の方が「審理を進めるのに
なお時間が足りない」と仰せられると、
真実の解明を意図的に遅れさせているのは
むしろ被告側ではないか、という心情に
切り替わってゆくからではないでしょうか。

やっと私の考えに近い弁護士さんのブログを見つけることが出来ました。
私は弁護士ではありませんが、ほんの少しだけ法律を勉強したことがあります。
素人考えですが、この事件は殺人ではなく、強姦致死の可能性が高いのではないでしょうか?
これは想像にすぎないのですが、強姦している最中は、相手が死んでいると思わなかったのではないのかということです。
それで、行為後に死んでいることに気がついて、「一人殺すも二人殺すも同じだ」と自棄をおこして子供も殺してしまった。
こう考える方がスジが通っていると思います。
なぜならば、強姦する対象としては、死体よりも生きている人間の方がいいはずなのです。
つまり、死後に強姦している事実が殺意を否定する証拠になるのではないかと思うのですが、なぜ1審2審でそういう主張をしなかったのかが謎です。

RYZさんへ
>素人考えですが、この事件は殺人ではなく、強姦致死の可能性が高いのではないでしょうか?
>>なぜならば、強姦する対象としては、死体よりも生きている人間の方がいいはずなのです。

 その意見はナンセンスと思います。

強姦致傷と思う理由はあなたの考えであって 事実はひとつ 知っているのは 本人なのだから。


犯人は首を絞められ死亡した時の被害者の汚物を拭き その後に強姦しているのです。(これは裁判の記録と聞きました)
このような供述もあって今更 強姦致死と言われても説得力は無いのです

いずれにしても今後 殺意が無い=死刑回避 の為の戦術としてを使う弁護士が現れないよう 祈るだけです(今回の弁護士の事を指しているわけではありません・・念のため 真実は当人にしかわからない事ですから)

愚問ですが、被告と弁護士が意思疎通を持つ難しさを述べておられますが、一般的に考えてそんなこと百も承知なのでは?
実社会においてはその程度の無理難題などごまんとあります。
意思疎通が出来なければ出来ないなりに上手いことやる、というのが弁護士のスキルとして必要だと思うのですがいかがでしょう。

QQQさんへ

 「意思疎通が出来なければ出来ないなりに上手いことやる」とはどういうことでしょうか。

 「上手いことやる」というのが、被告人が何を考えているのか、何を求めているのか分からないうちでも、弁護人がさっさと適当に裁判を進めればいいという意味であれば、そのようなことはスキルでもなんでもなく誠実な弁護士のやることではないと思います。

医療ってさんへ

 「もうひとつ、この強姦殺人者が「過失致死」を弁護士が要求して、日々患者さんのために自己を犠牲にして頑張っていたけど何万例に一人の疾患で患者さんが亡くなってしまった医師が「業務上過失致死」を検察に求刑される、
 日本の司法って、おかしくないですか?」
 
 検察官と弁護人をごっちゃにしたご主張です。
 その医師にも弁護人がついているはずです。ご主張の例だと、その医師が弁護人に「無罪」の主張を要求することになるはずです。

営業の現場では相手が要求を直接口に出したりせず「察しろ」という形で交渉が行われることが少なくありませんし、口には出さずとも暗に理不尽な要求を突きつけてくる場合があります。
不可能な理由を言い立てる被告もなぜそう主張するのかは理由があるのですから上手くそういう意図を汲んで被告の心を解いてやり、またそのために時間が必要ならとげを立てずに上手く時間を稼ぐ法廷戦術を取る技術が必要なのではないかということです。
安田弁護士の場合、遅滞戦術を常套手段としており検察とも司法とも関係が良くないようです。
今回の場合、過去の経歴が裏目に出た面もあるのではないでしょうか。
そもそも検察が上告をした時点で最悪の事態を想定し足場を固めておくべきだったのではないかと私は思いますし、被告が犯行当時18歳なりたてで未熟だからという点で争ってやっと無期懲役を勝ち取ったわけですから上告審で判決が覆る可能性も少なくない。
勝って兜の緒を締めずにいまさら慌てふためいても「もう遅い」となって当然だと思いますが。

ー「弁護士にとって真実と勝訴(依頼人の利益)」とどちらが大切なのでしょうか?ー
ー被疑者(被告人)が通用しない弁明をした場合、弁護士側はその弁明は通用しないから無理です。と拒否する事は出来ないのですか?
弁護士自身が嘘だと確信を持っていても、立場上被疑者の弁明に沿った弁護をしなければならないのですか?ー
 という質問を頂きました。

 これは弁護士の「真実義務と依頼者に対する誠実義務」という古くから議論されてきた論題なのです。
 しかし、これを一般の方に分かりやすく説明するのは非常に難しいのです。
 時間がかかると思いますが、私なりにまとめてみたいと思いますので、お待ち下さい。
 
 


 最初に管理人さんを責めているわけではありません。誠実な方だと思います。
 
 でも昨今の医療事件の司法に関して怒りと絶望感で一杯なのです。

 基本的な質問で申し訳ないのですが、検察官や裁判官って司法試験に合格した弁護士でもあるわけではないのですか?こんな質問ごめんなさい。

 どちらにせよ、母子の件も、福島の件も私としては常識からかけ離れた主張がされているように感じるのです。福島の件がレイプ殺人犯と同じレベルの罪名(きっと違うんでしょうが、素人としては同じように思う)で争うこと事態が信じられないのです。真実は法廷で、といわれますが、献身的に医療に尽くしてきた一人の医師が、過失なく逮捕され、実名報道され、今後の長い年月の裁判を争わなくてはならないことを思うと、逮捕・起訴されただけでもこんな仕事はできないと感じるのです。普通に仕事していただけでこんな目にあうって公正なことなのでしょうか。

 中学生か高校生のときテミスの像を見て感動しました。でも今はテミスの像が目隠しをしたまま罪のない人もめった挿しにしているように感じます。

 「割り箸事件」「心筋症事件」頻発する「産婦人科関係の訴訟」、どれをとっても、完全にさけれるわけではないことに過失を問われている、また裁判によって全く反対の判決がでていることにどうしたらいいのかわからない気持ちで一杯です。
 医療裁判が医療を滅ぼすと言われているのは、現場としては本当のことだと思います。医療が亡くなってしまえば事故も過失もないわけですから。さらに刑事事件だけでなく民事事件でも億単位の賠償を求められるわけで、そもそも現在の医療費はそこを見込んでないわけですから皆保険自体が崩壊すると思います。アメリカで訴訟費用の高騰で産婦人科医や救急医がいなくなった州の話は有名です。

↑「心筋症」ではなく「心筋炎」でした。すいません。

「医療って」さんへ

ー基本的な質問で申し訳ないのですが、検察官や裁判官って司法試験に合格した弁護士でもあるわけではないのですか?こんな質問ごめんなさい。ー
 
 今は、司法試験に合格した後、裁判官希望者も検事希望者も弁護士希望者も研修が一緒に行われています。
 しかし、将来、司法試験合格者が爆発的に増えれば、このように一緒に研修を行うこと(例えば検事が弁護士希望の修習生も実務研修し、弁護士も検事希望の修習生を実務研修する)ということは不可能になり、分離修習になるだろうという見方もあります。
 このようになれば、ますます検事、弁護士の実務感覚は遊離していくと思います。

 刑事裁判においては、検事と刑事弁護人となる弁護士は対立関係に立ちます。しかし、被害者が刑事告訴した場合は告訴人の代理人となった弁護士と検事は対立ではなくむしろ協力関係に立ちます。
 
 福島県の産婦人科医師逮捕の件については、まだ事実関係が何も分かっていません。
 ただ、医療過誤事件の相談や依頼を受けている者としては、いきなり逮捕というのは異例のことなので、何か他の事情がはたらいているのではないかと思います。
 いずれにせよ、この産婦人科医の逮捕の問題と、光市母子殺人事件の問題は、切り離して考えて頂きたいと思います。
 それに、前にも言いましたが、この産婦人科の医師には刑事弁護人がついているでしょう。この弁護士の活躍に期待すべきです。

通りすがりに失礼します。私としては前任の弁護士に「傷害致死と死体損壊なら無期懲役は量刑不当だろ、なんで上告しないんだ。おまけに弁論期日が決まってから尻尾巻くとはどういうことだ」と言いたい気持ちです。
それと、安田・足立両弁護士の「不服だったらルール(裁判所の決定期日)を無視してもいい」というやり方は、弁護士の社会的信頼を損ねる暴挙だったと思っています。正直、自分が裁判員になったら、こんな真似をする弁護士の主張は割り引いて聞きそうな気がします。

横からすいません。
安田弁護士を批判している人に聞きたいのですが、安田弁護士が嘘をついているという根拠はなんでしょうか?
たしかに無理のある主張には違いありませんが、人を死刑にするかどうかという事件において、1%でも疑いがあるならば徹底的に争うべきではないのですか?
この、加害者を死刑にするべきであるという意見はあっても良いと思いますし、検察や被害者がそれを主張するのは当然です。
しかし、事件に全く関係の無い人間が根拠もなく人を嘘つき呼ばわりし、死刑が当然だ等と言うのはおかしいです。
疑わしきは罰せずという言葉があります。
ましてや死刑というのは取り返しのつかないことです。
この犯人を死刑にする為には、安田弁護士の主張が100%、1点の曇りもなくウソであった場合のみではないですか?
私は、安田弁護士の主張が正しいと言いたいのではありません。
議論の余地があるのに、軽々に結論を出してはいけないということを言いたいのです。

最近の子供・女性などの弱いモノへの殺人をゲームの様にしている人間がいる現状では人の命を奪う人間には命を持って償う以外ないと知らしめる必要があると思います

今の法律は被害を受けた人の個人情報の保護よりも犯人の保護ばかりの矛盾した感覚を強く感じます

↑のcqさんの意見にはげしく同感します。
「悪い事は悪い!」というただこれだけのメッセージが重要です。でなければ、社会はドンドンひどくなると思います。
最近の少年犯罪を見ますと、いわゆる「少年」の被告人たちはフテキな態度でオソレを知らない。
「オレが人を殺した、それでどうした。どうせ誰か弁護してくれるし、精神鑑定もしてくれるし、誰もオレを悪いと言わない.....オレが少年だ、ハハハ」とあざ笑っているように感じてなりません。

>「弁護士にとって真実と勝訴(依頼人の利益)」とどちらが大切なのでしょうか?

弁護人が、依頼人の利益というか依頼人の権利を擁護するために弁護を行うことによって、
(もちろん相手方に弁護人ないし検察官がいることを想定してください。)
その両者間で争点を争う中で真実が形成されていくのです。

真実は、弁護人が依頼人の利益を守るためにどんな些細なことでも主張していく中で発見されます。
真実と依頼人の利益は、対立関係にあるのではなく、両者は両立する(というか目的と手段の)関係にあります。

ここで、注意しておかねばならないのは、
価値判断と弁護人(そして、裁判所)の真実発見のための役割を分けて考えることと、
人間が判断することには限界があり、真実と裁判で認定される事実は異なるものだということです。(真実は、神にしかわかりません。)
事実は、あくまで双方の主張の中で認定されるもので、それを真実であるとみなすのはある意味において法的な擬制(フィクション)であるということです。

そこで、訴訟においては主張を裏付ける立証活動の中で、どちらの主張する事実がそうであると認定されて真実であるとの擬制がなされるかを決める一定のルールがあり、それは民事訴訟法、刑事訴訟法(さらに言えばそこにあるルールは、憲法によって裏付けられています。)に定められています。

随分とざっくりと書きましたが、どうでしょうか。

  外国にいるため、また日本のマスコミの怒涛のカバーもあまり身にしみないため、かなりピンボケな立場にいます。ですが、このブログが真剣かつ他の人をおとしめるところがない、管理人の方も含めてまじめな人たちである、コメントや質疑応答が大変参考になると言うか刺激になったのでピンボケの立場から少しコメントして、叩いてもらいたく(やさしく)思います。裁判員制度、弁護士は何を狙うのか、検察官は何を狙うのか、考え込みました。司法に携わる友人は何人かいるのですが、当たり障りのない話しか私にはできませんし、私自身は司法とは関係ない者です。
  擬制のことはすごく腑に落ちました。つぎのように整理するのはいかがでしょうか。
  その行為を果たした本人にも、その後検挙しようと思う人も、殺された人の遺族も、弁護士も、そして裁判官も、マスコミも、何人かは死んだという事実は共有できるとはいえ、どうして、どのようにして、その行為がなされたのか、そして本人の動機やその行為の瞬間ないしはその瞬間前の本人の精神状況等は誰にも分からないのだと思います。覚えていないと言うことではなくて、自分をいつも客観的に見ていられる人と言うのは珍しいと言うのが現実だと思います。しかし、結果を発見した時に、かなりの確率で犯人だと推測できる人間が見つかることも多いのだと思います。
  ここで警察なり検察等が犯人とされる人間を巡って、証拠・推論等を駆使して、ストーリー(法律の人は擬制と言うのでしょうか)を作るのだと思います。神がいて、ある人間が真に犯人であることがいつか確認できるとしても、いまのところは犯行前のすべての真実と行為の実際に関係するすべての真実は分からないのですから、一定の不確実性と不完全性を覚悟した上で、(かなり真実に近いとしても遠いとしても)推論・推定(擬制?)を提出するのだと思います。これに対して、弁護側も同様にストーリーを作るのだと思います。しかし、万が一にも双方が使う証拠等がまったく同じとしても、まったく異なるストーリー展開、「何人かが死んだ」という事実にどうつなげるか、犯人とされる人間の責任にどうつなげるかは、双方でまったく異なることも十分ありうると思います。証拠なり推論、共有している情報に対して、どのような重みをつけて、ストーリーの中に織り込むかは、まさに哲人、至誠の人、無私の人、非の打ち所がない公平感のある人でない限りは、ストーリーの結果をどうしたいか、その人が担う責任の所在に影響されることが多々あるはずです。しかし、その二つのストーリーを戦わせる中で、裁判官が「より合理的で、社会正義の実現に役立ちそうな方」を選ぶのが今の裁判制度で他の選択肢よりはましですという妥協の産物であるような気がします。割り切りすぎでしょうか。
  検察は法治国家の枠組みを維持しようという発想が強いと思いますし、裁判官は結局は社会正義はどうかというところに落ち着くのではないでしょうか。法治国家の枠組みの維持活動の中でどれを重要視するかは時代ともに変わるでしょうし、社会正義というものも不変のものではないかもしれません(変わらないものもありますが)。一方、弁護士は被告の延命と罪の軽量を狙ってストーリーを作るべきだと思います。弁護士は、社会正義や法治の枠組みを守ろうと言うことではなくて(それを気にしても良いですし、それらが崩れるケースでその被害に合う人を助けると言うことはあると思います)、あくまで被告とされた人間のためにストーリーをつくるのにまい進するべきだと思いますが極論かもしれません。屁理屈と言われても、卑怯と言われても、証拠なり推論等、共有できる情報にくっつける重みのつけ方が異常だと言われても(普通はこれを屁理屈と言うのでしょう)、この役回りに徹することで、不完全な人間であることから逃れられない三者、検察と弁護士、裁判官が三つ巴に真剣勝負をする中で、より合理的な判決に持っていけることに貢献できるのだと思います。判決と言うのは真実だけを吟味して到達するものではなくて、もみにもんだ議論の中で生き残る側を採用すると言う風に割り切るのは危険でしょうか。現状の裁判制度では、完璧な判決は予定してなくて、人間のやることですから、必死に議論を叩かせた後の結論を受け入れようと言う約束事の上に成り立っていると思えますがいかがでしょうか。控訴制度も含めてそこで生まれてしまう不合理なことは他に変わる制度がないようなので、これでやっていこうという知恵の産物だと思います。
  米国風の法社会、競争社会を狙おうという流れの中では、これも仕方ない整理の仕方だと思います。非公式な、内輪で処理してきていることがどんどん公の場に持ち込まれる用になるのだと思います。裁判官も説得されてしまう程のストーリーつくりに長けた弁護士のサービスを必要とする人が増え、値段が上がり、金で判決が買える可能性が高まると思います。それではあんまりだ、裁判官に最終責任を負わせては、かわいそうとの気持ちが法曹界で出てきたのではないでしょうか(説得あるストーリーに影響されるのは今の裁判制度が狙うところなのですから、今の制度にはしっくりくる点とはいえ、裁判は金で買えるのかというみもふたもない非難の的になるのは同じ人間としてしのびないし、暗殺されてしまうかもしれない)。それに対抗するために、民主主義を標榜する枠組みの中では、大衆、国民、人民の中から裁判に関与する人を募り、「最終責任は裁判官ではなくて、陪審員なのだ、裁判員なのだ」という制度が生まれるのでしょう。ひどい見方でしょうか。これとて、暫くすると裁判員を説得するストーリーつくりに長けた弁護士は誰かと言うことが、週刊誌やワイドショーで話題になり、結局は裁判は金で買えるということに戻る感じがします。しかし、大衆、国民、人民に責任が戻ってくると言うことでは、主権在民なので、納得しやすいのではないでしょうか。
  陪審員になることが、アメリカではいやなことのひとつとして数えられ、できれば仕事、出張、病気等の理由で回避できればいいなぁと思われていると聞きます。(そうでない人も十分な数いるのでしょうし、あるいは、始めてみたらその重要性に気がついた、という人も多くいると思います) マンハッタンの下町近くにある裁判所周辺には(チャイナタウンですが)陪審員に人気のある安いけれどおいしいベトナム料理屋さんがあるとかが噂されるほど、どちらかというと、暗い雰囲気が陪審員には付きまといます(私の感慨だけかもしれないし、日本では1万円日当がもらえるし、会社も給料は払い続けてくれると言うので、日本ではもう少し明るくリッチな感じになるのかもしれませんと言うか期待しています)。それでも、私は陪審員にはなりたくないです。犯罪者とその一味に顔を知られ、家族構成員も結局は犯罪者とその一味に知られ、下手したら有罪判決になるのに手を貸したなんてことになったら、私も家族も、新しい人生を異なる名前を使ってどこか見つからないところで送ることができるように、保護してもらいたいです。
長々と失礼しました。

初めてこの様な所に書き込みました。
不慣れな点はどうぞお許しください。

光市の母子殺人事件については、どうしても気持ちをどこかに吐き出したくて、あの事件を思い出すたび被害者やその遺族の気持ちを思い、他人の私ですら何度泣いたか知れません。

なぜ罪のない人々を殺しておきながら、のこのこと生きていられましょう!!死んでお詫びを、という気持ちにならないのでしょうか。
犯人の過去の中に色々辛い事があったそうですね。
では、なぜそのような辛いことがあった時に精神的異常行動を起こさないように何か処置をしなかったのでしょう。事件は起こるべくして起きたのではないでしょうか。世の中には、彼よりも辛い人生を送りながら前向きにがんばっている人もいる。彼にはそれを乗り越える方法を教えてもらっていないまま大きくなってしまったのでしょうか。そして、わかんないんだから仕方ない、彼女と性交渉?をもちたかったからいいじゃん、赤ん坊がうるさいから殺しちゃえ、は本当に人間としての過ちの範囲内なんでしょうか。
私は強姦未遂にあった事がありますが、この世の中にこんな怖いことがあるのかと、今思い出すだけでも涙と震えがきます。
報道ではドラえもんがどう、とか儀式がどうとか言ってると聞きましたが、そんな人が数年後に世の中にでて、たとえ更正できたと判断されて出所したとしても、その判断は本当に正しいのか、どの程度を更正できたとするのか、その人が辛い事が重なった時にまた何かするのでは、と不安でなりません。
幼少期からの考えは、大人になってからのそれとは、違うと思います。そんなに数年で100%近くも変われるものでしょうか。

私は母親を2年前に病気でなくしました。一生懸命看護し、本人も「生きたい」といっていましたが、願いむなしく他界してしまいました。
病死といわずとも、本村さんの奥様もお子様もその様に暖かい愛に包まれて天寿を迎えるのが本来の命ですよね。それを「嫌だ」「苦しい」と思いながら果てていく、その気持ちをどれだけ理解しているのでしょう。それを正当な理由なく奪って、なぜ加害者は生きたいと思うのでしょう。自分が生きたいなら相手だって生きたい。相手を殺してしまったなら自分も死んでお詫びを、の気持ちがあってもいいのではないでしょうか。
なんか感情論ばかりでスミマセン。でも、被害者が
我慢する世の中はおかしいと思う。この件に限らず「いじめ」でもなんでも、納得できない事が多すぎる。頑張って生きてる人が馬鹿を見る世の中では楽な方に流される人が増えると思うので。裁判は被害者の立場を優先して考えてもらいたい。それが亡くなった人への供養の一つだし、遺族の唯一の生きていく支えだと思う。そうゆう司法判断の積み重ねが結局は犯罪抑制につながるのではないかと思うのですが。

長々すみませんでした。

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