アクセシビリティ
今日は、久しぶりに簡易裁判所へ行った。最近多くなった過払金の返還請求訴訟のためである。
簡易裁判所は請求金額が140万円以下の場合に利用できる。私が弁護士になった頃は90万円以下だったのが数年前に引き上げられた。また、平成15年4月1日から司法書士も簡易裁判所の事件では代理人になることができるようになった。
しかし、簡易裁判所を一番利用しているのはサラ金、クレジット会社、リース会社など。簡易裁判所はこれらの会社の社員に占拠されているといってよい。
サラ金やクレジット会社から借金の返済を求める裁判を起こされてご本人が簡易裁判所に出頭するケースが多い。そういう場合、裁判官は「訴状の記載に間違いありませんか。」と聞き本人が「間違いありません。」と答え、裁判官が「返済できますか。」と聞き本人が「できません。」と答え、裁判官が「分割ならどうですか。毎月いくらなら返済できますか。」と聞き本人が「1万円ならなんとか。」と答える。その後に、裁判官の隣に座っている司法委員という方々が当事者と一緒に別室に行って具体的な分割返済の和解の段取りをつけるのだ。こういうことが今の簡易裁判所では際限なく繰り返されている。
私は傍聴席で「あいかわらずだな」と少々辟易して順番を待っていた。ただ、ちょっと気になった出来事があった。
それは、リース会社が自動車のリース先の会社(リース料の支払いが滞っている)に残リース料の支払いを求めた裁判。会社の社長は保証人にもなっているので、会社だけでなく個人としても訴えられている。裁判官は、「自動車はどうなっているのですか。」と尋ねると社長は「お返しするつもりでずっと駐車場に置いてあります。」と答えていた。裁判官が「訴状では自動車の今の価格が50万円位となっていますね。残リース料は約40万円だから、自動車を引き揚げて清算すればいいでしょう。」と言うと、社員は「リースだから清算は必要ないです。」と答える。裁判官は「契約書に清算条項がありませんか。」と言うので、社員は契約書を取り出して一生懸命見ている。裁判官も証拠として提出されていた契約書のコピーを見ていたが「ゴム印に隠れてよく見えませんね。」と言って、社員から契約書の原本をもらいこちらも一生懸命見ている。
確かに大抵はリース契約書に物件の返還やリース料の清算について何らかの記載があるはずだ。
裁判官と社員が契約書に目を近づけて見ている間に、時間がどんどん経ってしまい、後ろの傍聴席で長い間待たされている他の会社の社員や私はイライラしてきた。裁判官もさすがにまずいと思ったのか、「それでは中断しますので、後でまた。」と言ってこの件を後回しにしてしまった。
裁判官には期日の前に書証の契約書くらいよく見ておいてほしいものだ、リース会社の訴訟担当の社員も自分の会社の契約書くらいよく見ておいてほしいものだ、などという悪態をつきたくなるのは別として・・・。
二人が目をこらしてもなかなか契約書が読めなかったのには納得がいく。リース契約書やクレジット契約書などは、署名捺印をする書面の裏に契約条項が細かい文字でびっしり書いてあるのだ。この契約書を隅から隅まで読んで契約する人はまずいないだろう(弁護士だって)。
私は勤務弁護士の時代にリース会社の代理人の仕事をしていて、リースがからむトラブルの面倒さを実感した。それで、自分が開業する際には一切リースを利用しなかった。今も、防犯関係の契約だけはリースだが、あとは全て買い取りにしている。クレジット契約もしたことがない(カード契約のみ)。
リース契約書もクレジット契約書も、本当に読めるようにはできていない。その内容は結構複雑なもので、トラブルになったときには重要な条項がたくさんあるのだが・・・。
大体、裁判官でもその会社の裁判担当の社員でもなかなか分からないような契約書が、普通の人に分かるわけがない。
そんなわけで「アクセシビリティ」(=「利用しやすさ」「わかりやすさ」)というタイトルをつけてみた。これはホームページを作成する際に必要とされるものらしい。ただ、ホームページの場合は、見る人がパソコンの画面設定を調整すれば大きな文字に変換することができるところが違う。
契約書もそれができるとよいのだが・・・。
日本の一般人向けの契約書には、このアクセシビリティに全く配慮していないものが多すぎると思う。
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